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ウーブレックの科学会議を考える

ウーブレックで科学会議の進め方に関する質問をよくいただくので、会議のポイントや議論がスタック(停滞)した時のヒントをシェアします!
これが正解というわけではなく、ジャパンGEMSセンターがよく使う方法というだけですので、これ以外にもご自身のアイディアを膨らませてみてください。


■科学会議の前提

ウーブレックの科学会議は、法則をつくることを目指しますが、参加者全体の合意形成を目指しているわけではありません。

GEMSはグループの力を高めるプログラムではなく、個人の力を高めるためにグループの力を使うという形なので、全体で合意をしないと先に進めないということはないのです。

なので科学会議においても、個人の中に概念を導入するためにグループの力を使っているので、個人の中にウーブレックの法則(概念)ができればOKと考えています。


■会議の導入

誰の意見が正しいを決める会議ではなく、ここにいる全員で法則をつくりあげていくという点を強調します。

そのうえで、最後に多数決をとるのは間違った意見を切り捨てるためではなく、ここにいるメンバーすら賛成できない法則では、ウーブレックを見たことも触ったこともない人には納得してもらえないからだと補足するようにしています。


■「その実験やってないからわかんない」への対応

議論がかみ合わなくなる原因の一つに、違う実験の結果どうしで話し合っているということがあります。例えば、「力を加えると~」の条件として、あるチームは手で握っていて、あるチームはビー玉を落としているとか。

その場合、どちらも力の話をしているのですが、力の加わり方が異なるのでかみ合いません。あるいは、実験をやっていないからといって議論に参加せず、賛成にも手をあげないという場合もあります。

時間に余裕があれば追加実験をしてもよいのですが、そうでないときは以下のような方法を試してみます。

  • 両者の条件の共通点と相違点を整理して、同じ土俵で議論ができそうか確認してみる。

  • 「同じようにその実験をしていない一般市民の目線に立つとしたら、この 
    言葉でわかる?何か追加で知りたい情報はない?」と聞いてみる。

  • この会議が終わった後に追加実験を行ってみることにして、ひとまず議論を先に進める“肯定的な保留”を提案してみる。


■話者どうしのMIがずれている時の対応

議論がかみ合わなくなるほかの要因として、議論をしている人が得意とするMIが違うために、お互いが何にこだわっているかわからないということもあります。

例えば、身体運動知能が高い人が「ウーブレックはぎゅーっと力を加え続けると固体になる」という法則を提案したとします。この人は、「ぎゅーっ」というオノマトペで自分の身体感覚を表現しているので、自分にとってはこのぐらいの強さというイメージがあります。

これに対して、論理数学知能が高いほかの人が「ぎゅーっていうのは何秒ぐらい、どのぐらいの力を加えるか明確にした方がいい」と指摘するかもしれませんし、音楽リズム知能の人は「ぎゅーっよりぎゅぅぅぅじゃない?」と言うかもしれません。言語語学知能の人は「『継続して力を加える』という表現の方がいい」とか言いそうです。

こういう場合は、議論に使っている脳のパーツが違うねということに触れつつ、“分かりやすさ”は人それぞれ違うかもしれないねと伝えるようにしています。

参加者が高学年や大人であれば、「自分の分かりやすさに引き寄せるのではなくて、その意見を出した人の感じ方を尊重したうえでどう表現を変えられるか考えていくのはどう?」と提案することもあります。


■議論が煮詰まってきた時の対応

議論中盤~終盤でな意見があまり出ないようになってきた場合は、近くの人とぺちゃくちゃする時間をとるのがおすすめです。みんなにお菓子を配って、「糖分補給だー!」とかもっともらしいことを言うのも楽しいです。

2~3分程度の短い時間でも、張り詰めていた空気が和らぎますし、状況を打開するアイディアの芽が出てきます。

それでも状況が変わらない場合は、「このあとウーブレック星に行く宇宙船を設計するっていう楽しいパートが待ってるんだけど、このままディスカッションを続けますか?先に進みますか?」と参加者に判断を委ねることもできます。先に進むという場合は、自分たちで出した法則を再度自分たちでブラッシュアップし、それをベースに宇宙船を設計してもらいます。


■多数決の結果、なかなか法則が成立しない時の対応

参加者が疲れを見せ始めたり、賛成に回らない参加者に対して苛立ちを覚え始めたりする様子があった場合は、一度議論を止めて状況を整理する必要があります。

この会議は誰かの“正しさ”を押し付ける議論ではなく、ここにいる全員で協力して法則をつくっていくのだということを確認し、「ほかのチームがどうしてそういう法則を提案したか想像してごらん。よりよいものにするためにどうサポートできそう?」と声をかけてみたりします。

また、少数派が少数派であり続けられる、意思を貫いても排斥されない今の状況はよい会議だと伝えることもあります。SDGsのキーワード「No one left behind.(誰ひとり取り残さない)」と絡めて話をするのもおすすめです。


■おわりに

いろいろな方法を紹介しましたが、あくまで主体は参加者にあるという意識が大切です。
ファシリテーターが自分のもっていきたい方に参加者を誘導したり、時間がないからといって議論を切り上げたりするのではなく、参加者の状態を見ながら、そして当人たちに確認しながら豊かな科学会議を紡いでいきたいですね^^


かも🦆

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