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ビスケットブラザーズ「withコロナとして付き合わざるを得ないのだったら、そういう状況を逆手にとって利用してやろうかと思いました」

昨年はコロナ禍において開催された「ytv漫才新人賞」で優勝し、今年9月に行われた「NHK上方漫才コンテスト」でも優勝し、2年連続で栄冠を手にしたビスケットブラザーズ。そんな彼らに、優勝したこと、二人の関係性などを聞いてみました。

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――まずは「第51回NHK上方漫才コンテスト」優勝おめでとうございます。

きん:優勝した瞬間、NHKが冠につく大会でまさか僕らが! そんなことあるの?って感じはありました。

原田:同じくその瞬間は、自分らに一体何が起こってるのかわからなかったですね。初めて出た大会やったんで、優勝をする、しないじゃなく、出場することができたという方が大きかったんで、とにかく不思議な感じでした。

――ただ、オンエアは石川県で地震が起きてしまったことで延期になりましたね。

原田:そうですね。そこは当然の放送延期だと思います。とはいえ僕らは優勝はしたけれど、誰からの反応もない状態で優勝フラグを持ってるっていうだけの状態やったんで正直、後日オンエアされるまではフワフワしてました。

きん:大手を振って優勝しましたって言うでもなく、SNSやネットでは発信されたけれど、イレギュラーすぎてどういう対応をすればいいのか困惑はしてました。とりあえずは石川県の地震もそう大きな被害も出ず、「NHK上方漫才コンテスト」も無事にオンエアされてホッとしてます。
実家(香川県丸亀市)に報告の連絡はしたんですが、ものすごく喜んでくれましたし、おばあちゃんが、「久しぶりに親戚から連絡あったと思ったら、優勝おめでとうっていう内容やった」って、これまた喜んで言うてました。それと、やはりNHKという国営放送は地方では反響と説得力があるなぁって改めてその凄さを感じましたね。
でも、香川県ではオンエアされてないんですよ。だからなんとしても見てもらおうと思ってます。

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原田:僕は知らなかったんですけど、実は母親が大会の観覧に応募して当選し、見にきてたんです。大会が終わった直後、母親から「おめでとう」って電話がかかってきて、“え!? なんで知ってんの?”って盗聴器でも仕掛けられてんちゃうかって思ったんですけど、会場に見にきてたと、泣きながら言うてくれて……。でも、自分はとにかくびっくりして焦った感じになって「ちょっと今、マネージャーと喋ってるから」ってすぐに切ってしまいました……。とはいえ、ナマで息子の優勝するとこを見せることができたのは、子どもとしていい親孝行ができたかなと思いましたね。

昔から母親に「恥ずかしくない仕事をしてください」ってよく言われてたんで……。普通、テレビに出るようになると親戚が増えるって言うじゃないですか、逆にうちは親戚が減っていってたらしく…そりゃ、しょっちゅうブリーフ一丁になってたらね(笑)。だから今回、NHKでの大会で優勝したので、親戚もまた増えるんちゃうかなと思います(笑)。

あと、他で言うてないんですけど、僕、中学の時に合唱団で2年連続全国大会に行ってるんです。でも、NHKの合唱コンクールは一回も行けてないんですよ。そしたらかつての合唱団仲間から「中学の時の借り返したな」と連絡が来まして、あ、違う形やけど、確かにそうやなと嬉しくなりました。

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――昨年のコロナ禍にあって、「ytv漫才新人賞」も優勝しましたがそちらはいかがでしたか?

