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日々読書 ‐ 教育実践に深く測りあえるために 

 今週(8月10日~8月16日)は、先に紹介した本を含めて次の文献を読んだ。前半は、仕事と絡んだ読書となった。息子と本屋に行って、息子が本を選ぶ間に、手にとって買ってしまったのが、今井むつみさんの本である。タイトルが呼びかけてきた。
 
・ 安井孝『地産地消と学校給食―有機農業と食育のまちづくり』コモンズ、2010年。
・ 藤原辰史『給食の歴史』岩波書店、2018年。
・ 保坂享『学校と日本社会と「休むこと」―「不登校問題」から「働き方改革」まで』 東京大学出版、2024年。
・ 末冨芳編著『子どもの若者の権利とこども基本法』明石書店、2023年。
・ 今井むつみ『「何回説明しても伝わらない」のは、なぜ起こるのか―認知科学が教えるコミュニケーションの本質と解決策』日経BP、2024年。
・ 養老孟司・中村桂子・池沢夏樹・春山慶彦『こどもを野に放て!―AI時代に活きる知性の育て方』集英社、2024年。

 『「何回説明しても伝わらない」のは、なぜ起こるのか―認知科学が教えるコミュニケーションの本質と解決策』(今井むつみ)の中で、書類の誤字を上司に指摘されたとき、指摘されたところだけをさっと直して、「確認してください」と上司のところに持っていくのではなく、他にも誤字や修正の必要のあるところがないかを自分で見直してから、「誤字を見直しましたので、最終チェックをお願いします。」と持って行ったり、「誤字以外にお気づきな点がないようでしたら、こちらで進めてよろしいですか?」と仕事を進めたりする態度が求められる点が指摘されている。加えて、上司あるいは先生と呼ばれる立場になると、周囲から「確認してください」と言われることが多くあるが、ときには厳しく「これは『確認してください』という内容のものではないよね」と伝えることが必要だとも指摘されていた。もしかしたら確認を頼んだ当人が、自分ですべき判断を避けているかもしれないからである。ここでは、互いに見えない心の内を擦り合わせていくことが、「相手の立場に立つ」ことに近づけるのではないかというのである。

 先日、学習支援の際に、学生に問題集のコピーを頼んだ。でも、コピーに欠損があった。コピーの一部が欠けているページがいくつか見つかったのである。でも、今井さんの本を読むと、「コピーを頼む」という私の行為に問題があったことに気付いた。

 私は、問題集のコピーを学生に頼みたかったのではなく、問題集の加工を頼みたかったのである。数学の得意な中学生に渡すコピーなので、問題集のコピーに直接自分で式と答えを書き込めるよう、B5からA4に拡大し、1ページ解いたらすぐに答え合わせができるよう、次のページに答えのページのコピーが続くよう、問題と答えを並べ直すという工夫をしたかったのである。1まとまりの問題を集中して解きながら勉強をリズムに乗せていくには、どうすればいいかを考えたのだが、私が考えたことは、伝わっていなかったのである。「コピーをしてください」という指示だと、学生は私から依頼を受け取るだけで、そのコピーした問題集に取り組む中学生にとってどういう意味があるかは共有できていなかった。相手の枠組みに合わせて、こちらが説明をしていなかったのである。

 T・Aを務める院生に講義終了後に出欠にかかわる課題の集約をお願いすると、ただ課題に取り組んだ用紙を集めたまま私に渡す院生と、学籍番号順に並べ直してから渡す院生に分かれる。最近は、講義を受けている学生に、「課題ができたら自分の学籍番号の前後の学生に渡して退席してください」と指示をして、T・Aに集めてもらうことをやめていた。しかし、「課題を集めて集まったら私に届けてください」とT・Aに指示をするのではなく、「課題を集めて、その後、出欠を確認しますが、どのように集めますか?」とT・Aと対話することが必要なのだと気づかされた。コミュニケーションは、関係性が育む。互いに、コミュニケーションの質が向上していく対話の在り方が重要だということを学ぶ読書体験となった。

 

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