「M-1ってまだまだ進化してるんですね」――M-1大好き芸人・令和ロマンくるまの準決勝&決勝進出者会見レポ
生粋のM-1ファンとして「準決勝が生で観たい!」とYouTubeチャンネルでうめいていたのを聞きつけた「月刊芸人」編集部より、レポートの任務を請け負った令和ロマン・高比良くるま。
「ラッキー!ありがとうございます!言ってみるもんですね」
実は去年もこっそり袖で観覧していたそうです。
「今年は堂々と正面のメディア受付から入りました。ちゃんとメモ帳とペンも買ってきましたからね、しっかりレポートしたいと思います」と、気合は十分です。ただし、言ったそばから会場に積まれたどん兵衛を見て「いいなぁ、俺も欲しい」とポツリ。
「入り口にカバンひっくり返して何か探してるロン毛の男性がいて、誰かと思ったら金属バットの友保さんでした。紐とダンボールでつくった、行商の人が背負ってる箱みたいなやつを組み立ててたんですよ。今年もどん兵衛めっちゃ持って帰るんでしょうね」
(↓去年の金属バット友保)
(↓今年の金属バット友保)
開演までロビーをうろつき、顔見知りのスタッフに「何してるの?出ないでしょ?」と声をかけられるくるま記者。その後、無事に会場に入れました。
「ニューピアホールはステージのつくりがちょっと独特なんですよ。フットマイクの入り方もルミネとは違うし、立ってる足元の感触も違うんです。だから舞台の使い方に注意がいるんですよね」
2018年にワイルドカード枠で準決勝に進み、この舞台に立った経験からその独特さを解説。
「今年はコロナ対策で客席が1つ飛ばしじゃないですか。そのあたりもどう影響するのか、気になります」
時刻は17時になり、開演を迎えます。
ここからはくるま記者もいよいよ真剣な顔つきに。時折「うわー!」「うおぉ………」「なるほど」と小さく声を漏らしながら、メモ帳片手に全26組のネタを食い入るように見つめていました。
あっという間に本戦が終わり、「いやー、どうだ、これはどうなる……!?」と興奮の面持ち。さっそく感想を聞いてみます。
「とにかく思ったのは、あったかい準決勝でしたね。全体に、かつてないくらいワードかぶりとかテーマかぶりがあったじゃないですか。これって多分、今年はみんな家にいる時間が長かったからインプット先が似てるんですよね。映画とかマンガをモチーフにしたボケがすごく多かったと思います。それがすごい良いですよね。」
「漫才ってそんなに社会を反映するんだなとあらためて勉強になりました。M-1はどこか芸術的なものに思われてる部分もあると思うんですけど、結局お客さんを笑わせるためのもので、出てる漫才師の人たちもみなさんと同じ1年を過ごしてきたんだよ、ってことが伝わってきて。今年のキャッチコピー『M-1は、止まらない』に合致しててすごく良いなぁと思いました」
お笑いファンがM-1準決勝を観戦した後の最大の楽しみは感想戦。
「ここがすごかった」「あのフレーズ爆発してた」などなど、上がったテンションのまま良かったところを語り合うのはファンの醍醐味です。
くるま記者も語りが止まりません。1時間ほどノンストップで全組の感想をしゃべり倒していたので、ここではネタバレにならないように数組をピックアップしてお届けします。
「マヂラブさんはもう、ズルいですよね。みんなが真剣に挑んでる中で、もちろんマヂラブさんもそうなんですけど、真剣じゃないように見えるって一番強い。会場満遍なくウケてましたもん。それこそ今年はコロナのせいでネタを叩く機会がなくて、細かい言葉の調整が詰めきれない部分が大きかったんですよ。でもマヂラブさんはマイムとツッコミで構成されてるから、そういう仕上げが関係ないじゃないですか。ある意味、時代の寵児なのかも」
「『うるさい』って強いんだな!っておいでやすこがさん見てて思いました。こがさんもR-1に出られなくなって本当は同じくらい悲壮感があるはずなのに、いい感じに自分を消してて小田さんの悲壮感が立ってましたよね。漫才でツッコんでるというより、現状に言ってるみたいな怒りがひしひしと伝わってきて、本当におもしろかったです」
「今年は、どういう型の漫才をする人なのかわからない組がほとんどだったじゃないですか。その中で東京ホテイソンさんだけはみんなが知ってる。それってすごい強みだと思います。他事務所の人はみんな、吉本と違って今年ライブの回数も少ない中でここまで仕上げてきて……めちゃめちゃすごい」