きん:今回もそうですが、優勝の凄さをまず感じたのが昨年のytvの大会でした。

原田:そうやな。いくら「キングオブコント」でファイナリストになったとしても、自分らの経歴的にはそれを超えないと意味がなかったし、優勝しないとそこで収まってしまうってことを実感しました。そして優勝できたことで知ったその差の違い。それを今回も含めて2回も味わえたので、僕らは偉大やな。

きん:自分でそんなん言うタイプ?(笑) 優勝してまず思ったのは「ワイドナショー」などの全国放送に呼ばれたことですね。これはやっぱ違うなぁって思いました。それと「ytv漫才新人賞」優勝っていう肩書きで紹介されるのも嬉しかったですし。

原田:強運の連鎖、一体僕ら、何連鎖するねんって話で。

きん:まだ2連鎖だけやから(笑)。反対にこのコロナ禍で残念なことは、きっとこういう状況ではなかったら去年や今年、学園祭とかすごい呼んでいただけてたと思うんですよ。あと、営業も。そういう体験ができないことに若干の悔いはあります。

原田:だから結局、僕らをどれくらい知ってくださってるのかわからないんですよね。優勝したことでこれだけの方がビスケットブラザーズのことを記憶に焼き付けてくださったという実感がない。それを早く知ることができたらいいなぁって思います。

――今年でコンビ結成11年を迎えられましたが、それまでを振り返りつつ、なおかつ去年、今年と2回優勝して二人の関係性とかいかがですか?

きん:完全に二人とも歳食って落ち着きましたね。まぁ言うても僕が30歳で相方は29歳ですけど(笑)。いい意味で血気盛んさがどんどんなくなってきたと思います。
NSCに入ったのが18歳で、右も左もわからない年齢……ちゃんと18歳の身なり、感覚、考え、イキり方、トガり方で、よく二人、ケンカばっかりしてました。

僕、今、吉本新喜劇にいてる小西武蔵さんと同期で、ちょっと年齢が離れてるんですが、仲が良くて8年間、シェアハウスしてたんです。で、小西さんが「お前ら能力は高いのに、その感じでケンカばっかりしとったら、カタチになるまで無駄に5年かかるぞ」って言われてたんですけど、その通り、コンビとしてのカタチになるまで、ちゃんと5年かかりましたね。

原田:う~ん、そうやな。ネタ的には、じゃあ変わったかというと、根幹は変わってないとは思うんですけど、関係性やなやっぱり。引くとこは引く、出すとこは出す、その分別がお互いにできるように……。

きん:まぁつまり、大人になったっていうことです(笑)。その人格形成に影響を与えてくれたのは小西さんでもあるんですけど、ずっと僕らのことを一番面白いって言ってくれてて、あ、このまま自分らのやりたい笑いをやり続ければいいんやって思わせてくれたんです。

原田:励みにもなったし、支えにもなったし。あと、小西さんに意味のわからないカルトな映画を山ほど見せられましたし(笑)。世間を知らない18歳の男二人に、とにかく変な世界を映画でみせてくれました。それは今のネタにも多大なる影響を与えてますね。

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――そんなネタはどういう風に作られてるんですか?

きん:基本、原田がメインで考えてきて、それに肉付けしていく感じです。

原田:まずはこんなセリフを言いたいとか、こんな状況になったら面白いなっていう物語みたいなのを一人でブツブツ言いながら、きんがこの位置なら僕はこういう立ち位置で、さらにこういう性格でっていうのを頭の中で展開させていくとキャラが自然と動き出すんですね。で、こうなったらさらに楽しいかも、愉快かもってことをノートに走り書きしていって、きんに見せて委ねて、このセリフはこういうのがいいとかってブラッシュアップしていく感じです。

あと、「井戸端会議」っていう主婦が、お互いに自分が臭いっていうのをマウンティングしていくっていう繰り返しのネタはその設定だけを決めて、僕が言うたことにきんがかぶせていって相手に対して超えすぎないラインを探りながら作っていきました。
ちなみに井戸端会議はYouTubeでも見れるんで、よければ見てやってほしいです。

コロナの話に戻るんですけど、自分たちの本来やりたいネタとか、コロナ禍でやった無観客ライブではできるなってことがちょっとわかって、そこで本来やりたい笑いもできたり。

