ボリュームゾーン私立中学受験生の併願作戦 ― 2023年度 東京・神奈川版
YN50くらいの併願作戦の情報は意外と少なくて困りませんか?我が家のケースをデフォルメして記事にまとめましたので、役立てていただけると嬉しいです。
※補足
登場する偏差値は日能研の2023年度入試予想偏差値(2022年12月版)を使用しています。また、この記事の併願校は2020前後に中学受験を終えた姉弟の併願校をもとにしてリアルなものにしてはいますが、匿名化のために一部の学校を変更して作成しております。どうぞご了承下さい。
1. 本記事を執筆した背景
中学受験に向けて12月の模試まで結果が出揃うと、いよいよ受験日程を確定させる時期です。中学受験の日程計画は、子ども本人は成熟度的に全部を決めるのは難しいし、午前午後・複数日の受験が可能で複雑でもあります。このため親の頭を大変に悩ませることになります。そして多くの受験生が数年間頑張った結果を試されるで、なるべくなら志望度が高い(おそらく多くの場合はより偏差値の高い)学校へ受かるような作戦を立ててやりたいと考えるのが親心です。私もそうでした。
ところがいざ受験日程を考えようとするとさらなる困難を感じました。受験情報は業界にとって集客力があり成功例としてわかりやすい御三家を始めとする難関校に関するものにかなり偏っています。長女・姉の日能研偏差値43(N43と表記)、長男・弟がN47で、現実的な志望校がN50くらいになるいわゆる「ボリュームゾーン」だった我が家では情報不足を感じていました。ボリュームゾーンなのに、です。おそらく今の中学受験生の保護者にも同様の思いをされている方が相当数いるでしょう。そこで私がほしかった具体的な受験日程検討の内容を、実体験にもとづいてまとめてみたのがこちらの記事です。
内容的には子育ての一大イベントとなった中学受験の記録を個人的に残しておきたい気持ちに端を発していることから私的な側面もあるのですが、どうせなら誰かの役に立つ形で残したいという思いで公開してみようと思います。
2. 姉弟のプロフィール
姉弟のプロフィールはこんな感じです。どちらも親が焦って叱りつけてしまうことは多々ありましたが、総じて真面目に取り組んだと思います。
姉 N43 (ただし国理2科目だとN50)
弟 N47
3. 我が家の併願日程確定版
結論から言うと受験日程と結果は以下のようになりました。
姉・N43(国理N50)女子
弟・N47男子
◎が進学先、○が合格、✕が不合格です。丸囲みの数字はその日程までの最大での受験回数、学校名のあとの(N○○)の数字は日能研の合格80%予想偏差値を示しています。少し脱線する補足になりますが、ここでは説明が複雑になるので日能研偏差値に統一していますが、この偏差値帯の場合は首都圏模試の偏差値のほうが精度が高いと思います。
これ以降では1月校(埼玉・千葉)と2月校(東京・神奈川)に分けて検討したポイントを記述します。
4. 1月の併願作戦
1月校は早い段階から相応校と安全校を1校ずつ受けることに決めていました。少し時間はかかるが自宅から通える学校であることも条件にしました。相応校のほうは少し遠くても志望度が高いと思える学校の受験機会は多いほうがいいという考えで受験することにしました。安全校のほうは通いたいと思える、通える距離にある学校の合格が早くにあれば安心して2月の東京・神奈川受験を迎えられるようにという考えでした。
姉・N43(国理N50)女子
弟・N47男子
しかし思惑どおりに学校選びをするのは難しく、実際には通える範囲に相応校と呼べる学校がなかなかありませんでした。姉弟ともに日程に組み込んだ大宮開成は塾に通い始めた頃は相応校くらいになると思っていたのですが、人気・偏差値ともに急上昇でそうもいかなくなりました。とはいえ郊外の雰囲気が気に入っていたことと、受けるからには通える距離の学校にしたいと考えると他に選択肢もなかったので、当初計画のままチャレンジすることにしました。姉の安全校の武南のほうはまだ出来て間がなく校舎が綺麗で、本人と見学に来た際も好印象だったので受験を決めました。弟の安全校の浦和実業は特待合格もあるという点と英語教育に力を入れているという点が決め手になりました。
