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オズワルド畠中×素敵じゃないか柏木×ナミダバシ太朗が贈る“泣ける歌”が公開「今の世の中を生きにくい方が…」

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7月9日深夜。オズワルド・畠中悠のTwitterアカウントからオリジナルソング『コンビニエンスマン』を歌う動画がアップされた。

彼とルームシェアをしているナミダバシ・太朗がギターを弾き、素敵じゃないか・柏木成彦が編詞(詞を伝えやすくアレンジ)を担当したという一曲は、部屋干ししている洗濯物をバックに生活感あふれる自宅で撮影。
公開されるやいなや、彼らの生み出した切ない歌詞とメロディーがフォロワーの胸を打ち、芸人仲間からも絶賛の声が相次いだ。その後も3人は『言わせないでよ』、『たった一度の夏』を発表。そのたびに話題となった。

今回、月刊芸人のために楽曲制作を依頼。すると、彼らから『全部自分で自分は誰かで』という名曲が贈られてきた。その完成度の高さから、編集部でMVを制作する話が持ち上がり、渋谷で撮影を敢行。このたび公開に至った。どんな想いで同曲を生み出したのか、そして彼らの活動や、MV撮影の裏話を聞いた。


コロナ禍から始まった楽曲制作

ーーこの3人で楽曲を作り始めたきっかけを教えてください。

畠中:最初は僕と柏木ともう芸人を辞めちゃったシミズってヤツと3人で住んでいたんですけど、自粛期間が始まったとき、すごく暇で。“ギターを買ってみんなで覚えよう”って話になって。

柏木:いや、なっていないですよ。勝手に(畠中が)買ってきたんですよ。家に帰ったらギターがありました。

畠中:ギターを弾ける人への憧れもありましたし、吉田拓郎、中島みゆき、さだまさし……そういう人が好きなんで、“弾き語りができたらな”って思って、最初は柏木に教えてもらっていました。

柏木:メジャーコードを押さえるくらいならできる程度ですけど。

畠中:一番簡単な『スタンド・バイ・ミー』を弾いていたところ、家にやって来たのが太朗。

太朗:……ほんまのミュージシャンのテンションで喋るなー。

柏木:5月のタイミングでシミズが家を出て行くことになったんですよ。もう1人同居人を探すために、オーディションをしたんですけど、その候補者の一人だった太朗が『僕、ギター弾けます』って。それ一択で“一緒に住もう”という話になりました。

ーー現在は、表立って活動されていませんが、例えば「ユニット名を作ろう」など、本格的に動き出す話にはならなかったんですか?

柏木:(そもそも)これ、活動を始めているんですか(笑)?

畠中:Twitterで曲をあげる程度ですからね。

ーー活動というよりは趣味に近い?

畠中:趣味とはいえ、その歌が広がって、誰かの心を動かせたらいいなという気持ちはあります。

太朗:一言一句違わず、そうですね。

畠中:(芸人モードとアーティストモード)どっちでいく(笑)?

太朗:どっちでいくのも分らないくらいの感じなんですよ。

畠中:“インタビューがある”とは聞いたんですけど、どういうスタンスでいけばいいのか分かっていない。だからこうなってしまったという(笑)。

太朗:とりあえず(柏木は)格好だけ取り繕っていますけど。

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早くも先輩・後輩3人が揉め始めて…

ーー(笑)。作詞・作曲などの担当は決まっているんですか?

畠中:時々によって違います。基本、僕が作詞をするんですけど、その詞を“編詞”という形で、国語の教員免許を持っている柏木に(お願いする)。

柏木:もう(畠中の詞が)めちゃくちゃなんですよ。「言いたいのがここやのに、これ言うたら伝わらんようになりますよ」とか、そういうのがいっぱいあって。

太朗:そういうのは、トムソンガゼル柏木が得意分野なので。


畠中:僕は「これでも伝わるんじゃないか」って言うんですけど、トムソンガゼル柏木は言葉を大事にする人なんで添削してもらって。

ーーん? なんですか? トムソンガゼル?

柏木:シルバーボックス畠中の考えていることや伝えたいことは素晴らしいと思っているんで、それを僕がスピーカーとして、分かりやすく伝えたらなって思っています。

畠中:曲もそれぞれ違うんですけど、基本は、僕が口ずさんだメロディーをミーアキャット太朗がコード化していく感じですね。

ーーシルバーボックス? ミーアキャット(笑)?

