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〜The origin of Laugh〜 feat.ロングコートダディ

笑いを追求する芸人さんの起源て何だろう。ふとそんなことを思い立って聞いてみました。
今回は笑いに独特のゆるさを漂わせるロングコートダディの笑いの起源。

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それぞれのお笑いの原点、リスペクトしたもの

兎:小学校6年生の時にそれまで仲のいいヤツらが全員一緒のクラスになったんですよ。もう集大成のような感じで、みんなでなんちゅうクラスなんだよって言ってたくらいでした。だから一年中ゲラゲラ笑ってました。岡山というところはツッコミとかボケの概念がそもそもないんですけど、今思えば、普段、楽屋でやってるようなノリを既にしてましたね。

で、中学になったらそれぞれ別のクラスになりましたけど、僕も含めて自ずとお笑い担当みたいになってった感じでした。その頃からですねおぼろげにお笑いの世界って面白いんじゃないかなって思ったのは。

岡山って関西に近いですけど、全然そっち方面のテレビ番組とかは放送してなくて基本、東京からのお笑い番組くらいしかなくて。だから影響受けたのはウッチャンナンチャンさんやネプチューンさんたちが出てた『笑う犬』シリーズ、それと深夜番組で見てたおぎやはぎさん、さまぁ〜ずさんはものすごく好きでしたね。それとコント番組の『リチャードホール』を見てからさらにお笑いの世界を意識するようになりました。

逆にダウンタウンさんとかを始めとした心斎橋筋2丁目劇場関係やbaseよしもとの方々の番組とかって、岡山ではオンエアが全くなかったのですっぽり抜けてるんですよ。

堂前:僕は福井県出身ですけど吉本新喜劇は放送してました。だから原点は吉本新喜劇やったと思います。でも意識して見てたというよりは、放送されているから見てたって感じです。日常の中の笑いみたいな。でも記憶にあるのは石田靖さんがやってらっしゃった「1、2、駐在さんダァ~!!」ってコメディ番組で、吉本新喜劇とはまた違うテイストで新鮮でした。

ネタを意識して見るようになったのは、『爆笑オンエアバトル』です。そこでラーメンズさん、バナナマンさん、おぎやはぎさんとか好きになって、皆さんのビデオやDVDを借りて楽しんだり、一時、深夜でコント番組が多い時期があって、そこで『はねるのトびら』は、真剣に見てました。

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NSCへ

兎:高校へ進学したものの、勉強を全然しなくなってしまいまして、欠席も多くなって……サボっては釣りとかしてたんですよ(笑)。で、出席日数もギリギリになって、一応最終的に卒業はできたんですけど、進学とかどうする?と。

そんな時に友だちが「大阪の美容師専門学校に行く」って言ったので、それで「じゃあ俺もついて行くわ」って言って、一緒に専門学校に入学したんですよ。でも、6月くらいに大事なハサミを盗まれまして、辞めざる得なくなりまして……。

で、あとはフリーターをしてました。でもさすがにそういう生活しているのを見かねた姉が「あんたずっとプラプラしてるけど、これからどうすんの? 中学とか高校の時とかお笑い行きたい言ってたやん、このままやることないんやったら行ってみる?」て心配して言ってきたんですね。で、「行くんやったら提出してみたら?」て感じでNSCの願書出されて。あと、岡山んときの同級生が東京で1人、お笑いを目指してたんですよ。そいつからもちょっと話を聞いて、それでやってみようと。

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堂前:いわゆる進学校で、自分的には勉強も好きだったんで、このまま大学かなぁって感じだったんですけど、行きたい大学がなかなか決まらず、それにその先で、自分が何をやりたいかも決められなくてそうこうしているうちに12月が来て、いよいよ進路を決めないとやばいぞっていう時に、ある本をバーって見てたら、NSCの広告が出てきまして、そこに書かれていたことを読んでるうちに一番自分にしっくり来たんですね。それで入学しました。
入ってみての思い出ってないんですよね。というか記憶がない(笑)。実はNSCに入ってからあまりにもバタバタし過ぎて。まず一人暮らしも初めてだし、地元では経験あるものの、知らない土地でのアルバイトも初めてだったし、何よりパチンコも覚えてしまいまして、大忙しで。

兎:パチンコは知らんがな(笑)。でも確かに18歳の大阪って都会に出てきてっていうのはいちいち日常を味わうなんて余裕ないからできないですもん。NSCも入るまでは普通にこれまでの学校みたいな感じだと思ってました。でもそれが、アドバイスはありますけど、あくまでも自主性を求められている。自分が望むことがないやつは脱落して行く、必要なくなっていくみたいな、もう日々、戦いが始まる感覚でしたから。

堂前:確かにそんな感じで新鮮で、大変ではありましたけど、とにかくパチンコも覚えてしまったんでそっちが(笑)。

兎:そう言えば、最初に住んだ所が松屋町筋と千日前通りの交差する場所にあるマンションだったんですけど、NSCに通うのに、家からすぐの地下鉄日本橋駅から電車に乗って次の駅のなんばまで行ってたんですね。

