見出し画像

ジェンダーの違和感を出発点に、未来を切り拓く。ジェンカレ立ち上げ秘話

文・編集:鈴木 菜那(ジェンカレ事務局)

「#男女共同参画ってなんですか」を立ち上げ、若者と国の架け橋となった櫻井彩乃が、ジェンダー課題を包括的に学ぶサードプレイス「ジェンカレ」を旗揚げした。

誰もが性別に制限されず、自由に選択して生きていける社会を目指すためには、ジェンダー平等の実現が必要。ジェンカレは、これからを生きていく若者に向けて、フロントランナーからジェンダーを学び、自身の経験や違和感と結びつけ、「自分にできることはなにか?」と考えて行動にうつすことを目指したサードプレイスだ。

ジェンカレのような場所が、なぜ若者に必要なのか? 若者が参加しやすいように、どのような工夫が凝らされているのだろうか? ジェンカレ代表・櫻井彩乃自身がジェンダーに関心を持ったきっかけや、ジェンダーを学ぶ必要性を聞いた。

ジェンダーを学ぶ場がない

ジェンダー平等な社会の実現に向けて国が計画を立てているものの、これからの未来を担う若者に、耳を傾けられる機会は少ない。若者の立場からしても、ジェンダーによる違和感に気づいたものの、どうやって行動を起こしたらいいか、わからないこともあるだろう。

そこで櫻井は、30歳未満の若者を対象とした「#男女共同参画ってなんですか」を2020年8月に公益財団法人ジョイセフ内で立ち上げた。ジェンダーや第5次男女共同参画局基本計画に関する情報をSNSを使って発信し、若者の意見や疑問を取りまとめ、パブリックコメントとして国へ提出するというもの。

活動を通して、さまざまなバックボーンを持つ若者との対話で聞こえてきたのは、ジェンダーを学べる場所や同じ話題で話せる仲間がいないことを嘆く声。この経験が、ジェンカレ設立のきっかけとなる。

「とくに地方に住む若者と話していると、『同世代の友達とジェンダーの話がしずらい』『ジェンダーに興味を持つな、と親に言われた』『大学に行ってるけど、ジェンダーの講義が人気すぎて受けられない』と、ジェンダーを考えたり、勉強したりする場が少ない現状が見えてきました。問題があるとわかっていて、なにかしたいんだけれども、その気持ちをどうやって形にしたらいいかわからない若者が多い。そのモヤモヤを、若いパワーとしていい方向に変えたいという思いで、ジェンカレを構想しはじめました」

画像3

当たり前に疑問を持つ若者が増えている

ジェンダーに興味があると明確でなかったとしても、これまで当たり前だとされていた慣習に疑問を持つ若者が多いという。

「ジェンダーに興味がない、性別による差別を実感したことがないと言う人の話をよく聞いてみると、我慢しているだけだったり、なにか引っ掛かってもそれがジェンダーの問題だと気づいていない場合もあります。みんながみんな、というわけではありませんが、今までの世代が当たり前にしてきたものに対して違和感を持っている人は、前の世代よりも多いんじゃないかな。感覚や価値観が少しずつ変化していくにつれて、潜在的にジェンダーに関心がある人が増えていると思っています」

「人生をジェンダー平等のために使いたい」と決意する櫻井自身がジェンダーに興味を持ったきっかけも、学生時代に投げかけられた言葉に対して抱いた “違和感” だった。

「高校2年生のとき、わたしともう1人の男の子で学級委員をやっていました。合唱祭があったのですが、本番までわたしたちのクラスはほとんど練習ができず、リハーサルだけでも練習しようと、当日は早い時間に集合しました。ところが、その学級委員の男の子だけ、直前になってやっと登場。『さすがに1回だけでもいいから練習しない?』と声をかけると『お前女なんだから、黙ってかわいくしていればいいんだよ』と言われたんです。合唱コンクールのことは覚えてないけど、歌ってから帰るまでずっと泣き続けていた記憶があります」

ジェンダー平等のために生きる

そのときの感情は、悔しいというよりも、「この人、なに言ってるんだろう?」と、とにかく衝撃から溢れ出る涙だった。同じ人間なのに、「男だから」「女だから」と性別で決めつけられる違和感。

「家に帰って母親に話してみると、これでも日本は少しずつよくなってきているものの、世界には女の子だからという理由で生まれた瞬間に殺されたり、勉強ができない子がいると知りました。その翌月、ジェンカレのアドバイザーでもある大崎麻子さんが登壇する国際ガールズ・デーイベントに参加。途上国の女の子の現状を聞いて、生意気ながら『日本にもこんな同世代の子がいるです!』と言ったことを覚えています。そこから、わたしの人生をジェンダー平等に使いたい、このために生きようと振り切りました」

画像4

世代を超えて仲間と一緒に取り組む

ジェンカレは、日常のモヤモヤを出発点にジェンダーを自分ごと化し、自分でできることはなにか、考えを張り巡らせることができるサードプレイスだ。各分野の第一線で活躍するフロントランナーを講師に招き、座学と対話を通してジェンダーを基礎から学んでいく。

ジェンカレの「ジェン」は、「ジェンダー」でありながら、「ジェネレーション」の意味も持つ。

フロントランナーや一緒に学ぶ仲間と出会い、さまざまな経歴を持つ人たちが一堂に会することで、相互にインスピレーションを受けると同時に、与える場所となるだろう。

「世代を超えた仲間と一緒に学んでいくことが大切です。こんな時代だからこそ、全国にいるジェンダーに関心のある人たちがつながって、一緒に問題を共有し、ともに社会を変えていくことが大事だと思います。インターネットを開けばいろんな情報が溢れていますが、とくに若い世代には正しい情報を知ってほしい。ジェンカレでは講師を『フロントランナー』と表現していますが、各分野の第一人者から学ぶという趣旨のもと、オンラインのコミュニティーという形での開催を決めました」

