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相席スタート山添の『星☆クズ』ダイタク編 “夢見るギャンブル狂芸人の借金と願掛け”

“クズ紳士”こと相席スタート・山添寛が、同じく“クズ”と呼ばれる芸人たちと、女性やギャンブルについて本音を語り合う対談企画『星☆クズ』。第2回は、山添の同期で“悪魔の双子”の異名を持つダイタク吉本大吉本拓を迎えた。

借金をしてまでもボートレースやパチンコに大金を注ぎ込むという一昔前、いや、二昔前の芸人のスタイルを貫いている3人。不撓不屈のギャンブラー芸人の思考は、常人には理解しにくいものばかりかもしれない。だが、読み進めていくうちに、きっと彼らの魅力に取り憑かれることだろう。

山添&ダイタクは、なぜ勝負に負けても楽しそうにギャンブルをするのかーー。その答えが垣間見えた対談となった。

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ダイタクの“プレゼン力”でギャンブルの世界へ

ーー山添さんにとって、ダイタクさんが、ギャンブル・借金の師匠的存在だとお聞きしました。

山添:クズの美学を教えてくれた2人です。当時1、2年目で、まだお金の貸し借りの経験がなかったとき、初めて大に1,000円を貸したんですよ。それから、何度か会いましたけど、いつまで経っても1,000円の話にならなくて……。

今の僕やったら、「そんな1,000円くらいで悩まんでええやん」って思えるんですけど、当時は、まだ青くて、美学の“び”の字も知らなかったんで、ポロッと「だいぶ前に貸した1,000円覚えてる?」って聞いたら「1,000円くらいでガタガタ言うな!」って怒らせてしまって……。そのとき“俺はほんまにちっちゃい男やったんやな”って思ったんです。

ーー(笑)。

山添:もっと大きなギャンブル(芸人の世界)に飛び込んでいるのに、これはイカンというか。そこからマインドが変わりました。

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ーー大きな出会いだったんですね。

山添:ダイタクは2人とも楽しいこと・面白いことのプレゼンが長けに長けているんですよ。勧めてもらったことはまず面白い。そのプレゼンがうますぎて、まったく興味のないギャンブルも、今すぐにでもやりたい体になるんですよね。

この記事を読んでいる真っ当な生き方をしている人からしたら、意味が分からへんと思うんですけど、ギャンブルにどっぷり入った僕からすると、今まで多額の金を注ぎ込んだことよりも、プラスの思い出・充実感・達成感・生きる指標すべてを教えてもらっていると思っています。安いもんです。


ーー今までどんなプレゼンを受けたんですか?

山添:パチンコ、ボートレース、最近で言うと、聞いたことのない250分の1で当たる宝くじ。いろんなことを教えていただきました。

大:まだ教えていないヤツあるよ。『チンチロナイズドスイミング』っていうんだけど。

山添:何それ(笑)。

大:あるとき、居酒屋でチンチロ(丼の中に投げたサイコロの出目で勝敗を決めるゲーム)で遊んでいたら、店員さんが来て「すみません。チンチロの音と小上がりにいるお客さんが押す呼び鈴の音が似ていて、サイコロを振られるたびに店員が振り向いてしまいます。申し訳ないんですけど、こちらで用意した器に変えてもらえますか?」って(笑)。

一同爆笑

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拓:俺たちの楽しそうな感じが滲み出ていたんだろうね。“これをやめさせるわけにはいかない”って別の器を用意してくれてね(笑)。

大:こちらも申し訳なかったんで、中ジョッキに入れた水にサイコロを沈めて、割り箸で混ぜるゲームで遊ぼうって話になって(後の『チンチロナイズドスイミング』)。チンチロって刹那のギャンブルで、一瞬で勝敗が決まるので、転がる瞬間を楽しめない。でも、『チンチロナイズドスイミング』は、サイコロが水の中にあるので、出目が変わる瞬間が見えるっていう。

山添:ちゃんと出目が見えるんや(笑)。

拓:水流ができて、見たことのない動きをするのよ。今までは器だったからみんな覗き込まなきゃいけなかったけど、水中だから(膨張して)サイコロはデカく見えるし、横からでも図柄が確認できるっていう。チンチロのダメな部分をすべて払拭した。

大:これは世に広めたらダメ。生産性も何もないのに面白すぎて誰も働かなくなるし、争いも起きる。


ーー確かにプレゼンが面白くて興味が湧きますね(笑)。

山添:そうなんですよ。頭の中で『チンチロナイズドスイミング』が各々の頭で広がっているじゃないですか。ギャンブルにまったくゆかりのない人からしたら、“そんな道をプレゼンして……”って思うかもしれないですけど、そうじゃなくて、面白いこと・楽しいことを教えてくれる2人なんですよ。

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借金の最終手段はりんたろー。!?

ーーギャンブルをする際、自分の中でルールを決めていますか?

