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ノーベル賞(自然科学系)解説

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#化学

2022年ノーベル化学賞 ~クリックケミストリーの開発~

2022年のノーベル化学賞は「クリックケミストリーの開発」に対して贈られました。 受賞したのはスタンフォード大学のキャロライン・ベルトッツィ氏、コペンハーゲン大のモーテン・メルダル氏、米スクリプス研究所のバリー・シャープレス氏です。 バリー・シャープレス氏は2001年の「不斉酸化触媒の開発」に続く、2度目のノーベル化学賞受賞です。 ノーベル化学賞を2度受賞したのは史上二人目となります。 クリックケミストリーとは、簡単かつ安定な化学反応で複雑な分子を作る手法のことです。

¥400

化学ニュースピックアップ vol.14 ~2021年ノーベル化学賞の深堀~

今回は、先日ご紹介したノーベル化学賞をより詳しく解説します。 多少、誤字脱字やおかしな表現がありましたが、後で修正しています(^^;) 化学式を省略した内容にしたので、今回は化学式も交えて解説します。 加えて、関連する2001年のノーベル化学賞についても触れます。 不斉合成 従来は金属と酵素だけだった化学反応の触媒に、新たに有機触媒を加えたのが今回の受賞者の功績です。 シンプルかつ安価、重金属よりも環境に悪影響を与えない、しかも反応効率に優れているという夢のような触媒で

¥200

2021年ノーベル化学賞 ~有機触媒反応の開発~

2021年のノーベル化学賞は「分子を作るための新しいツール=有機触媒反応の開発」に贈られました。 受賞したのはドイツのベンジャミン・リスト氏(ケルン大学名誉教授、北海道大学 化学反応創成研究拠点  主任研究者)とアメリカのデイヴィッド・マクミラン氏(プリンストン大学教授)です。 向かって左から、ベンジャミン・リスト氏、デイヴィッド・マクミラン氏 (ノーベル賞公式サイトより) 今回は化学の王様「有機合成化学」分野からの受賞です。 有機合成化学は久しぶりで、2010年のクロス

人名反応とクロスカップリング

化学反応には人名がついているものが数多くあります。 日本の高校化学までで登場するのはごく僅かですが、大学以降ではこれでもかと言うほど沢山の人名反応が出てきます。 特に有機合成化学を仕事にしている人は、膨大な数の人名反応を扱うことが多いと思います。 僕も一時期、有機合成化学を仕事でやっていましたが、あまりにも多くの反応を扱うため、新たに有機合成反応や人名反応の本(分厚いです...)を購入して勉強しました。有機合成は専門外でしたが、そんなことは言い訳になりませんw 反応の開発

タンパク質分析の革命 ~不可能を可能にした分析技術の発明と開発~

2002年のノーベル化学賞は「生体高分子の分析手法と構造解析の開発」に贈られました。 受賞したのは日本の田中耕一氏、アメリカのジョン・ベネット・フェン 博士、スイスのクルト・ビュートリッヒ博士の3名でした。 分野は分析化学ですね。 そして、関連の強い1991年のノーベル化学賞も合わせて解説します(こちらは後半でご紹介します)。 田中耕一(Wikipedia)、現在は株式会社島津製作所シニアフェロー、田中耕一記念質量分析研究所所長、田中最先端研究所所長などを務めています。

フラーレンとサッカーボール ~炭素ボールの予測と発見~

その構造を見ただけで興味が出てくる不思議な物質。 1996年のノーベル化学賞は「フラーレンの発見」に贈られました。 受賞したのはアメリカとイギリスの3人の化学・物理学者。 リチャード・スモーレーとハロルド・クロトー、ロバート・カールの3氏です。 ハロルド・クロトー(Wikipedia) ロバート・カール(Wikipedia) リチャード・スモーレー(Wikipedia) 炭素にはグラファイトとダイヤモンドという同素体が存在します。 同素体は、同じ元素から構成される物質

2019年 ノーベル化学賞

今年のノーベル化学賞は「リチウムイオン電池の開発」 リチウムイオン電池の正極材料を開発したジョン・グッドイナフ氏。 電極材料に初めてリチウムを用い、リチウムイオン電池の仕組みを確立したスタンリー・ウィッティンガム氏。 その2氏の研究成果を活用・発展させ、市販のリチウムイオン電池を開発した吉野 彰氏。 以上の3氏に贈られました。 向かって左からジョン・グッドイナフ氏、スタンリー・ウィッティンガム氏、吉野彰氏(公式HPより引用 https://www.nobelprize.or

高分子化学の父 シュタウディンガー

1953年のノーベル化学賞は、ドイツの化学者 ヘルマン・シュタウディンガーに贈られました。 受賞対象となったテーマは「鎖状高分子化合物の研究 」です。 「高分子の発見」と言い換えても間違いではないでしょう。 分子が数千~数百万繋がった高分子は、プラスチック(樹脂)製品やゼリーなどのゲル、天然ゴムや植物・動物の細胞など、あらゆるところに存在し、私たちの生活を支えています。 20世紀初頭、分子の沢山つながった高分子という考え方は存在しませんでした。 その頃は、ようやく分子の考え