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できる会社は "ChatGPTの中身" を使い分けている!?最新頭脳5つを簡単解説


"ChatGPTの中身" とは?

2022年11月に登場したChatGPTは、自然な会話だけでなく簡単な仕事までもこなせてしまうAIとして話題を呼び、人類史上最速となるわずか二カ月で1億ユーザーを達成したサービスとなりました。

ただその一方で「イマイチ使えない」「みんなが言うほど賢くない」といったユーザーの声も聞かれます。評価が分かれるのにはいくつか理由があるのですが、実は "ChatGPTの中身" にはいくつかの種類がある というのがその理由の一つです。

この "ChatGPTの中身" ですが、大規模言語モデル(LLM:えるえるえむ)と呼ばれていて、大きく分けて2種類のものが使われています。ひとつは「GPT-3.5(じーぴーてぃ3.5)」という名前が付けられたLLMで無料版のChatGPTで使用されています。そしてもうひとつが「GPT-4(じーぴーてぃ4)」と呼ばれるLLMで、こちらは有料版のChatGPTで使用されています。

このGPT-4は、無料版のGPT-3.5を遥かに凌ぐ性能を持っており、GPT-3.5が幼稚園児くらいだとしたら、GPT-4は新入社員といった印象です。実際、私がGPT-4を最初に触った時に周囲の人たちには「ぼーっとしててちゃんと指示しないと仕事しないけど頭脳は世界で戦えるくらいすごい新入社員」と表現していました。

つまりChatGPTを使っていても、無料版と有料版では "ChatGPTの中身たるLLM" の性能がまったく異なるため、使った人たちの評価にブレが出ているというわけです。

「生成AI」と呼ばれる "学習済みのデータからテキスト・画像・動画・音声・プログラムといった新たなデータを生成するAIのうち、ChatGPTのようにテキストを生成するAIの多くが「大規模言語モデル(LLM)」によって実現されています。

GPT-4だけじゃない!最新頭脳といえる "LLM" 5選

"ChatGPTの中身" として使われている大規模言語モデル(LLM)には2種類があることをお話しましたが、このLLM、なんと2024年3月現在で100以上のLLMが開発されています。ここからは、その中でも代表的かつこれだけ知っていれば十分というものを5つご紹介していきます。

▼ GPT(じーぴーてぃ)シリーズ|開発団体:OpenAI

https://openai.com/

ChatGPTを運営する団体であるOpenAIが開発したLLMで、ChatGPTで使用されているGPT-4やGPT-3.5があります。中でもGPT-4は、2024年3月現在、総合力で最も優れたLLMだと言えます。文章の作成・要約・校正やプログラミング、EXCEL関数の作成やCSVデータの作成・編集など様々なタスクをこなすことができる性能を持っています。

またOpenAIではGPTのほかに画像が生成できる「DALL-E3」、音声をテキストに変換できる「Whisper」などいくつかの生成AIも開発・提供しています。


▼ Claude(くろーど)シリーズ|開発会社:Anthropic

https://www.anthropic.com/

元OpenAIのメンバーによって設立されたアメリカ企業Anthropicが開発しているLLMです。2024年3月に発表されたClaude 3は、開発元のAnthropic社曰く「各種性能評価でGPT-4を上回った」ということで大きな話題を呼びました。Claude3には「Claude3 Opus」「Clude3 Sonet」「Claude3 Haiku」の3種類があり、最上位モデルの「Claude3 Opus」は使ってみると確かにGPT-4同等かそれ以上の性能の高さを感じます。

Anthropic社が発表したClaude3の性能評価
https://www.anthropic.com/news/claude-3-family

何よりこれまで「一社独占の技術によるもので、他社がGPT-4に追いつけることは当分ないだろう…」と言われていた中でGPT-4よりも自然な日本語が出力され、応答の速度も速いClaude3が突如登場したことは生成AI界に衝撃を与えました。

しかし一方で、誤ったことをあたかも正しいことのように回答するハルシネーション(幻覚)が出やすく、出力内容に対する倫理フィルターが弱い点が指摘されており注意が必要です。(例えばアダルト的な回答を簡単に答えてしまうなど)


▼ Genimi(じぇみに)シリーズ|開発会社:Google

https://deepmind.google/technologies/gemini/#introduction

検索エンジンのGoogleが開発しているLLMがこのGeminiシリーズです。生成AIで他社に大きく遅れをとっていたGoogleが巻き返しを図って発表したLLMでしたが、この発表によりGoogleは大きく株価を下げることになりました。

その原因は、発表と同時に公開されたGeminiのデモ動画。映像にはカメラ映像を見せながらその内容についての会話がAIとスムーズに進んでいく様子が映されていたため、これを見た人たちの間では「ついにGoogleが本気を出してきた!」とGeminiへの期待が一気に高まりました。しかし、実際にはそこまでの性能はなく、かなり恣意的に編集された動画ということがわかると、その失望から株価は一気に下落、なんと13.5兆円の減少となりました。

