VALIS二次小説 理想が欲しくて 裏世界編Main Story -004(Case of FEI)

夜も更け、VALISの皆も眠りについた頃。俺は一人、テント内の訓練場に居た。

目を閉じたまま俯く。どれだけ時間が経っただろうか。5分か?10分か?それとも1時間か?それすらも判らない程集中力を高め――唐突に鳴り響くブザーに合わせて能力を発動する。

PARTS_CAST WINGS

突如として現れた立体映像ホログラムの的に向けて、“肩甲骨の内側から生えた猛禽類のような翼”を叩きつける。

局所変身パーツキャストウイング

局所変身パーツキャストとは、変身する“要素”とその位置を絞って発動する応用技術だ。                   重要なのは、変身する“対象”ではなく“要素”であること。

偽造生命フェイカーの正しい発動方法は、“脳内で思い描いた生物に”己の姿を偽造することだ。                              だが、局所変身パーツキャストの場合は生物に偽造するのではなく、.............偽造するのだ。

その局所変身パーツキャストを使い、鳥類の身体的特徴である翼を造りあげた。

現れた立体映像ホログラムの的を翼でかき消す。                  飛びかかってきた的は切り払い、背後に忍び寄った的は鋭利な先端で突き刺す。                                小さな群体として襲い来る的は、翼同士を打ち付けて指向性を持たせた衝撃波によって撃ち落とす。

そんな訓練を終え、一つため息を吐く。                 VALISが『あちらの世界』でのパフォーマンスを行うまで、あと1週間。メンバーはそれぞれの研鑽を積み重ねていた。

それに対して、少しだけ思うところがある。

(ほんと、皆楽しそうだ)

彼女達は、自分に定めた課題を超えようと必死だ。自分1人で解決するのではなく、時には他のメンバーからアイデアを得て進む。

トラウマのある世界だ。彼女達の心の裡には、不安や恐怖が全てを支配しているのだろう。――それでも、彼女達は止まらない。そんなものは、選択肢にすら存在しない。

それが、本当に羨ましい。

自分にはないものを持っていて。

自分が欲しかったものを持っていて。

ある意味では、フェイもVALISと同じだ。                フェイにも絶望があった。                      見るもの総てが色褪せていて、毎日が本当に苦しくて、生きるのが辛くて、死にたくない日なんかなくて、それでも自分を傷つけることすら出来なくて、狂わないように逃げることで精一杯だった。

彼女達だって同じなのに、今ではそこに笑顔がある。自分にはないものを、持っている。居場所がある。

それだけが、フェイにとっての悩みだった。

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