あの小説を贈りたい。

燃え殻さんが、ラジオ番組の企画のために
「もしあなたが好きな人にプレゼントするならどんな一冊?
それを選んだ理由、好きな一節、聞いてみたい。」
という呼びかけではじまった、
「#あの小説」 というツイッターのハッシュタグ。

1週間ぐらい、あれでもない、これでもないと考えてみて、
昨日、色川武大の一冊を選んで、ツイッターに投稿した。
誰も待っていない?架空のプレゼントを考えるのは、
なんとも楽しく、平和でエキサイティングな時間だった。

まず、「好きな人にプレゼントする小説」と考えたときに、
「相手に寄せるか、自分に寄せるか」を考えた。
「僕の好きな人は猫が好きだから、猫が出てくる小説だな!」
「やっぱり個性を伝えるためにも、素直にオススメを出さなきゃかな‥」
みたいな具合に。

そんなことをだらだら考えて、行き着いたひとつのゴールは
「いろいろ考えた末、頭に浮かんで、こびりついた一節」
こそが、贈りたいものなのかもしれない
ということだった。
相手に寄せたら、きっと不器用な僕はすぐにバレるだろう、
という予感もあった。

考え抜いた末に、ぽんっと浮かんで、頭にこびりついて離れない一節。
どうしようもなく自分を捉えていて、まるで自分を表すかのような一節。
(パッとひらめく、と、絞り出す、は似ているのかもしれない。)

今回、選んだ小説は、
もう読んだのは10年以上前だけど、
それでも、ずっと僕の中に沈殿していたような気がする。
「1週間考えた」と上に書いたけれど、
実は、その小説、その一節は最初から決まっていて、
大半は確信を深めるための時間だった。
どんな道を辿っても、その一節に辿り着いたんだろうなと思う。

なんというか、自分が普段届かないような、
自分自身の深いところに届いたような気がして、ちょっと嬉しかった。
小説を読むっていうのは、
自分の中に見えない部屋を作り出すような行為なのかもしれないな、
とも、思う。

今回は、企画に乗っかって、ツイートするのがゴールだったけど、
「あなたを好きな僕は、こんな小説の、こんな一節も好きなんです」
なんて、真っ直ぐすぎて恥ずかしいけど、
いつか、そんなプレゼントをしてみるのも、
なかなか悪くないかもしれないな。

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