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五輪代表はOAを使うべきなのか?

大岩ジャパンは最大3人まで活用できるオーバーエージ(OA)枠を出場国唯一、使用せず、準々決勝でスペインに敗れた。OAの考え方はさまざまだ。あるパリ世代が「自分たちでつかみ取った大会。個人的に来てほしくなかった」と本音を漏らすように世代のみで強い一体感が生まれ、一定の成果を出した。

これは何度も何度も議論されている問題ですが、備忘録も兼ねて、日本のオリンピックにおけるオーバーエイジ枠の使用・不使用と結果の考察をしてみたいと思います。

五輪に出れるようになったアタランタ大会から。


1996年アトランタ大会

・OA枠、使用なし。

この大会では、ブラジルを破るという奇跡を起こしましたね。中田、城、川口、松田、服部、田中誠など、その後のフル代表で長く活躍した革新を起こした世代と言って良いでしょうね。キャプテンは前園。

監督だった西野さんは、特に協会からOAを使えとは言われなかったそうです。

決勝トーナメントには上がれませんでしたが、「ブラジルを破る」というジャイキリを自分たちで勝ち取った選手は相当な自信を得たことでしょう。


2000年シドニー大会

・OA枠、森岡隆三、楢崎正剛、三浦淳宏

この大会は、中田英寿、松田直樹、中村俊輔を中心とした日韓W杯でメンバー入りしたフル代表の選手が中心であり、森岡と楢崎は、ほぼ同世代であり三浦淳宏は2、3才上の世代ですが、誰よりも結果出している中田とオラオラの松田が中心で、あとは黄金世代たちですので、OAの選手に物怖じするようなことは皆無だったでしょう。

結果はグループリーグを突破したものの、トーナメント初戦でアメリカにPK戦で負けるという結果。


2004年アテネ大会

・OA枠、曽ヶ端準、小野伸二

この時の大会に出ていた選手が口にするのは「伸二さんに頼ってしまった」ということですね。

日韓W杯で活躍し、当時、フェイエノールトにいた天才小野伸二を知らない人などいるはずもなく、松井大輔や闘莉王、阿部勇樹、今野、駒野というその後フル代表で活躍する選手たちも、この時点ではフル代表にはほぼ絡んでいない。

フル代表で一緒にやっていれば別でしょうが、この世代は、中田や中村俊輔、黄金世代なんかの面子がフル代表で大活躍し続けていて、新しい選手の入れ替わりが遅れていた(ドイツW杯まではする必要性がなかった)時代の選手だったのもあった。

結果は1勝2敗の最下位でグループリーグ敗退。


2008年北京大会

・OA枠、使用なし。

この大会は、アメリカ、ナイジェリア、オランダ相手に0勝3敗の最下位でGL敗退。これまでで最低の結果と言ってよいでしょう。

が、この時のメンバー、本田、香川、長友、吉田、ウッチー、岡崎なんかはみんな海外に行ってビッグクラブに入りチャンピオンズリーグにも出場するレベルの選手になりました。

日本サッカーの歴史を見ても、過去最高レベルにクラブチームで結果を出した世代と言って良い。

その理由に、間違いなく「今のままでは世界には勝てない」っていう刻印を、この大会の惨敗によって押されまくったことがあるでしょう。

この時のメンバーは、その後、18人中17人がフル代表に入ってますし、W杯メンバーに選ばれた選手、Jリーグでも長く活躍した選手ばかりです。


2012年ロンドン大会

・OA枠、吉田麻也、徳永悠平

吉田麻也はOAですが、生まれつきが少し早いだけでほぼ同世代と言って良い。

そして、この時は、W酒井、宇佐美、清武、大津祐樹等、既に海外に行っている選手が多く、大迫、柴崎など無理して呼ばなかったスター選手もいたので、「自分たちでやる」意識は増したでしょうね。

結果は、スペイン、モロッコ相手に連勝し、2勝1分けでGL突破、決勝トーナメント初戦でエジプトを破り、準決勝でメキシコに負け、3位決定戦で韓国に負けでメダルならず。


