ChatGPTの現在位置 〜 金融マーケットインフラ・オタクからの観点から 〜
昨年11月のリリースから一気に世界の注目を集め、日本でも今大注目の対話型AIであるChatGPT。IT業界などにいると話題に出ない日がないほどである。自分も思うところあり、金融業界でもなるべく多くの人たちが自分の手で触って試して理解したり、意見を持った方が良いと思うので登壇する機会などには一つのトピックとして話すようにしている。
そんなとても話題の対話型AIであるChatGPTについて技術的な詳細ではなく、この技術の現在の立ち位置やインパクト、そして将来に向けて考えることなど少し書いてみようと思う。
ChatGPTの軽い概要
ChatGPTはOpenAI社が公開した対話型AIであり、自然言語でチャット形式にて人間と対話することができさまざまな質問に答えてくれる。体験としてはチャットボットの一種だが、その自然言語での対応や答えの質が今まで見たAIより遥かに高いということで世界を驚かせている。
またその中でもマイクロソフト社の動きが速く、既に100億ドル(約1.3兆円)という巨大投資を発表し、自社検索エンジンのBingまたマイクロソフトOffice製品などで活用されるのでは?と予想されている。
で、ChatGPTそして対話型AIって結局何なの?
様々な業界に激震を起こし始めているChatGPTだが、実はその体験の理解は難しくない。人間が入力した質問を自然言語のまま理解し、AIが最適の答えだと思う答えをまた自然言語で返してくれる。これは人間がGoogleなどの検索エンジンを活用しながら情報集めをしている作業に似ており、自分はChatGPTを
と表現している。今までだと情報を探しているときは
・① Googleなどの検索エンジンで検索。
・② 出てきた結果を吟味。興味があるものをクリックして確認。
・③ 興味があるものをいくつか見た後に自分の意見を作り上げる。
そして満足した結果が得られなかった場合はまた①~③を繰り返す、という手順である。
それがChatGPTの場合は普通に人間に話すようにチャットのインターフェースで質問もしくは相談をし、10秒など待てば自然言語で答えを返してくれ、もしその答えが満足いくものでなかったら、また人に話すように説明しながら聞き直せばよい。まさにロボットが着ぐるみを着て人間とコミュニケーションができる姿である。
ChatGPTは仕事を奪うのか?
このような革新的な技術が登場すると常に出てくる「この技術はどのような仕事を人間から奪うのか?」問題であるが、既に教授、プログラマー、ジャーナリストなどが仕事を奪われるのではないか、ということが書き始められている。
ただ検索エンジンやスマホなどの技術が登場した後の世界を見てみれば、どちらかといえば仕事を奪ったというより生活や仕事にも便利になったという側面の方が強く見える。ただその技術が仕事を奪うというよりは、検索エンジンやスマホなどの技術の活用を考えられなかった組織や個人が競争に負ける、という側面は存在する。そしてそのような理由から、ChatGPTにも同じで今の時点などで触ってみたり考えてみたりして、この技術の将来や活用の仕方を考えておくことが大事なのである。
ChatGPTの問題①:間違えた情報
ただChatGPTも完璧なわけでなくいくつかの問題が考えられる。一番明らかなものの一つがChatGPTが間違えた情報を返すこともある、ということである。インターネットでもChatGPTが間違えた情報を返す例というのがかなり挙げられている。
ただしそこで思い出して欲しい、ChatGPTは検索エンジンというロボットが人間と話せる着ぐるみを来た姿なのである。普段Googleなどの検索エンジンを使って検索をしても探している情報(正解)と探している情報でないもの(不正解)が混在している状態で、人間がどれに興味があるか選んでいる状態なのでChatGPTが提出する回答ももちろん現時点では人間が答え合わせを一緒にする必要性というのは発生する。
また自然言語で質問を受けているので簡単に答え合わせができる質問だけでなく、複雑な質問そして意見などを求める質問もあり答えが正解なの判断は質問をした人間の主観に委ねられておりロボットが統計学的に計算するだけでは常に正解を求めるのは難しい。やはりChatGPTであっても人間の業務をサポートするものであって大きな形で仕事を奪うものではないとここでも思われる。
ChatGPTの問題②:機密情報の扱い
ChatGPTの強さというのは活用できるシーンの多さである。検索エンジンと同じで人間が調べたいことがあるとき、さらには相談をしたいときなどに活躍できるので、その機会というのは一日に何度も出てくる。
そしてその活用できるシーンの多さ、ユースケースの強さが引き起こす問題も存在する。あまりにも便利なため私用だけでなくもちろん業務でも使いたくなるのが自然である。ただそこで考えないといけないのは、ChatGPTはおそらく聞かれた質問をすべて読み、貯めて、分析しているということである。その事実を理解して業務で活用するときには機密情報などを扱わないように気を付けないといけない。投資銀行業務のM&A情報や、医療業界の個人情報、研究所での機密情報などを用いて活用するのは危険である。ただしあまりにもユースケースが強いのでシャドーIT(企業が使用許可をしていない、あるいは従業員が利用していることを企業側が把握できていないデバイスや外部サービス)として登場してしまうのが容易に想像できる。
このような機密情報の扱いの問題を解決するためには、ChatGPTの企業用導入設定などが必要で
・世界の一般活用可能なデータはクラウドに引き込まれ学習に活用されるが
・企業から出るデータは1)その企業用の学習にのみ使われる、もしくは2)全く学習用途には使われない、などを企業側で設定することを可能にすることが必要になる。
金融での将来的な可能性
ただそのような問題があることを加味してもそれに勝る可能性が金融での活用でも考えられる。現時点で金融のチャットボットによる体験やサービスというのはあまり良くない場合が多く、聞いた質問に対して事前にプログラムされた答えを返すなどのサービスに限られている。またその対話の方法というのはユーザーがボタンなどで選んでおり「対話」という形でない場合が多い。ChatGPTの登場により
・金融サービスを提供するチャットボットが自然言語で対話できるようになり
・聞かれた質問に対して答えるだけではなく、ユーザーにアドバイスをする。投資のアドバイスは規制的に難しくても手順のアドバイスや問題解決のアドバイスなどは可能かもしれない。
そして金融業務の中でもメールや各契約書などをChatGPTが読み込み、概要を教えてくれる、もしくは問題点を教えてくれる、などという将来も容易に想像ができる。
ChatGPTを囲む現在の景色
そして今まで話したような現在のChatGPTを囲む景色に目を向けると
・情報が欲しいプラットフォーマー(今回でいうとChatGPT、また将来的な競争相手):こちらは集めるデータが多ければ多いほど高度な分析を可能にし、ユーザー体験をよくすることができる。もしくはこのプラットフォームを活用してのさらなる将来的な収益化などのために情報やユーザーは多い方が良い。
・リテラシーとビジョンを持って次のステップを考える企業、消費者:プライバシー情報なども考えながら、使い方やコントロールの仕方を考える人たちももちろんいる。
・それ以外のほとんどの狂乱する消費者やプラットフォーマーに情報を食べられてしまう企業や使用を禁止する企業
などが浮かぶ。ただそれでもこのような技術は実際に使った人間と、使わずに分析をしている人間では理解度にはるかに差があるのでなるべく多くの人が自分で実際に試してみて意見を持つことを期待したい。
(あとがき)フィードバックも金融業界の効率化などの仲間も募集しております
いかがだったでしょうか?是非このnoteへのフィードバックも聞きたいし、こんな目線での金融業界の効率化など一緒に仕事をするパートナー企業や個人募集しております。
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