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来世のカフネ

何よりもその吐息が欲しかった
狭いワンルームの窓際
もう睡眠用には使われなくなったベッドの上で
ただ甘いだけで思いやりのない
そんな吐息が欲しくてたまらなかった

脚だけで相手の機嫌を伺えば
今日もまた同じ罪を重ねるらしい
勘がいい女とは同時に都合のいい女だ
そして計算もすばやい
今日も女として扱ってもらえないのに

準備を怠った数時間前の自分を恨むなんて事はしない
手を抜けば抜くほど時間を請求できるのだから
かといってその手が優しくなるわけでもないけど
清々しい朝に強烈な痛みはミスマッチだから好きだ
死にたくなるくらいの罪悪感なんてとっくにない

美しい優しさとか純粋な愛とは
そんなものわたしはずっと求めていなかった
夢は見れば見るほど正気を失う麻薬だ
麻薬に手を出してはいけないって小学校で勉強したし
わたしにもそれくらいの分別はまだつくらしい

春を売るって、どんな語源なんだろう
そんなことを思いながら始発の電車を見送る
生温い季節が嫌いなわたしにとって関係ないけど
今日もそれなりに稼いで、それなりに愛した
それでいいじゃない

真実の愛のキスで目覚めるのは
みんなから愛されるお姫様だけでいい
これほど貪欲でいて切り替えの早い女は
ハッピーエンドなんか似合わないし
そう吐き捨てて白馬が来るのを秋葉原駅のホームで待った

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