「学天即さんは、唯一のラストイヤー組ですね。ラストイヤーって、ファン的には今まででいちばん良かったネタの詰め合わせを期待するけど、意外とやらないんですよね。でも学天即さんはそこをちゃんと入れながらテーマは新しくて。26組の中で唯一ハケる方向を間違ったのもグッと来ました。しかも奥田さんが間違えてよじょうさんが『こっちこっち』ってやってたんですよ。最後の準決勝ってそうなるのかな、って勝手に感じました」
「準決勝進出者が発表されたときから、僕は勝手に滝音さんは大本命だと思ってました。素晴らしかったですね。“ベイビーワード”をぶちこみながら、ワードがより一層研ぎ澄まされてたりどっちもボケるダブルボケみたいな時間もあったり……新しいスタイルですよね。今年キングオブコント決勝も出て、キテるじゃないですか。あと、秋定さんのツイッターのフォロワーが少なすぎるのも好きです(笑)」
「ニューヨークさんはもう、我らがニューヨークさんでした! 去年のM-1と今年のキングオブコントを経て、もうオーラがあるからお客さんの期待がついてきてて。言いたい放題言ってたけど、嶋佐さんがボケるだけでクスクス来てるし、屋敷さんが刺したら『これこれ!』ってすげぇウケてたじゃないですか。まさにニューヨークさんのM-1第二章でしたね。かっこいいっす!」
「先が見えない不安が高まってる今の状況だからこそ、錦鯉さんが出てきたら笑うじゃないですか。だって一文無しが出てくるんだから! 『俺のほうが不安だろ、俺を見ろ』って言ってくれてるスーパーヒーローみたいに見えますよね。まさのりさんは絶対そんなこと考えてないけど、観る人がそう感じちゃう。」
散々しゃべった後、「YouTube生配信があるので!」と楽屋の軽食をさりげなく懐に入れながら会場を抜けて、令和ロマンの配信に。確認したところ、YouTubeでもまだまだしゃべっていました。M-1が好きすぎる男です。くるま記者のファイナリスト9組予想はYouTubeでご確認ください。
配信を終えて戻ってくると、もう決勝進出者発表の時間。今年はホール内に出場者と中継陣のみが集まっての発表になります。どうにかいち早く結果を知りたいくるま記者、扉に張り付いていました。記者魂を感じます。
待ち時間には、他媒体のライターさんたちとお笑い談義に花を咲かせていました。情報交換にも余念がありません。
そして本日の締めくくりとなる、決勝進出者記者会見へ。ここからは再び報道陣もホールに集まります。今年は例年よりも多くのメディアが詰めかけ、その様子に「みんなM-1が好きなんですね」と仲間意識を感じているようです。
ステージに上がる決勝進出者、つまり先輩たちに見つからないよう端のほうに陣取ります。YouTubeで発表した予想9組中7組が当たり、「結構いいところ突きましたね!」と自画自賛していました。会見中は、MCの麒麟・川島さんがおいでやす小田さんに放ったツッコミで大爆笑。
終了後には、集合写真を撮影しているステージにちょっとだけ近づき「ヤバい、見つかる見つかる!」と言いながらちゃっかり写真を撮っていました。
最後に、今年は準々決勝で破れた自身の来年に向けた意気込みを聞いてみました。
「いろんなところで明言してるんですけど、僕はM-1を観るために出場してるんですよ。ファンとして出てるんです。2回戦で負けたら準々決勝は観られないじゃないですか。誰よりも近くでいっぱいM-1を観るために勝ちたい。決勝までいったら全部生で観れますからね。いや〜、でも今日見てみてあらためてM-1の進化を感じました。今年はオリンピックがなくなったけど、M-1があるからいいですよね。日本が明るくなると思います」
「おつかれさまでした!」と帰っていったくるま記者。
しかしその後も、再びYouTube生配信で今大会について熱弁を振るっていました。語りだしたら止まらない、M-1に魅せられた男のレポートに今後もご期待ください。
ちなみに、M-1当日は決勝直後の「ニューヨークのニューラジオ」に代打出演するそうです。きっとここでも体感2倍速のしゃべりを見せてくれるはず……。
M-1グランプリ2020決勝
放送日:12月20日(日)18:34~22:10
放送:ABCテレビ・テレビ朝日系列全国ネット生放送
司会:今田耕司、上戸彩
審査員:オール巨人、上沼恵美子、立川志らく、富澤たけし(サンドウィッチマン)、中川家・礼二、塙宣之(ナイツ)、松本人志(ダウンタウン) ※50音順
出場者:アキナ、マヂカルラブリー、見取り図、錦鯉、ニューヨーク、おいでやすこが、オズワルド、東京ホテイソン、ウエストランド
M-1グランプリ2020 【敗者復活戦】
放送日:12月20日(日)14:55~17:25 ※一部地域除く
放送:ABCテレビ・テレビ朝日系列全国ネット生放送
執筆/斎藤岬 撮影/高橋良美・川縁明穂