で、半年後に自転車を買いまして、一度、自転車で難波のNSCまで行ってみようと、その日はいつもより1時間早く家を出て、余裕を持って出たんです。そしたら2分くらいでいつもの見慣れた景色が広がって……。あれ、どういうこと? タイムワープでもしたんかなって。もうなんかびっくりしちゃって半信半疑でNSCまで行ったら間違いなくて、これはおかしいぞと。

調べたらめっちゃ近くて、岡山の一駅と大阪市内の一駅の距離の感覚が違いすぎるなと。半年間の交通費……月謝払いましたね。しかも地下街のなんばウォークを歩いていく方法あるし。それからしばらく地下歩いてたけど、途中でこれ地上も歩いたらいいんじゃねって知りました(笑)。もうなんば駅からダンジョン多くて抜けられないんですよ。知ってる道しか行けなくて。この時ばかりは、あぁ田舎もんだなぁって認識しました。

堂前:僕は一応、保育園からの仲の同級生もNSCに行くというので一緒に大阪に来たんですよ。で、その子の親戚が八尾でマンションの大家さんをやって他ので、そこに住んでました。住んでからしばらくして気づいたんですが、難波まで意外と遠いんだと(笑)。

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出会いは?

兎:NSCで行われる相方探しの会には行ってないんですよ。堂前も行ってないです。

堂前:はい。僕は一緒に来た子と、こちらは組んだ覚えはないんですが組んだことになってて(笑)。ゼットンズってコンビで4ヶ月くらいやってました。そのあとしばらく1人でやって、新しく今度は大三元てトリオでやって、その頃からですね、兎と遊ぶようになったのは。

兎:僕はクラスで話しかけてきてくれた奴がいて、その子と組みました。でも僕からしたらなんかやる気ないように感じられて、今考えるとゆっくり時間をかけてやっていこうというスタンスだったと思うんですけど、当時の自分はリミッター入っててガツガツしてたんで物足りないというか、まぁよくわかってなかったというか。
解散して、そのあと何組か組んでは別れ、組んでは別れしてた後に、ケチャップ清水って奴とオムレッツってコンビを組みました。ちなみに僕の名前はタマゴ高橋でしたけど。その時に堂前と出会って。ケチャップと仲よかったんだよね。

堂前:はい。でも、あいつNSCと並行して行ってた大学の方に専念したいって辞めたんですよ。

兎:結局卒業公演が控えてて、1人で出るか、どうするか?って時に、僕は出ないことを選択したんですよ。相方もいなくなったし、正直、自分の中では面白いと思ってたんですけどそうじゃないことがわかって心折れまして、岡山に帰ろうかなと思ってた時に堂前が声をかけてくれて、それでもう少しやろうかなと。
2人の共通点、先に言った好きなお笑いの人がおぎやはぎさんとかさまぁ~ずさんとかありますけど、1番は増田こうすけ先生の漫画『ギャグマンガ日和』なんですよ。お互い全巻持ってて、この漫画についてよく話したりしてて。そういうことも踏まえて、あ、堂前とはコンビとして頑張れそうでいいなと。

堂前:『ギャグマンガ日和』を共有できたのは嬉しかったし、その漫画の笑うポイントや面白いと思ってることが似てて、一緒にいてこういう感じ楽だなということで声を掛けたって感じでした。

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組んでみて

兎:一緒におって楽な分、お互いにサボるんですよね。組んでしばらくは舞台もなかったし、舞台があっても2ヶ月1回くらいで、あとはほとんど遊んでましたし、正直お笑いを頑張ってるってのはなかったですね。それでたまに舞台に出ると、びっくりするくらい声が小さいって舞台袖にいる同期や先輩からも「声が小さ過ぎて何を言ってるかまったく聞こえない」って言われてました。

堂前:確かにNSCの発声の授業の時も、先生がだいたい自分の前におったし(笑)。

兎:僕なんか声楽の、あみ啓三先生に入学した時から「声が小さい」って言われてて、9月になったら「お前はもう声出ないわ、もう大丈夫、大丈夫」ってついに見放された感じで言われましたから(笑)。
それでも何度かコントをやってるうちに評判になって、先輩とかからインディーズライブに呼んでいただけるようになってから徐々に声は大きくなっていったと思います。あ、喋っていいんだと(笑)。

堂前:僕はずっと小さいままですけど、昔に比べる大きくはなったかな。ここまで来るの、今芸歴13年ですけど最近です(笑)。

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コンビとして成立したと思ったのは?