太朗:そういう名前でやらせてもらっています(笑)。

畠中:「だったらこっちのメロディーがいいんじゃないか」と編曲をやってもらって。

太朗:畠中さんが口ずさんだメロディーを僕が拾って、コード化していく感じですね。

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ーーどの曲も、どこかもの悲しいイメージがあります。

畠中:やっぱり、中島みゆきや吉田拓郎に影響を受けているんだと思います。

柏木:曲が全部ウジウジしているんですよ。自粛期間中は僕もギター練習ノリノリやったんですけど、離れたのは、(畠中が)ウジウジした曲を毎朝弾くからなんです。寝起きで失恋の曲をポロンポロン弾くから、こっちが参りそうになって(笑)。

畠中:太朗は本当にロックが好きで、僕はフォーク好きなんで、僕が口ずさむメロディーに「ダサイ」って言ってくるんですよ。3日くらいで3曲を作ったんですけど、そこからもう1曲作ろうってなったときに、方向性が違いすぎて、早い段階で作るのやめることになりました(笑)。このオファー(月刊芸人のオファー)を機に、もう1回作ろうと。

太朗:そういうのもあって、今回明るい曲調になっていますよね。

畠中:太朗が「こういうのどうですか?」って提案してくるものに僕は逆らえないんで(笑)。

太朗:僕の機嫌を損ねたら曲はできないんでね。

畠中:結果的にいい曲ができました。

柏木:『コンビニエンスマン』っていうデビュー曲があるんですけど、それに次ぐ名曲になりました。歌詞もまったくウソがないですもんね。畠中が普段から言っていることやし、それが響く……最高の曲になりました。

太朗:確かに考えていることは素晴らしいと思います。

柏木:お人好し。スーパー善人ですからね。

太朗:音楽に関しては少し足りていない気がします。畠中さんのギターも上手くなってもらわないと、これから厳しくなっていくというか。

畠中:太朗は厳しいんですよ。

柏木:もう早めに解散しよ?

畠中:せっかくこんな機会いただいたんだから!

柏木:大ごとになる前に止めるべきです!

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“簡単なことじゃないもの”を歌に乗せて伝える

ーー先ほどから話題となっている今回の楽曲『全部自分で自分は誰かで』ですが、書くときに何かテーマを設けたんですか?

『全部自分で自分は誰かで』
作詞:畠中悠 作曲:太朗 編詞:柏木成彦

真夜中に大きなエンジン音を響かせて走るあいつは
メットの下で笑っているのか泣いているのか

最終電車大きなイビキをかくサラリーマンはどんな夢を見ているのか僕には分からない

アスファルトの上仰向けのカナブンは 何を思って死んだのかな
日陰に落ちたタンポポの種は運の悪さを恨むだろうか

全部自分で自分は誰かで
一つの生き物だとしたならば
擦りむいた傷もきっと誰かの手で治るのだろう
そうやって生きていけたらいいのにな

タイトル

畠中:柏木と揉めたんですよ。俺が「みんながこんなこと(歌詞のようなこと)を言っていけば、戦争とかなくなるんじゃないか」って言ったら「そんなに簡単なことじゃない」「何人もそういうことを言っているやつはいる」って。それは当たり前のことで、誰しもが思っていなければいけないことだし、人間みんな思ってきた。でも上手くいかなかった。

だから「畠中さんが思っていようが何も変わらないです」って夜中に3、4時間話して。もちろんその通りで、これをみんなに広めようなんておこがましいので、せめて自分の心だけは思っておこうと。

そしたら生きやすくなるのかなって。

顔も知らない人から悪口を言われたり、ときには自分も傷つけたりすることもあるんですけど、ムカついて“こいつを攻撃したい”と思ったときに、その考え(歌のような考え)を持っておけば“やめておこう”ってなりますし、何かされたとしても向こうを理解しようとして収まるんじゃないかなって。

ーー深いですね……。メロディーはどう決められたんですか?

太朗:3パターンの曲調を提供したんですけど、どれも違うと。畠中さんも頑固で「これじゃない」「これでもない」と言われ“弾けもしないのに贅沢なことをよう言うな”と思いつつ、ようやく4つ目に弾いた僕のメロディーラインが2人には刺さったっていう。

柏木:あれは盛り上がりましたね。

ーー柏木さんは編詞する際に気をつけたことはありますか?

柏木:こう直したらいいっていうのはすでにあったんですけど、やっぱり、畠中さんが頑固やから「完成度じゃなくてフィーリングで言いたいよ」って。

畠中:柏木は文として成立しているものを作りたいと。そういう意味では僕と太朗は、こっちが思っていることを投げかけて、伝わる人には伝わるという歌詞が好き。メロディーに関しては俺と柏木が合うっていう。

柏木:だから(畠中が)一番の癌なんですよ。誰とでも揉めるから。

畠中:この3人で音楽をやるのは適していないかもしれない(笑)。

柏木:解散です!

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初めてのMV撮影で◯◯の気持ちが分かった

ーー今回公開されたMVは、プロチームが揃った本格的な撮影だったと思います。参加してみていかがでしたか?

畠中:iPhoneとかで撮るのかと思っていたら、ちゃんとした本格カメラで、撮影する場所も考えてくださって、まさかあんなふうにやってくれると思いませんでした。途中で“俺は何をやっているんだ?”って(笑)。よく渋谷で見る風景で、交差点の信号が変わる前にカメラを構えて真ん中に立つ、みたいなこともやったんですけど、人生の中であれをやる日が来るとは……。道行く人もプロのミュージシャンが撮影していると思ったでしょうね。

太朗:思うか!