山添:あったはずなんですけど、2レース目から忘れているんですよ。毎回“1レース5千円しか賭けない”って思っていたはずなのに、2レース目は8千円賭けて、最後の12レース目で6万円賭けちゃったりして……。“じゃあ手前の11レースは何だったんだ!”って思っちゃいますよね。

大:たとえば若手の時、給料10万円もらって、支払いするものを差し引けば手元に5万円残ると。でも、家賃、携帯電話代、人から借りている金を返さなければ、手元に10万円が残るじゃないですか。

その月、ギャンブルで8万円負けたとして、2万円が残りますけど、この2万円ってあってもしょうがないお金ですよね?  携帯電話払ったら残り1万円になるし、家賃も人に返すお金も足りない。結局は人からお金を借りなきゃいけないから、金がなくなっても自分の生活は何も変わらないんですよ。
8万円負けでも10万円負けでも一緒。だったら10万円負けようって感じですね。

山添:「8万円負けた」って人に言いにくくないですか? 「10万円負けた」って聞いた方が印象に残らないですか?

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ーー確かに印象に残りますが、そもそも家賃や携帯代をすべて支払った後のお金で遊ぶのが一般的だと思います(笑)。

山添:たとえば8万円負けたとして、残りの2万円で、生活費に使うのも失礼な話じゃないですか。借りている人にお金を返さずにメシ食って、コーヒー飲むなんて……。だからこそ、僕たちは残り2万円で勝負して、返すこと(勝つこと)しか考えていないんですよ。まぁ、それで負けて「今月も返済は無理でした」って頭を下げるんですけど。

大:(債務者には)報告はしっかりしますからね。

山添:ほんまに“よく生きて過ごせているな”って思わへん? 数年前までビッグスクーター乗ってたんですけど、ギャンブルして負けた日、青梅街道をエンジン音と同じくらいの声量で「うぁーー!」って言いながら帰ったこと、何回もありますからね。

ーー(笑)。

山添:吉本の給料って25日払いなんですけど、土日挟む場合、金曜の23日に入るんですよ。でも。24日に全部なくなったことがあって……。それなのに一応コーヒー飲んでタバコは吸えてるっていう。

拓:俺、あと今月5千円しかないよ。(取材日は、給料が入って4日後の29日だった)

山添:全然やっていけるな。僕らはこういうのを超えてきてたんで。

拓:給料を100万円にすることは簡単なんですよ。

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ーーえ?

拓:たとえば、給料10万円しかもらえなかったら、そいつの給料って10万円。でも、ほかの9人から10万円ずつ借りたら100万円になる。借りてしまったら俺のお金じゃん? 非課税の90万円が、簡単に手に入るみたいなもんですよ。

山添:人徳だよなぁ(笑)。普通、借りられないよ?

大:たとえば1週間後に100万円を返さないといけないのに、3人が100万円ずつギャンブルで負けたとするじゃないですか。でも、同期のEXIT・りんたろー。に、一本電話して「ちょっと300万円持ってきて」って言えば、何とかなるんじゃないですか? 


ーー爆売れ同期にお金を借りると。

大:僕もその立場になれば貸すでしょうし。

山添:語弊があるかもしれないですけど、3人がただ100万円を借りるだけじゃない。借りる時に“100万円を貸してもいい”って思ってもらえる面白プレゼンをするんです。貸してくれる方は、“その夢に100万円使うんだったら、貸してやろうかな”ってなるというか。俺らもその気概を裏切りたくないし、絶対にギャンブルで勝ってやろうって思います。

あと、極論でも何でもないんですけど、僕、ダイタク、りんたろー。(同期の)ネルソンズの7人の財産は一緒だと思っています。今は、りんたろー。が飛び出したんで余裕でしかない。本当に応援しています。僕らは、まだりんたろー。には手をつけていない(借金はしていない)んですけど、すっごい応援しているのは、そういうところですね。

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ギャンブルは“いかに楽しむか”が肝

ーーギャンブルをするときのオリジナル願掛けを教えてください。

山添:パチンコだと、先に自分の打ちたい台を取るより、防犯カメラ四方に会釈して「よろしくお願いします」と頭を下げます。それが僕の中の願掛けで勝率が上がっていると思っていたんですけど、拓は比じゃなかったです。一緒にパチンコに行った時、拓がいきなりトイレに行ったんですよ。“先に台を取れよ”って思って追いかけたら、店のトイレを磨いていて……。“こいつは本当に一流だな”と思いました。

ーー(笑)。

山添:あと、めちゃくちゃ嬉しかったんが、赤保留っていうアツい演出(当たる可能性の高い演出)が出たとき、拓がすぐに嗅ぎつけて「大丈夫。絶対当たる」って応援してくれたんですよ。でも、俺的には“絶対当たる”って言われると、当たらへんフラグが立つので、静かにリーチを見守っていたら、拓が「絶対当たる。なぜなら俺は、お前に当ててほしいから、さっき大事にしていたジッポライターを捨てた」と(笑)。それだけ身を削って当たりを出してくれたことがありました。

拓:『捨て』っていう願掛けですね。

大:本当はそれがなかったら外れてたからね。

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ーー偶然ではないでしょうか(笑)。

大:みんなで打ちに行ったとき、拓のほうパッて見たら裸足で当たりを引いていたことがあって。「それ何?」って聞いたら「『一青窈』っていう願掛けだ」って。一青窈さんが歌うときに裸足になるように、台と一体化するらしいですね。