兎:基本、2人とも人見知りで喋るのが上手じゃないので、月一開催されていた『NSC道場』や『ピラミッド』のオーディションライブに出ている時、みんなしのぎを削ろうとしてやってくるわけじゃないですか、すごく空気的に嫌な感じで、しかも知らない人がいっぱいいるし、そんな時に2人、結託しないとどうにもならないですから、その時コンビとして一番強かったし、成立してたと思いますね。

堂前:劇場メンバーとして正式になった時にひとつ目標が達成できたことでコンビとして成り立ったなと思います。

兎:劇場メンバーに名前が載った時は感慨深かったなぁ。組んで6年目くらい。なかなか正式メンバーになれなくて……。僕らは4年目に1回解散してるんです。僕がオーディションバトルでの結果を受けて最下位に戻った時と、先輩が100人くらいの若手芸人たちを誘って海へ旅行に行った時にその中に2人ともまったく馴染めなくて。自分は芸人としてダメだって心が完全に折れまして。

堂前:僕もその旅行に参加してましたけど、多分、自分的には楽しくはないやろなという気持ちで行って2人とも撃沈。流石に心は折れなかったですけど、しなるくらいにはなりました。

兎:で、結局解散を持ちかけて……。でも1ヶ月くらいでむちゃくちゃやりたくなって、けど自分から解散を言った手前、言いづらいじゃないですか、で、その頃同期の奴と飲みに言って相談とかしてたんですよそしたら「めっちゃもったいない、絶対に言うべきだ、言って断わられてもいいやん」って言われて。
それから4ヶ月くらい自分自身と葛藤してて、ある日、コンビニで深夜バイトが終わる時間、外見ると雪が降ってたんですよ。それを見た時に、あ、このタイミングやなと。しかもその日、自転車を盗まれてて、家まで歩いて帰らなきゃいけなくて、それもあってこのタイミングしかないと。で、朝6時に「堂前、起きてるか?」って電話して。

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堂前:寝てるやろ。ほんと、迷惑な時間帯。

兎:
「もっかいコンビ組んでくれへんか」って話したら、「1週間考えさせてくれ」って切られました。

堂前:そらそうやろ、そんな即座に朝6時に返事できない。

兎:それで1週間後、喫茶店で会って再び組み直しました。

堂前:解散を言われたのは実は衝撃でもなかったです。コンビとしてはそんないい時期でもなかったですし。解散後、堂前タオルって名前でピン芸人をやってたんですけど、それはそれで楽しくやれてたし(笑)。でもまた組みたいって言うてきて、ちょっとコンビ間で、兎より上に立てるかなって。男女間でもあるじゃないですか。より戻してあげたんやでみたいな(笑)。

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これから

兎:僕的には今年は変化の年やと思ってまして。ある程度、芸歴を積んで、徐々に仕事もいただけるようになって、少し自分らでやっていきたい方向性を選べるのかなってとこに立てたように思うんです。で、コンビとしてどうしたいのかなってなった時に、将来的に舞台で食べていきたい。そのためにコントでやっていくぞという肩書きを得るために、『キングオブコント』でチャンピオンという称号を獲得しないとって思ってます。きっと将来、役に立つはずなので。

堂前:僕は『キングオブコント』には兎ほどあまり固執はしてないんです。獲れたらラッキーみたいなスタンスで。正直、僕があまり先のことを考えてないっていうのもあります。ただ現在、僕らコンビのできること、チャンスも含めて増えていってるんで、それを丁寧にやっていきたいし、それで結果が残せたらいいなと思ってます。

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兎:将来は僕はお笑いやりつつ、田舎の方で釣り船とかやりたいし、無人島でダッシュ島みたいなことしたいなって思ってますし、堂前は喫茶店やりたいんやろ。

堂前:うん。

兎:セカンドライフってリタイアしたような感じですけど、僕的にはお笑いと並行してそういうことを、年齢いき過ぎないうちに始めることがセカンドライフかなと思うので、それができたら最高ですね。そうだ、釣り船のそばで喫茶店やればいいじゃん。

堂前:お前のとこの客しか来んやん。

兎:いいやん、釣った魚を出して、コーヒーと。

堂前:それ、食堂やん。

兎:夢は広がるなぁ。

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思い出の場所:久宝寺の駅近くの公園

兎:ネタ合わせの場所ですね。線路そばの公園なんですけど、すぐ横に電車が通ってて。練習してると電車が通るたびに声が聞こえなくなる。きっとそこでも鍛えられたかもです。

行きつけのお店:珈琲館サモア

兎:ミルクボーイさんが紹介してるお店です。しょっちゅう行ってました。今は家が離れたんで行かなくなったんですけど。ミルクボーイさんとも結構会いましたね。

堂前:ネタとか書いてる時に店のお母さんが飲み物をタダにしてくれて。ただ、申し訳なくて2日連続は厚かましいしって思うとなかなか行けなくなったりして日にちをうまく調整して厚かましくないように行ってました。

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初めて喧嘩した場所:堂前の家

堂前:ゲームの『マインスイーパー』をしてて、兎がめっちゃそのゲームうまいんですよ。だから無意識に人がやってるマインスイーパーに横からワーワーいうてくるんです。それがめっちゃ腹たって。

兎:あ、思い出した! それがウザすぎてパソコン、パタンって閉じたよな!

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■ロングコートダディ プロフィール
堂前透(左)と(右)のコンビ。NSC31期。2009年結成。
2020年 キングオブコント決勝進出

ロングコートダディINFO

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取材・構成/仲谷暢之
撮影/渡邉一生(SLOT PHOTOGRAPHIC)


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