青い陽炎は白昼夢を見るか

また、会った 夢の中で
土砂降りの雨 ずぶ濡れの私
静かに車が目の前に止まる
運転席には知らない大人がいる
どこか懐かしいのはなぜだろう
何も言わずにタオルを差し出される
テールライトに照らされる君の横顔
切れ長の目 白い肌 大きな口
真っ黒な長髪にはゆるいパーマ
ダボダボした灰色のパーカー
キュン、て音がどこからか聞こえる

思い出せない 霧の向こうの君
確かにその手を握ったことがあるのに
髪を留める仕草も
拗ねると三角座りする癖も
好きなバンドも カラオケの十八番も
全部全部 覚えているのに
その全てが夢の中
君のことが分からない

君が運命の人ってやつですか?
現実主義の私でも信じてしまうよ

夢の中の君を思い出す 午後七時
相変わらず人の多い改札
大きなリュックを背負い 家路を急ぐ
嗅いだことのある匂いが鼻をかすめる
少し甘ったるいバニラの匂い
慌てて後ろを振り返る
人混みの中 少し小さい君の後ろ姿
君もすぐに振り返る

時間が止まった
壊れそうなガラスを扱うように
秘めた想いをぶつけるように
視線がゆっくり、確かに絡み合う
ああ、この人だ 大好きな人だ


ずっと前から知り合いだったような
夢に出てきた君は 今
純白に身を包み 大きなロザリオの下
私は慣れないヒールとドレスで
君の元へ 1歩ずつ
誰もいない 二人だけの誓い

これから始まる物語
君と紡いでいこう



草案:2017年の初めの方 完成:2017年夏らへん

加筆・修正:2020年7月11日曇り

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