現在の最上位モデルは、2024年2月に発表された「Gemini 1.5 Pro」です。性能評価ではいくつかの指標でGPT-4を上回ると発表されてはいますが、少なくともClaude3には及ばない印象です。しかしながら、そもそもGPT-4の根底で使われている技術は、2017年にGoogleの研究者らが発表したオープンソースの「Transformer:とらんすふぉーまー」であり、加えて学習元となる膨大なデータの蓄積を持つGoogleがこのまま後塵を拝するとは思えず、今後の動向が注目されるところです。


▼ Mistral(みすとらる)シリーズ|開発会社:Mistral AI

https://mistral.ai/

フランス企業のMistralが開発しているのがこのMistralシリーズです。最上位モデルは「Mistral large」ですが、性能は「GPT-4」には劣ります。

他と比べて突出したところが無いのですが、Microsoftが自社のクラウド環境であるAzuleでのMistral対応を発表して話題を呼びました。

Microsoftは、ChatGPTを開発しているOpenAIと資本関係も含めて強いパートナーシップを結んでいます。そのためGPTシリーズだけを取り扱っていくのだろうと漠然と考えられていたのですが、このMistral対応の発表は「OpenAI以外の会社の製品も取り扱うのか!?」と多くの人に驚きを与えました。


▼ Llama(らま)シリーズ|開発会社:Meta

https://llama.meta.com/

Fecebook、Instagramを運営するMeta社が開発したLLMで、オープンソースとして公開されていることが大きな特徴です。最上位モデルは「Llama2 70B」で、GPT-3.5をやや上回る性能として発表されています。

Llamaは、2023年2月にGPT-3に匹敵するLLMとして、世界中の学術研究者、政府・市民社会・学術機関の関係者など一部の人や組織に公開されたのですが、そのわずか1週間後に掲示板サイト4chanでリークされてしまいます。しかし、それが開発者の中で人気となり、Llamaを使った生成AIが数多く開発されました。

2023年7月、Meta社はその後継となる「Llama2」を商用利用も可能なオープンソースとして発表します。GPT-3.5にはやや劣る(部分的に勝てる)性能ですが、ダウンロードして使えるところがLlamaの何よりの魅力です。(=インターネットに接続できないクローズドな環境で使える)

Meta社は、LLMのオープンソース化に勝機を見出そうとしている節があり、引き続きこのオープンソースLLMの分野をけん引していくと予想されます。

ちなみにMicrosoftは、Metaとも資本関係があり、生成AIの登場によりさらにその存在感を高めています。

できる会社は "ChatGPT的なもの" を使い分けている!?その方法とはー


実は、ここまでお話してきたLLMには、必ずと言っていいほどAPI(えーぴーあい)と呼ばれるプログラムとの接続口を持っています。このAPIとオープンソースのチャットソフトを接続すると、1つの画面で複数のLLMを切り替えて使えるようになります。

当社が生成AI(LLM)の導入支援をする際には、このチャットソフトを活用して「自社専用の "ChatGPT的なもの" が使える環境をつくる」ことをお勧めとしているのですが、その理由の1つがこの「LLMの切り替え」ができるからです。

以下のスクリーンショットをご覧いただきたいのですが、これは当社の "ChatGPT的なもの" が使える環境ですが、複数のLLMが切り替えられるようになっています。つい先日、Claude3が発表された際にもその翌日には業務で利用できていました。

各種LLMを切り替えて使用している様子

LLMの進歩は凄まじく、導入時には最高性能のLLMであったとしても半年後にどうなっているかは誰にもわかりません。つまり、ChatGPTなど1つのサービスとだけ契約していることが将来的にネックになる可能性があるということです。

そして、この自社専用の "ChatGPT的な環境" をお勧めするもうひとつの理由が「情報セキュリティ」です。ChatGPTをはじめ無料版として提供されているLLMのサービスは、ユーザーから入力されたデータを学習に使うことを規約で謳っています。

非常に怖い話なのですが、便利だからと従業員が個人の無料アカウントで業務データを入力していたというケースを実際に聞いています。また今後は、取引先に対しても生成AIの利用について注意・通達が必要になるでしょう。

自社専用の環境を整えるということは、単にソフトウェアを導入したら完成という訳ではありません。誰に・どういった使い方を許容するのかといったガイドラインや運用ルール作りが合わせて必要になってきます。当社ではそうした組織運営面の支援も行っておりますので、ぜひご相談いただけたらと思います。

さいごに

テキスト生成AI(LLM)は、うまく業務に適用ができれば劇的な効果を生み出します。しかしながら、その使いどころは会社ごとによって違ってきます。他もやってるからという理由でいきなり全社導入などはせず(このやり方ですと恐らく10%未満の利用率になります)、まずは小さな環境を構築して検証しながら見極めていくことが成功への近道になります。


当社は、設立から19期目となるマイクロ法人(代表取締役のみ)です。主にシステム開発のプロジェクトマネジメントや技術支援、SaaSの開発・販売のほか、最近では生成AIのご相談・導入支援を事業として行っています。