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タクシーとチップ

日本において、「チップ」の文化はあまりありません。

欧米では、ホテルやレストランを使えば、その料金とは別でボーイやウエイターにチップを渡すのは当たり前です。

では、日本でその代わりとなっているものはと言えば、一部のホテルやレストランで導入されている「サービス料」というものかと思います。
お客が自らチップを出す文化が無い分、店側が一律に料金に10%~20%程度のサービス料を上乗せしていることはありますよね。

しかし、日本において数少ない「お客様側からのチップ」という文化があるのがタクシー業界です。

一昔前に比べれば、ドライバーが受け取るチップは減っていますが、それでも一日仕事をしていれば、必ず数人のお客様からチップを頂けます。
チップが減っている要因は、一つはキャッシュレス決済が広まってきたことです。
「チップ=現金」ですので、現金払いのお客様が「お釣りはチップでいいよ」と言われることが減りました。
※今は、アプリ決済の一部で「チップ」を別で支払える機能もあるようですが・・・。
それと、若い人を中心に「タクシーでのチップ文化」が無くなってきていることですかね。

私自身が現役タクシードライバーですが、チップを頂けるお客様と、チップを頂けないお客様で差別をすることはありません。
運賃さえお支払いいただければ、それで十分でございます。

てすが、そんな私が「何故、チップについてnoteを書いているのか?」ということを、次に述べていこうと思います。

冒頭にホテルやレストランを例に出して書きましたが、サービス料の無いホテルというのは、「基本的にセルフサービス」のホテルだと思います。
チェックインで鍵を受け取り、部屋までは自分で荷物を運ぶようなホテルでは、サービス料は基本的にありません。
逆に、ホテルマンが玄関で待っていて、荷物を玄関から部屋まで運んでくれるようなホテルでは、サービス料が設定されているかと思います。(サービス料が無くても、同等のホテルと比較して高額の宿泊料となっていることもあります)

これをタクシー運賃に当てはめると、セルフサービスのホテル料金に相当するものが「出発地から目的地までの輸送のみに対するタクシー運賃」となります。
逆に言えば、輸送以外のサービスは運賃には含まれません。
タクシーを利用する方には、多様な方が見えます。
その中で、全ての方に共通するのが「ご乗車~目的地までの輸送」でありますが、お客様の中には、それ以外の「プラスのサービス」を受けられている方もいるのではないでしょうか?

例えば、
・お客様の都合で、ご乗車前に何分もタクシーを待たせている方
・かなりたくさんの荷物(重たい荷物)を積まれる方
・乗降の際に、ドライバーに介助などをお願いしている方
・車内を汚してしまった方

などなど、輸送以外のプラスのサービスを受けられている方は、「運賃」以外のサービスを受けられていることになります。

タクシードライバーの給料は「運賃に対する歩合給」ですので、ドライバーの意識の中には「運賃=輸送料金」以外のサービスなどしたくないと考えている者もいます。

昨今のタクシー会社では、ドライバーへの教育の中で「輸送以外のサービスも積極的にするように!」と教えますが、日本ではそのサービスに対する対価が「ゼロ」というのが当たり前の文化である以上、歩合給制のタクシードライバーの不満の一因になっている事は事実としてあります。

ここで「チップ」が出てきます。

欧米のホテルやレストランのように基本料金に含まれないサービスを受けた際には、「チップ」を出す文化が日本のタクシーには古くからあったわけです。
しかも、日本のタクシーでのサービスは、昔より遥かに手厚くなっています。
タクシー会社によっては、ドアを自動で開けるのではなく、ドライバーが外に出て手で開けてくれるところもあります。
介護や保育の資格を持っているドライバーもいます。
そうしたタクシーでドライバーが好意でサービスしても、基本の輸送料金である「運賃」だけで良いのか?

法律的な答えは「運賃だけで良い」のですが、日本文化の「お互い様」とか「心使い」というものが「チップ」であると、私は考えます。

不愛想なドライバー、不親切なドライバーにまで、一律にチップを!とは言いません。

しかし、気持ちよくサービスしてくれたドライバーには、お客様の気持ち(チップ)をお渡しいただけると、現役タクシードライバーとして嬉しく思います。

そして、決してチップ目的では無く、タクシードライバー自身も「気持ちよく利用していただく為に」、基本の輸送以外のサービスについてもプロ意識を持ってほしいと思います。

それが、ライドシェアに対抗するタクシー業界にもなっていくと思いますので・・・。

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