きん:劇場で隣に人がおって笑いにくいネタも、家で一人で配信を見ながらなら思い切り笑えるとかね。

原田:
もうwithコロナとして付き合わざるを得ないのだったら、そういう状況を逆手にとって利用してやろうかと思いました。

無観客ライブは、コロナが収束してもやりたいなと思いますし。
正直、結成10年目なのにこの1年が黒く塗りつぶされるんじゃないかと不安しかなかったんですけど、自分たちのYouTubeチャンネルで毎日ラジオをやったりして、コンビ間を見つめ直すきっかけになることもしばしばで、あぁこういう10年目なんやと。

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きん:僕らはステイホームの期間中、多く喋った方やと思いますね。ずっと誰にも会わず、相方とオンラインでその日のあったこととか感じたことを話すくらいでしたから。もう相方としか話してない日々が続きましたし。

原田:一切仕事なかったからなぁ。僕はラーメン作りに精を出してましたし(笑)。毎日骨を買っては煮込む、魔女みたいな生活してました。スパイスで葉っぱ類を入れたらどうなるやろとか試行錯誤しながらヒッヒヒッヒ言いながら……。

きん:魔女そのものやん(笑)。

原田:で、湯がいた麺入れてすすって美味しくないなとか。

きん:それは魔女ちゃうやん(笑)。

原田:最初に一杯のラーメン作るのに、初期費用で8,000円かかったときは一体何してんねやろって思いましたけど(笑)。結局、店のラーメンは凄すぎるなという結論に達しました。仕込む量もちゃうし。そらそうなんですけど(笑)。

きん:僕は韓国ドラマ流行ってたんでいわゆる「愛の不時着」「梨泰院クラス」とか見て泣いたりしてました。どんどんおばさんに近づいていきまして、体重も10キロほど太ってしもて、これではいかんと、家ん中で運動したりして必死で体重を落としましたね。ってこんな話を二人でしてたり……やっぱりラジオは僕らにとってでかかったですね。メンタルを維持する上でも支えになりました。

原田:10年目までに仲悪くなったりしたこともありましたけど、ここ数年は関係性は落ち着いてたんでラジオは二人ですんなりやれたというか。

きん:それはあるね。以前はお互いにしっかり話すこともなかったし、コロナ禍やから向き合えた。

原田:お互いに発見することもあったし、やって良かったです。

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――これからのビスケットブラザーズは?

きん:やっぱり「キングオブコント」は優勝したいです。いや、優勝しないとダメやと。それと「M-1グランプリ」もこれまでは準々決勝までしか行ったことないので、今年はそれ以上は行きたいです。

原田:「キングオブコント」の優勝はもちろん狙いたいです。そしてネタ的には長いコントをやったり、演出面とかを向上させて、更なるビスケットブラザーズの発展を切に願っております。

きん:他人行儀やな(笑)。

原田:まぁコントとか漫才とか関係なく、アホなことをやり続けたいのが本音です。

きん:
そやな、賞レース専用のマシーンにはなりたくないですし。格式を変に上げられるのは本来の僕らとは違いますから。

原田:普段やってることはブリーフ一丁になってるような、ほんま大したことないですから、「こいつらほんまチャンピオンか?」って馬鹿にしながら気軽に笑ってほしいですし、これからもそういうコンビとして発展できるように切に願っております。

きん:そういうまとめ方!?(笑)

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■ビスケットブラザーズ プロフィール
2010年結成。きん(左)、原田泰雅(右) のコンビ。
2020年 YTV「第9回ytv漫才新人賞決定戦」優勝。
2021年 NHK「第51回NHK上方漫才コンテスト」優勝。

■撮影協力
・ニュー深夜食堂 くるみ
大阪府 大阪市西成区 千本中 1-2-7

ビスケットブラザーズINFO

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取材・構成/仲谷暢之(アラスカ社)
撮影/小川星奈

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