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上賀茂神社 ~みそぎは夏のしるし~

百人一首で詠まれる「みそぎぞ~」の意味も分からず、札を取ることだけに懸命だった小学生の頃。その「みそぎ」の現場が、上賀茂神社境内を流れる「ならの小川」です。
心が落ち着く場所は?と聞かれたら、真っ先にここを挙げます。

ならの小川:禊(みそぎ)の神事が行われる神聖な川

「なら」は奈良とは関係なく、かつて川のほとりにならの木が繁っていたことに由来します。神様へのお供え(神饌)を盛るために、その葉が使われていました。

6月30日 夜8時、篝火がたかれる中、人々の罪や穢れを移した人形ひとがたをこの川に流す神事「夏越大祓なごしのおおはらえ」が行なわれます。
 
神職に尋ねても起源は分かりません。なにせ、上賀茂神社の創建が神武天皇の時代(紀元前7世紀!)なのですから。

風そよぐ ならの小川の夕暮れは 
みそぎぞ夏のしるしなりける

歌が詠まれた旧暦の6月30日は、今の暦で8月初めにあたります。地球温暖化とは無縁だった鎌倉時代初期、すでに秋の気配が漂い、そよそよと風が吹いていたのでしょう。
“秋の気配が漂い始めたが、みそぎの儀式は間違いなく夏のしるしなのだよ” と藤原家隆(藤原定家と並び称された歌人)は詠んだのです。

全国から寄せられた人形を神職が「橋殿」から流す
季節はちょうど半夏生(葉の下半分が白い「半化粧」)

上半期の罪や穢れを落とし、下半期の無病息災を願う「夏越大祓」。
みそぎ」も「はらえ」も意味は同じです。
ただ、「禊」は罪・穢れを清めるために人の肌に「しるしを刻む」という意味合いがあります。覚悟が要りそうですね…。

今年の6月30日は雨の予報だったので、前日の朝に参拝しました。
6月1日から1か月間は茅の輪ちのわが掲げられ、それをくぐることでも罪・穢れの祓いと無病息災が叶うとされています。
 
ちょうど、約1か月経った古い茅の輪を外し、明日の神事のために新しく架け替えている最中でした。

架け替えられたばかりの茅の輪
このタイミングで広がった青空
撮影日:2024.6.29「夏越の大祓」前日

“水無月に 夏越の祓する人は 千歳ちとせの命 延ぶといふなり” と黙唱しながら、「左」「右」「左」と廻ります。
 
夏越の祓はここ上賀茂神社に限らず、全国各地の神社で行われている伝統行事ですね。

半年間の罪科は無かったことにしてもらい、心を軽くして次の半年を健やかに過ごしたい — これは時代を越えて皆に共通する願いだと思います。

『元気をくれる言葉の扉』の見出し画像もならの小川
ほとりの岩に腰かけていると時間を忘れます。 行くだけで、年中みそぎです。

読んでくださり、ありがとうございました。
暑い夏も元気で乗り切られますように。


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