それを人は何と呼ぶ

少し間違いを犯せば
むやみやたらに人を小馬鹿にするテレビも
それを簡単に信じてしまう大衆も
全部全部気に入らなかった
この国が嫌だった だから旅に出た
少年は時間旅行を始める

特に好きな時代があるわけでもない少年は
タイムマシーンを適当にいじり
とある時代のとある国
見た目は中世ヨーロッパ?
町の商人らしき人物が少年に話しかける
《坊っちゃん 早く国王様の所に行きな
でないと 公開処刑されちまう》
少年は国王の命令がすべての
つまらなくて恐ろしい国に降り立ったのだ
職業も結婚も休日の予定さえ
すべて1人の男が決める国

おっさんがどうした
国王の命令なんてくだらない
こんな生活嫌なんだろ
俺が変えてきてやるよ
商人は少年を哀れ、蔑む
国王様に逆らえるもんならやってみろ
明日にゃ大広場でお前の首が泣くだろうよ
少年は王宮へ 走る 走る 走る

若くて濁った汗が 石畳の上から更に道作る

王宮に王様はいなかった
王様はどこだ、侍女は言う
先ほどお出かけになりました
王様はどこだ、お妃様は言う
行くところがあるとおっしゃいました
王様はどこだ、少年の心は言う
俺が王様なら

その男は丘にいた
街も太陽も男の背中も 全てが小さかった
少年は町の不満をぶつけ 王の涙を見る
私だって孤独だった
いつだってひとりだった
でも強くいなければならなかった
この国を守るために
強さなんて分からなかった
批判されるのが怖かった
人々を管理したことを詫びる
ありがとうな

少年はやりきれなかった
男をちゃんと見なかったことも
王様の戦いに誰ひとり気付けなかったのも
彼が自身の弱さを悔いたことも
小さい頃読んでもらった童話の王様はみんな強かったから
少年は言う
貴方は弱くて良いのです
人々のことを優しく包んでやってください
痛みが分かるから優しく接することが出来る
それは傷付きながら戦ってきた者のみが持つ
強力な軍隊よりも強い武器
優しさが強さに変わるのです
優しさが人々に伝われば
国は繁栄し、国王は強くなります

空と少年だけがその街で輝いていた

元の時代にもどる
相変わらずニュースはありもしない
ゴシップを報じて小馬鹿にしている
でも、いまはこんな国が好きだ
みんな弱くて みんな戦ってる



草案:2016年夏   完成:2017年夏

加筆・修正:2020年7月9日丑満時

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