「風呂好きな日本人の気持ち」が分かっているビジネスホテル
200泊して巡り会った最強のホテル
数年前、ふと思い至り、2012年の手帳をめくってみたことがある。社会人2年目にあたる年だ。その頃、僕は週刊誌の編集部にいて、下っ端の記者として、全国各地を飛び回っていた。
出張、休暇の旅行を含めて、外泊は何日だったかを数えてみると、なんと200泊を超えていた。200/365。社会人になって一人暮らしを始めたのに、何のために家賃を払っているのか分からない状態だった。自宅は、ほぼ物置だった。飲み会や合コンの機会もたくさん逃した。あれほど外泊することは、おそらくこの先の人生でもうないだろう。
失ったもの(?)も多かったが、1つよかったことを挙げるならば、「出張したら絶対にここに泊まりたい」と思える最強のビジネスホテルに巡り会えたことである。
入社したばかりの頃は、正直、ビジネスホテルは「寝れればいい」くらいに思っていた。また、どのホテルもそこまで大差ないだろう、と考えていた。だから、適当に空いているホテルに泊まっていた。
しかし、それは大きな間違いだった。宿泊した人を熱狂的なファンにしてしまうビジネスホテルがあるとは思いもしなかった。
そのホテルとは、「ドーミーイン」のことである。
このホテルに出会ってから、出張の宿といえば、ドーミーイン一択になってしまった。出張だけではない。プライベートの旅行でも僕はドーミーインに泊まる。並の温泉宿に泊まるくらいなら、ドーミーインを選ぶ。僕の夢は全国にあるすべてのドーミーインを制覇することだ。それくらいの大ファンである。
ドーミーインの素晴らしさは、なんと言っても「大浴場」への徹底したこだわりだ。
日本人は、風呂が好きな民族である。ドーミーインは、そんな日本人のツボを完全におさえている。“風呂好きの気持ち”が誰よりも分かっているビジネスホテルと言っていいだろう。
好きなところ1
「天然温泉」にこだわっていること。
ドーミーインに設置されている大浴場は、基本的にすべて天然温泉である。〈(ホテルを建設する土地に)温泉が見つからなければ、最寄りの温泉地からタンクローリーで温泉水を運んで人工温泉を造るほど、“温泉”にこだわっている〉(『週刊ダイヤモンド』2011年2月5日号)という徹底ぶりだから凄い。
好きなところ2
必ず「露天風呂」があること。
内風呂だけで露天風呂はない温泉宿は結構ある。だが、ドーミーインはビジネスホテルながら、必ず、露天風呂がついている。露天風呂ほど風呂好きのテンションを上げてくれるものはない。
好きなところ3
大浴場の「雰囲気づくり」を疎かにしないところ。
大浴場が併設されているビジネスホテルは結構ある。だが、ドーミーインが僕の心を鷲掴みにしたのは、明確な世界観とコンセプトに基づいて雰囲気を作っているところだ。
風呂好きは、風呂の雰囲気で良し悪しを決める。グルメサイトで飲食店の外観や内観の雰囲気を見て、「この店、いいかも」と思うように、旅行サイトの写真で宿の大浴場の雰囲気を確認して、「この風呂、いいかも」と判断する。
無機質なデザインの湯船や、蛍光灯がガンガンに照らされた明るい大浴場には、まったくそそられない(少なくとも僕は)。
その点、ドーミーインの大浴場は、風流な温泉の雰囲気を徹底して作り込んでいる。
ホテルごとに付けられている「●●の湯」という、その土地に由来する温泉の名前。内風呂は、檜風呂(木風呂)。露天風呂は、岩風呂。浴場内は、和紙(風)の照明によって仄暗く、外気の寒さで湯気が立つと見えるようになっている。また、柚子湯、りんご湯、菖蒲湯……と、四季も演出してくれる。
「ドーミーイン」ホームページより
風呂はエンターテインメントである。単にお湯に浸かればいいってもんじゃない。雰囲気もセットになっているから「気持ちいい」のだ。ドーミーインはそれが分かっている。だから僕は、このホテルが好きなのだ。
創業者は風呂が好きなのか?
ちなみに、ドーミーインの運営会社は「共立メンテナンス」という。社名に余計な主張がない、シンプルないい名前の会社だと思う。じつはそこにも好感を抱いている。
創業者である石塚晴久会長(72)は、東京・葛飾で生まれ、18歳で料理人として北海道に渡ったという。その後、斜里、網走、旭川と道内を“風来坊”として流れた末に、同社を設立した(『財界さっぽろ』2017年9月号)。
ドーミーインの風呂作りに、石塚会長の想いは反映されているのだろうか。過去の新聞記事を探してみたが、石塚会長が風呂好きなのかどうかはわからなかった。機会があれば、いつか理想の風呂について、お話を伺ってみたいと思っている。
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ドーミーインの人気は、近年、急上昇している。日本生産性本部が行った2019年度日本版顧客満足度指数(JCSI)調査において、ドーミーインは「ビジネスホテル部門」で初めて1位を獲得した。納得の結果である。
新たなビジネスホテルの王者・ドーミーインには、これからも“日本人の風呂道”を追求し、もっと多くのファンを獲得してもらいたいと願っている。
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