スクリーンショット 2022-03-02 15.33.11

自分らしく生きるための武器を揃える

ジェンカレのゼミ生として参加するできるのは、30歳以下のユース世代。(各回の座学はどなたでも参加可能)これからの未来を生きて行くのはユース世代なはずなのに、自分たちの意見を反映される機会がほとんどない。

わたしたちは、誰かがつくった未来を生きたいのだろうか。年を重ねたとき、自分らしい人生を、胸を張って歩んでいけるのだろうか。

活動を通して実際の現場を見てきたからこそ、ユースに対する真っ直ぐな想いがある。

「現状を知って、それがおかしいならおかしいって言うべきだけど、おかしいと言えないときもあります。政策をすぐに変えることは、すごく難しい。それでも今の社会でより自分らしく、ポジティブに生きていくためには、知識という名の武器がユースに必要だと思います。サバイブしていくために手に入れた武器をどうやって使うのか、どうやって選択していくのか、というのを学んこれから出くわす困難を乗り越えてほしいので、ユースを対象に学びの場を提供したい気持ちが強いです」

一歩を踏み出すいつかのために

ジェンカレでは、受け身の姿勢で勉強するだけでなく、自分の考えを整理したり、相談できる仲間と出会ったりしながら、最終的にアクションプランの作成を目指す。壮大なプランでなくても構わない。もちろん政策を変えたいという人がいてもいいし、自分が変わりたいという人がいてもいい。親やパートナーにNOと伝えられるようになりたいという目標も、ジェンダー平等を切り拓くために価値のあるアクションだ。

スクリーンショット 2022-03-02 15.35.11

今すぐにできなかったとしても、いつかどこかのタイミングで、ジェンカレで得た知識や考え方が役に立つときがくるだろう。

「たとえば、就職活動をするときに、ジェンカレのインプットが判断基準になって企業を選んだり、親になったときに、ステレオタイプな教育をしないであったり、いつ行動するのかはそれぞれ。ジェンダー平等のために一歩踏み出すことを決めたその日のために、情報や学びを提供します」

モヤモヤは未来へのタネ

ジェンダーの基礎からはじまり、幅広い分野を網羅しているため、はじめてジェンダーに触れる人から専門的に勉強している人まで、じっくり学べるプログラムが組まれている。経済、政治、性暴力、ジェンダーバイアス、歴史がメインの講座となるが、選択的夫婦別姓や気候変動など、身近で議論されている話題も扱っていく予定だ。

また、「いつでも相談しやすい環境を整えています」と、安心してジェンカレに参加してほしいと話す櫻井。グループごとに勉強やアクションマップ作成の手助けをしてくれるメンターがつけられる。

「毎回の講義で、課題が出されますが、アクションに抵抗がある人や、なにをしたらいいかわからないという人も、わたしたちが全力でサポートします。みんなでやれば怖くないし、ひとりじゃないから大丈夫です!」

最後に、ジェンカレの参加を考えているユースに向けて、メッセージをうかがった。

「『ジェンダーに興味がある自分がおかしいのでは?』と思う必要はありません。モヤモヤしている気持ちは、これからの未来をよくするタネ。その気持ちが社会を変える力になると思います。わたしがいちばん伝えたいのは、ユースの存在が今までよりも重要視されているということ。ジェンカレでいろんな人に出会って学び、ジェンダー平等の未来を切り拓く人になってくれたらいいなと思います。

もしかしたら内容はハードかもしれませんが、ただ意識が高いだけの集まりにはしたくありません。心地よく学べるような環境を整えて、みなさんのことをお待ちしています!」

櫻井 彩乃

プロフィール写真_#男女共同参画ってなんですか代表 櫻井彩乃

1995 年生まれ。高校2年生の時に「女は黙ってろ」と同級生に言われたことがきっかけで、ジェンダー平等実現を目指し活動を始める。大学在学中、東京都葛飾区男女平等推進審議会委員、葛飾区女性のための防災対策等検討委員会委員を務める。2020年9月、「#男女共同参画ってなんですか」代表 として、第5次男女共同参画基本計画策定に向けたパブリックコメント手続きにおいて、30歳未満から寄せられた声1,000件以上を提出し、併せてユースからの提言書をまとめ担当大臣に手交した。また、同年11月Change.orgで実施した選択的夫婦別姓の導入を求めたオンライン署名キャンペーン「 いつになったら選べますか」では5日間で3万筆超を集めた。内閣府男女共同参画連携推進会議有識者議員、こども政策の推進に係る有識者会議臨時構成委員を務める。

ジェンカレ

画像6

生まれた時の性別に左右されずに自分らしく生きられる、ジェンダー平等社会の実現が必要です。

しかし、2021年発表の「ジェンダーギャップ指数」によると、日本のスコアは調査対象である156カ国中120位。日本にはいまだにジェンダー平等実現への課題が山積みです。

SDGsの影響もあり、様々な場で「ジェンダー」という言葉を目にする機会が増えていますが、日常で感じたジェンダーに基づく違和感について調べてみても、「難しそう」「私に解決は無理」と感じてしまっているのでは?
そこで、私たちは、ジェンダーについて包括的に学び、一歩踏み出せる場がいまこそ必要だと考え、ジェンダー平等な未来を拓く次世代のサードプレイス『ジェンカレ』を開講します。

一方通行な講演・イベントではない、各分野のフロントランナーによる講義やワークを通じて、受講生がジェンダー平等な未来を拓くことを目指しています。

お問い合わせ:gencouragequ@gmail.com


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?