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なぜ、GHやDynamo講習をするんですか?

こんにちは、今日は企業向け講習をいくつか担当させていただいてる中、なぜワークショップ開催を仕事としているのかを書いてみたいと思います。きっかけは講習依頼が来たというところではあるのですが、講習を前向きに開催している理由は、本を書いた理由と同じでコンピュテーショナルな文化が建築・建設界隈でより広まってほしいと考えているからです。そして、それを担う人たちが組織内で幸せに活躍してほしいと心から願っています。誰よりもできるから講師をしているという考えは一切なく、教える経験値は界隈では高い方だという気持ちはありますが、受講生がそれぞれの方法でツール作りで楽しんでもらいたいと思っています。

GELを始めてから短期間、中長期など様々な形でワークショップを開催してきました。企業向けで講習する際の基本的なコンセプトは数段階に分かれます。

  1. プログラミングが初めて:プログラミング思考を身につける

  2. プログラミング経験者:技術力向上に加えて、自分の能力やマインドセットを周りに理解してもらう活動の一環としての講習

8回や12回コースの場合、2週間に1度くらいのペースで講義を行います。集団(10人程度の場合が多い)で講習を受けて、宿題(小さな課題)を解いていくことで進みます。その課題で何を作るか自体も自分で考えて作ってもらいます。

知識を入れることも重要ですが、基礎知識を元に自分でユースケースを考える思考力というところが、建築・建設系で一番重要なところでもあります。
大きくは3つあると思います。

  1. ロジックを実装する力

  2. 実現したいことをロジックに落とし込む力

  3. 実現したいことを見つける力

どれも数日で身に付く能力ではありません。しかし、元々講習を受けたいと受講者たちから直接の依頼が来ている場合は、3の実現したいことを見つける力が高いことが多いです。その場合は、講習によってステップごとに分けて実現したいロジックを考える力を強化すると、様々なことができるようになります。さらに実現したいことやできることが具体化できるようになり、さらにあれもできそう、これもできそうと、いろいろなニーズが見つかります。

ChatGPTや体系的な本も世の中にある中で、集団で講習を受けることの意味は、モチベーションをたもちやすいところにあります。毎週、アウトプットを出し、他の人のアウトプットも見るので、同じ講習を受けて差が出るというのがリアルです。講習がわかりにくいからできないのだ、難しすぎるから、忙しすぎるから、という言い訳は同じ会社に属してる仲間なので出すことがなくなります。例えば、GELインターン生(モチベーションは元々高いし能力も高い)に、同じ課題を課したこともありますが、アウトプットが出なかったことがあります。それは個人で課題をやってもらったので周りがおらず、私とインターン生の対峙になると、経験者の私が出す課題が難しすぎるから、内容がわかりにくい、という感覚の方が強くなり、諦めてしまうというところが原因だったと思います。課題の内容もそうですが、学ぶ環境というのは大きく左右します。

組織でコンピュテーショナルを推進する際に、重要なのは本人もそうですが環境も大事です。講習を行うことで、集団で学び、相対的な自分の得意な点や不得意な点を見つめることができます。
上記で挙げた3つの能力を1人の人が持つ必要もありません。組織内では、その役割を分担することもできます。講習を集団で受けていると仲間意識というか、共に苦労をした仲間という感覚で、相談することが容易になります。

正直、10人を教えて10人とも続けてツールを使っていることは少ないと思います。ただ、課題に対して高いアプトプットを出す人たちのマインドセットは同じで、学ぶ意欲と継続力を持っている方々ばかりなので、その方々に対する敬意は生まれていると思います。最初はほとんどの方がはじめてなので差はほとんどありません。その中で、少しずつ差がつくのは、実直に課題に向き合う時間を取ったかどうかどうかが大きい理由です。なぜか、ツールを作る人たちは最初からできる何だかサラリとしてる奴と思われていますが、他の職種と同じように地道な積み重ねでできるようになっているんだというところを実体験として共有できているのは、ツール作りを仕事にしている人たちと仕事をする上でとても役立つ経験だと思います。(実際にサラリとできてしまう人もいるかもしれないですが、だとしたら職種を変えたほうが良さそうとも思います。)

また、私もツール作りを仕事でも受けていて、内部でも作れる状態を作ることは仕事を失うことに繋がるのでないかとご心配の声も頂きます。実感としては、その逆です。このように誰もがコンピュテーショナルな思考になった時に、まだまだ実現されていないけど実現されたら良さそうなアイディアが無限に出てくると思います。それを担う人は、内部だけでも足りないですが、内部でもやらないとそもそもニーズも出ないです。実装とアイディア出しを分けても仕事はできます。そのアイディアを想像するにも前提知識がないと、どんなことができそうなのかを想像することすら難しいです。簡単なツールを切り売りしている場合はまた別の話だと思いますが、今のところはむしろ技術ベースで話ができる内容の精度が上がるので、より楽しい仕事ができるようになっているという実感があります。

そして、建築・建設のコンピュテーショナルをやろうよ!とこの仕事の楽しさを伝えるとしたら、多様性です。小さなツールや1つのプロジェクトに使えるローカルなツールと、色々なプロジェクトを跨いで使えるセミローカルなツール、組織を跨いで使えるツールを作るグローバルなツールというようにユーザー層によって色々なツールが存在できることです。またそのツールの寿命やローカルかグローバルかに関わらず、ツールはそれぞれ重要だということです。また、ツールの難易度が必ずしも役にたつことの指標にもならないので、役立つツールを作ることは、ITサービスと違い、多くの人に使われることが正義というわけではなく、数人にしか使われないものでもプロジェクトに非常に役立つツールで何回も大事な局面で使われたという事例も起こりうるわけです。サービス化できないツールは、作っても仕方ないという考え方はなく、どの技術レベルの人も自分向けツールから業務に生かして評価を得ることができます。建築設計から入った人は建築設計の、構造から入った人は構造系、コンピュテーショナル系から入った人はコンピュテーショナル系のツール、他の業界から来た人はその業界知識を活かしたツール、といったように、バックグラウンドが多様であること、キャリアパスがないとも言えますが、自分のパスで居場所を作れることにあると思います。
BIMマネージャの職能は一級建築士がないと一人前とは言えないなど国内では今後その傾向がさらに強まるあるかもしれませんが、BIMのコンピュテーショナルは、資格や前の職業に関係なく、ツールを作ることができます。

こういう自由で多様性があるところが一番の魅力だと思うので、これからも広める活動を頑張りたいと思います。
講習等に関しても、お気軽にお問い合わせください。

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