畠中:(笑)。見られている時は僕もプロの歌い手として、いや、歌い人としての気持ちでやれました。

太朗:歌い人か歌い手かどっちでいくねん。

柏木:僕が一番出番が少なくて、2人が撮影しているのを見ている時間が一番多かったんですけど、オカンが写真撮るときに、“よそ行きの顔を作っているのを見るのが恥ずかしい”みたいな感覚がずっとありました。“何をしとんねん!”と。“何をお前はすました顔でギター弾いとんねん”みたいな。

畠中:不思議とオカン側はそういう息子を見ても全く何も思わないですね。オカンの気持ちが分かりました。

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ーー恥ずかしい気持ちがありながらも、柏木さんも参加する形に。どんなことを思われましたか?

柏木:オカンの気持ちが分かりました(笑)。

太朗:畠中さんおっしゃったように、スクランブル交差点で撮影している方って、たまにいらっしゃるじゃないですか。周りに歩いている人も“何かやっているな”って見ますし、僕も見ますけど、それ史上、僕らが一番見られていなかったと思います。よく言えば渋谷の街に溶け込んでいた。悪く言えば、“売れていないミュージシャンなんやろな”って思われてたと思います。僕自身は、音楽大好きなんで、MVでギター弾いて録るっていうのが楽しくて、嬉しくて、途中、カメラマンさんに「こういう演出どうですか?」って言ったんですけど、採用されなかったですね。

柏木:プロの監督、プロのカメラマンがおって、どういう段取りで決まっている。そこで「僕の案どうですか?」って……イタイんじゃ! 黙っとけ!

ーー(笑)。完成品を観ての感想を教えてください。

畠中:東京の街並みがあって、交差点の中にギターを持っている俺が出てくるっていうところは感動しましたね。“こんな映像になるんだ!”って。ただ、きれいな映像から僕が出てきたので、“このMVの主人公コイツかぁ……”って残念でした(笑)。柏木が途中から入ってきて、ずっと真ん中にいるのに歌いもしないっていうのが、MVのカッコよさからかけ離れているボケな気がして、観る側に伝わるかどうか(笑)。

柏木:見事すぎて笑っちゃうっていうか。思ったより僕がカッコ良かったっていうのと、太朗はMV2回目の顔していましたね。

太朗:自分で観た限りだと、ほぼ(自分の雰囲気が)やくみつるやん! と思いました。もし、2、3作目撮るときは、もう少しいい格好しようと思いました。

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最後は内戦勃発で解散危機まで発展!?

ーー(笑)。 今回の楽曲について、どんな方に聴いてほしいですか?

畠中:今の世の中が“生きにくい”とか“息苦しい”とか思っている方が、“こういうふうに考えればいいんだ”って思えば、少しは楽になるんじゃないかなって思います。あくまで僕がそう思っているだけですけど。

柏木:歌詞は本当に素晴らしいと思います。僕も疲れている人に聴いてもらいたいです。

太朗:僕は音楽を聴くうえで、詞はどうでもいいと思っています。メロディー重視なので。

畠中&柏木:(笑)。

太朗:音を楽しむと書いて音楽なのだから、正直、音だけ楽しめればいいと思っていますし、歌詞に関しては何も思わないです。ただ、畠中さんという人間は優しい方なので、畠中さんの考えが歌に乗って、いろんな人に届くということは、一緒に住んでいる身としては嬉しいです。“畠中さんってこんなに優しい人なんだぞ”っていうのは知っていただきたいですね。

ーー話を聞いていると、畠中さんは音楽活動に前向きですが、残りのお二人はどういうお気持ちなんですか?

柏木:一人でやってくれ! もう二度と取材がないように、ライブにも呼ばれないように……。家で発信するくらいならいいです。

太朗:正直、畠中さんとボーカルを交代したいですね。

畠中:じつは3人の中で太朗が一番上手で、二番目に上手いのが柏木なんですよ。

太朗:本当は僕と柏木さんのデュオで、畠中さんは歌詞だけ書いてくれれば、一番見栄えもいい。

柏木:太朗が一番とか、僕が二番とかじゃなくて、群抜いて畠中さんが一番下手なんです。

畠中:3位ですけど。

太朗:8馬身差のね?

柏木:表彰台乗っているみたいに言うな。太朗がボーカルやるんやったら僕も頑張ってやりますよ。

畠中:でも俺の歌詞には合わないかな……。

柏木:やかましいわ!

3人が共同制作した『全部自分で自分は誰かで』は絶賛公開中。方向性がバラバラなのに、なぜか胸に刺さるこの一曲をぜひ、あなたにも聴いてほしい。



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ライター・撮影/浜瀬将樹
Director: Akihiko Matsuzawa (CAMSIDE)
Camera: Yugo Tamagaki

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