塾からのアドバイスに関して、姉の通っていた地元の塾との面談では当初は「東京・神奈川の通いやすいところで確実な日程を組みさえすれば、埼玉受験は必須ではない」と言われました。しかし我が家の方針を伝えたところ、午前午後受験の練習を埼玉でできるのは案外名案だという反応が得られました。弟の通っていたWでは姉の経験もあり予め受験予定校をざっと示したので「良さそうな計画ですね」という感じでさらりと終わりました。
5. 2月の併願作戦
5.1. 受験校候補の検討
2月の受験校に関しては多くの学校を訪問して本人の希望に沿う学校をリストアップしました。その後に、(a)憧れ校(持ち偏差値は気にしないが受かる可能性を多少感じる) (b)挑戦校(持ち偏差値+3~5) (c)相応校(持ち偏差値+-3) (d)安全校(持ち偏差値-3~5)という感じに偏差値帯をわけて、それぞれ受験校をピックアップするという考え方をしました。このときに偏差値1ずつ刻んだところで所詮は予想偏差値にすぎないというように腹を括れたことで多少の心の安定が得られたと記憶しています。
姉・N43(国理N50)女子
弟・N47男子
5.2. 受験日程案への展開
ここまでで大方針、仮組みは決まりましたが複数日程で受験できる学校ばかりでどう組み合わせるかでさらに悩みました。こういう場合には前半の日程のほうが受かりやすいので偏差値にかかわらず第一志望を早く受けるという考え方は有力な選択肢の一つです。塾によってはこれを推奨されることもあります。
しかし基本的には同じ学校では後半の日程になるほど合格者数が絞られるなどの要因で偏差値・倍率が高騰する傾向があるので、前半で確実に合格をしておかないと苦しいという見方もあります。思い悩んだ末に我が家ではこちらの見方に重きをおき、受かりやすい偏差値順に受験をすることにしました。メンタル的に安全第一のプランの方が実力を発揮しやすいだろうし、相応校・安全校に前半で不合格だった場合には同じ学校に再トライしていけば(挑戦校・憧れ校を受けられないのは辛いことですが)実力通りの学校に落ち着き、結果に納得できると考えました。ただこれでさえもまだ方針に過ぎず、実際には各校の受験日程を眺めて日提案を書き出して、また学校を入れ替えてよりよい案がないかと書き直して、ということになってました。
結局12月の後半から出願の締切直前となる1月末までずっと毎日のようにこの日程案と格闘していました。そうして結果として決定した2月の受験日程案が記載した以下の日程です。丸で囲んだ数字はこの日程案の中で最大回数の受験になった場合の受験時点での回数です。
姉・N43(国理N50)女子
弟・N47男子
6. この併願作戦は成功だったのか
受験の結果は冒頭で示したものになりますが、再掲しておきます。
姉・N43(国理N50)女子
弟・N47男子
結局この受験日程計画は成功だったのかを一言で総括すると「とてもうまくいった」と言えます。途中経過は1月に合格不合格を経験し、2月はまず1校納得できる合格を得たことで後半のハードモードに耐えることが出来ました。進学先は姉は挑戦校、弟は相応校ということで、大番狂わせのあこがれ校合格とはならなかったものの納得の結果でした。幅広い偏差値帯で行きたい学校が選べていて、なおかつ楽観シナリオと悲観シナリオの双方を予めシミュレーションできていたので、実際の結果も満足なのはもちろん、どうころんでも親も本人も満足の行く結果と言えただろう作戦でした。そういうわけで、ここでご紹介した方法で検討するのは結構多くの方におすすめできるものと思っています。
7. 中学受験生とその保護者のみなさまへ
なにはともあれ安全・健康の面で順調に、実力を出し切れる受験になるようにお祈りします。当時の私と同じように中学の受験日程計画でお悩みの保護者の皆様の検討の一助にしていただけたら大変うれしく思います。もしも参考になりましたら「スキ」をクリックしていただけると幸甚です。
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