2016年リオデジャネイロ大会

・OA枠、藤春廣輝、興梠慎三、塩谷司

この大会ではJリーグで結果を出してきた中堅-ベテランと言って良いレベルの選手を3人呼びましたが、結果は1勝1分け1敗でGL敗退。

この時の藤春のオウンゴールが話題になってしまいましたが、彼らはJリーグでは活躍していたものの、興梠以外は、代表経験がほぼなく、若年層の世代別代表にも入ってなかったので、国際大会の経験が極めて少なかった。

そういう選手をいきなり国を背負う国際大会に選出してしまったことが、大きなミスだったと思ってます。


2020年東京大会

・OA枠、吉田麻也、遠藤航、酒井宏樹

地元大会ということもあり、フル代表スタメンの面子を3人呼んだのと同時に、コロナで開催が1年遅れ、U-24仕様になり、その1年でクラブで活躍してフル代表に入った選手も大幅に増え、「オリンピック代表の方がフル代表よりも強いんじゃねえか?」って言われたチーム。

地元ということもあり、コロナでフル代表の試合が減ったこととも相まって、フル代表と五輪代表が極めて長いキャンプを共に過ごしたので、ほぼフル代表と言ってよいレベルのチームでした。

結果は、3勝でグループリーグ突破、ニュージーランドにPKで勝ったものの準決勝でスペインに負け。アセンシオのバカ。

そして、3位決定戦でメキシコに負け。久保、号泣。

今では名将(という評価)になっとる森保さんですが、森保采配が最悪に機能しなかった大会だと思ってます。マジで森保さんじゃなければ金メダル取れた戦力だった。


2024年パリ大会

・OA枠、使用なし

3勝でGL突破。トーナメント初戦でスペインに敗戦。


というわけで見てきましたが、この結果から私が判断するのは、

・OAを使わずに負けても、それによってその後奮起する選手が多くなる
・OAを使うと、OAの選手に頼り「自分たちで戦った感」は減る。
・OAを使うと、予選を勝ち抜いてきた「チームとして一体感」や「新しい選手がいきなり入ることでの戦術の齟齬」が生まれやすい。
・年齢が近いOAだったり、OAがいても全く気にしない選手達だったりして、チームに帯同出来る時間が長ければ問題は発生しにくい。
・OAと言っても代表経験が少ないと、上がってしまう選手が出やすい。

って感じでしょうか。

結果を出したのは準決勝まで行ったロンドン大会と東京大会。東京はちょっとイレギュラー過ぎるのではずして考えると、同世代の吉田と年代別代表もフル代表経験もあり、言い方は悪いですがスターとかではなくピンポイントの補強になった徳永がいたロンドンが最高の結果と言って良い。

アテネとリオは、OAを入れて明確に失敗。

アタランタ、北京は、OAを使わずに結果は微妙ではあっても、その後の選手の成長が異常って考えると、私としては、この先もOAは使わなくて良いと思ってます。

そもそも、今回も、久保建英や鈴木彩艷は普通に世代に入る選手でしたが、拘束義務のないトップ選手を呼ぶ意味が本人にもクラブにもないし、過酷極まりないスケジュールになっている選手をさらに酷使する必要性もない。

そもそも、「23才以下」というくくりは若年層でも育成年代でもなく、完全にフル代表でもメインになる世代であって、実際、優勝したスペインは、ヤマル、ニコ、ガビ、ペドリっていう普通にオリンピック代表の選手は、みんなフル代表選手なので、ゴッソリいないという状況です。

さらに、他の地域では23才という枠ではなくて、21才、20才という枠で予選大会を戦っていたりするので、もっと狭めて良いくらい。

考え方は色々でしょうが、

・そもそも五輪はトップ選手が目指す大会ではない
・代表期間ではないので、クラブの中心選手は呼べない
・勝っても負けても予選からの面子で戦ったほうが良い

って意味で、「もうOAは使わない」って方針で良いと思います。何十年後かに東京オリンピックをまたやるのならば、その時使えばいんじゃないでしょうか。

終わり。

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