NPO法人Digital Government Labsの『「住民記録システム等標準化対応」研究会 概要編#1』を視聴レポート その1

1. イベントレポートの目的

 住民記録システムなど17業務のシステム標準化がうたわれ、現時点では2025までに実施する、との政府見解が発信されています。自治体の情報職員や市民課職員、そこに関わる民間企業は、「何がどう変わるのか?」「自分たちはどんな準備が必要なのか?」など思われていることが多いのではないでしょうか?
 そこで、NPO法人Digital Government Labsにおいて、2020年11月21日に「住民記録システム等標準化対応」研究会 概要編#1」がYouTubeにて開催されました。イベントを視聴できなかった方への共有、参加された方にとっては振り返りになるように、今更ながらではありますが、イベントレポートとして整理しました。(個人の理解となりますので、ご理解ください。)

2. 第1回目DGLイベント『「住民記録システム等標準化対応」研究会 概要編#1」』で話されたこと。

 「住民記録システム等標準化対応」研究会 概要編#1」は、2部で構成されおり、1部目は、17業務の標準化について上位概念にあたるトータルデザインの方向性について、内閣府の内閣官房政府CIO補佐官などを務められている楠正憲さんの講演と、パネルディスカッション。
 2部目は、 令和2年9月に公開された「住民記録システムの標準化」1.0版についてDGL会員からの解説と、パネルディスカッション。現時点でどんな準備ができるのか?本当に2025年までに実現できるの?といったことが話されました。
※1部2部のそれぞれの内容は、後ほど2回に分けてレポートします。

3. イベントに参加して、認識が変わったこと。

(1)個別システムの改修ではなく、連携が想定されていること。
 「標準化の対象は17業務」とよく聞くものの、業務項目の羅列に過ぎず、私自身はあまり実感を持っていませんでした。
 イベントでは、パネラーの方々が本業の観点から、「業務カウントとしては17だが、システム観点では17システムではなかったり、システム提供ベンダーも統一だったり、異なっていたり、、、」という指摘をしており、改めて17業務を羅列してみると、範囲が広いなぁとやっと実感を持てました。
 個々の地方自治体での業務区分の違いや、システム提供ベンダーの違いを考慮してシステム間でデータ連携をしたり、外部との団体間連携をしたり、連携がスムーズにいくように外字を整理したり。
 単なる個別システムの改修ではなく、システム改修の先には、庁内連携や団体間連携が目指されていることを理解しました。
【17業務】
  ① 住民基本台帳
  ② 選挙人名簿管理
  ③ 固定資産税
  ④ 個人住民税
  ⑤ 法人住民税
  ⑥ 軽自動車税
  ⑦ 国民健康保険
  ⑧ 国民年金
  ⑨ 障碍者福祉
  ⑩ 後期高齢者医療
  ⑪ 介護保険
  ⑫ 児童手当
  ⑬ 生活保護
  ⑭ 健康管理
  ⑮ 就学
  ⑯ 自動扶養手当
  ⑰ 子ども・子育て支援

(2)法改正動向について情報収集で満足するのではなく、自分たちの業務環境を整理し始めておいた方が良い
 また、実感を持てなかった理由の1つとして、自治体への具体的な影響が想像できていなかったことがあります。「システム提供ベンダーが標準化に向けてシステムを改修し、それを自治体側に適用することから、自治体自体へはそれほど大きな影響はない?」「自治体側は、法改正の動向や情報をキャッチして、適切に予算化していれば、あとは大丈夫なのでは?」と漠然と思っていたためです。
 今回のイベントで分かったこととしては
  ・システム改修で事足りず、システム標準化により業務が共通化され
   ることから、日々の運用まで影響を受けること。
  ・そのため、現在の業務運用の棚卸など、事前準備が必要であること。
  ・運用変更の範囲によっては、機構改革(組織変更)すら必要になる
   こと。
 などが理解できました。

(3)標準仕様書を乗り越えた先には、皆が便利になる世の中を創りやすくなる。
 上記は分かってきたけれども、正直まだまだ分からないことが多いといえます。実際、住記システムの標準仕様書についても1.0版は出ているものの、今後変動があるとの情報も入っており、今後も変動することが想定されます。
 システム間連携の構築や、現在業務運用から標準化されたシステムに則った業務運用が求められます。これから5年間は、通常業務に加えて準備対応などの負担が増加すると思われます。
 ただし、17業務を統一化を乗り越えた先には、例えば、民間サービスとの連携ができたり、給付金の振り込みがスピーディにできたりするなど、地方自治体でのワンストップサービスの実現など、目指されています。具体的なサービスはこれから検討されるのでしょうが、皆が便利になる世の中を、国の方針を理解しながら、我々の創造できるといいですね。(国からのTOPダウンを批評するだけではなく。) 

4.まとめ

 非常に印象に残ったのは、楠さん講演での「デジタル化することで、日本が良くなったと有権者たちに思ってもらうこと」。理想論ではなく、これからの準備においても意識して活動したい考え方だなぁと感じました。

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