拓:ロボット系のアニメとタイアップしている台があるんですけど、僕は台の隙間にイヤホンジャックを差し込んで、ロボットのパイロットになっています。『新世紀エヴァンゲリオン』でいう、碇シンジになって(台との)シンクロ率を上げるっていう。

山添:(笑)。あと『暖簾』っていう願掛けもあるね。激熱リーチのとき、台の液晶部分をおしぼりで隠して、そろそろ当たってそうやなっていうタイミングで、おしぼりを暖簾のように開けるっていう。

拓:あとは『先喜び』ね。

山添:リーチの段階で「よし当たった!」って、もうすでに当たったかのようなふるまいを3人ですることによって、台が「これって当たるはずやったんかな?」って錯覚させて、当たりにもっていくっていうやり方です。

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――そうやって願っていくわけですね(笑)。

大:結局こういうものって全部“オカルト”って言われていて、願掛けが直接的な要因ではないにしろ、それをいかに楽しむかってことなんですよ。

拓:パチンコっていうのは真ん中のヘソと呼ばれる部分に玉が入った瞬間に(当たり外れの)抽選がされていて、あとの演出は、当たっているかどうかを見せているだけ。結果は、決まっているんですけど、僕らは、オカルトとか願掛けをすることによって、結果を変えられるって信じています。

山添:いま、読んでる方の中に、僕たちがこういったことを冗談で言っていると思っている方もいると思うんですよ。その中でも、“本当に信じているんだ”って分かってもらえる話で言うと、拓の台で熱いリーチがきたとき、拓から「首を絞めろ!」って指示があったので、首をひたすらに絞めたことがありました。これは『首絞め』っていう願掛けなんですけど、ギューッて絞めたのに結局外れてしまって……。その後、拓から「もっと強く絞めろや!!」ってめちゃくちゃ怒られました。これを聞くと、本当に信じているんだって分かってもらえると思います。

拓:もうちょいで結果が変わったんだよね。

――(笑)。

山添:でも僕ら、どんだけ負けても、台に当たったりはしないですからね。

大:周りに迷惑をかけるようなことはしないです。

拓:自分が傷つけばいいんですから。

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期待できるギャンブル芸人は?

ーーギャンブル好き芸人で期待できる後輩は?

大:レインボー・ジャンボ(たかお)、キンボシ・有宗(高志)先生は、人より持っている運の量が極端に低い。だけど懸命に立ち向かっています。

山添:完全に神に見放された男たちですね。

大:空気階段の(水川)かたまりが、ボートレースの番組で10万円負けていて、“山添のタイプだ”って思いましたね。次の日に会ったら「大さん、今まで楽屋で皆さんがボートレースの話をしているのを見て、“なんで負けているのに毎日やっているんだろう”って思っていました……。すぐにボートレースのサイトを教えてください!」って言ってきたから、一緒だなって。

拓:かたまりの感じを見ていたら、(借金芸人として知られる)相方のもぐらよりもすぐに借金を作るタイプですね。あれはそうとう期待できます。

山添:あと同期で言うと、カゲヤマの益田(康平)っていうのがいるんですけど、だいぶ有力候補ですね。『アイドルマスター』っていうアイドルが出る台を打つときは、1回自分が着ている汚い服から、綺麗な服に着替えて打つんで。


ーー紳士ですね(笑)。

拓:僕ら的には舞台に出るのと一緒なんで。パチンコ屋で新品の服を何回もおろしたことがあります。

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ーー最後に、ギャンブル関連でやってみたい仕事や目標などがありましたら教えてください。

大:もぐらが岡野(陽一)とパチンコ番組を始める(『くずパチ』YouTubeで配信中)という夢を叶えたんですよ。僕らも、自分たちのYouTubeチャンネルでボートレース予想の生配信やったり、実際にギャンブルのお仕事もいただいたりはしているんですけど、最終的には、劇場の仲間を呼んで自分たちでボートレースやパチンコの番組をやりたいですね。

山添:それは夢やなぁ。

拓:芸人でお金を稼いだら1年くらい休みを取りたいです。普通の芸能人なら語学留学とか休養に充てますけど、僕はキャンピングカーを買って、仲良いメンバーと北海道から沖縄まで各都道府県をまわる(パチンコの)旅打ちをしたいです。

大:パチンカーにとって旅打ちは夢ですよね。

山添:ダイタク、りんたろー。、ネルソンズ、カゲヤマとかの同期とは、一緒に旅行に行ったことがないので、みんなで海外のカジノに行ってみたいですね。その場合、帰りの飛行機のチケットは、行きの時点で買っておく。これだけは誓っておきます。そうじゃないと飛行機代もBETしてしまうんで……。

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■ 撮影協力

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Rhythm Café (リズムカフェ)
「喫煙可能室」登録店舗
東京都渋谷区宇田川町11-1 柳光ビル別館1F




ライター/浜瀬将樹 撮影/越川麻希

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