マルチ商法、新興宗教の勧誘で有名なあの話法(二分法)

最近もとある宗教団体がいろいろと話題になっていますが、以前ではオウム真理教なんていうのもありました。またそうした新興宗教だけではなく、ネットワーク販売とかマルチ商法といった会員を増やしていくビジネスで信者や会員を勧誘する際に使われていた常套句というものがあります。それが今回ご紹介する二分法です。

以下は実際にマルチ商法の会員勧誘のために開かれた講演会に私が潜入取材した際のある一場面です。(一部改変しています)

「何か新しい一歩を踏み出す時というのは、誰しも不安が付きまといます。そういう時に不安や疑念に囚われてしまい、わずかばかりの勇気を出し惜しんでチャレンジすることもなく結果として人生の負け組に落ちていく人たちがいます。一方で不安や疑念に直面した時に、ほんのわずかな勇気を振り絞ってチャレンジし、成功を掴んでいく人生の勝ち組となる人たちもいます。皆さんはどちらの人生を歩みたいと思いますか?」
少し間をおいて、

「答えはもう皆さんの胸の内にあるはずです。それを言葉にする、行動を起こすという一歩を踏み出す勇気さえあれば大丈夫です。私たちと一緒にこの新しいビジネスにチャレンジして皆さんで一緒に笑顔になりましょう!!」

冷静に聴いていたら何とも胡散臭い話なのですが、この講演会の前半ではそのビジネスの親玉が幾多の困難を新たなチャレンジで乗り越えてきた成功談を語っているので聴衆のテンションも上がっています。面白いように勧誘の罠に絡め取られていきました。

さてこの話法、二分法というものなのですがポイントは、
①徹底的に美化した選択肢→成功を掴んでいく人生の勝ち組となる人
②徹底的に貶めた選択肢→人生の負け組に落ちていく人

の二つを提示し、「さぁ、どちら?」と選ばせるというところです。

かなり強引というか無理のある選択肢の見せ方なのですが、いざその場にいると「もちろん勝ち組になりたいです」と答えてしまいます。

人は他人から無理やり押し付けられたり、強制されたりすると反感、反発を覚えます。これを心理的リアクタンスとも呼ばれ、人を説得する際の最大の敵とも言われています。

つまり、「新しいビジネスにチャレンジして人生の成功者になりましょう!さぁ勇気を出して一歩踏み出しましょう!」と押し付けられると人は反発します。ところが二分法では選択肢の中から自分で答えを選んでいる、つまり自分の意思決定なので心理的リアクタンスは生まれません。これが二分法の巧みな点です。

いかがでしたか?この二分法、上手に使えば相手を誘導するのに非常に有効な話法でもありますが、逆に自分にも使われる可能性もあります。わざとらしい、強引な二択を迫られた時は、第三、第四の選択肢を出してその場をやり過ごすことが大切です。

※二分法とは関係ありませんが、講演会の最後の「皆さんで一緒に笑顔になりましょう」というセリフにお気づきになりましたか?
これもいやらし言い方です。決して一緒に儲けましょう、とは言わない。笑顔になりましょうですよ・・・。でもこういうちょっとした言葉の選択も実は重要なんです。これはこれでまた別の機会にご紹介します。

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