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祇園「とにかくネタが面白いって思われたいし、言われたい。そこは祇園としては譲れないし、諦めたくない」

昨年の「M-1グランプリ2020」の敗者復活戦に1組だけ出場していないコンビがいた。 祇園である。
大会開催前に残念ながら木﨑が新型コロナウィルスに感染し、陽性と判明、そして櫻井も濃厚接触者となり、自宅待機を余儀なくされた。
少なくともこの経験から、笑いに対する気持ちもずいぶん変化したようで、今回は祇園に“昨年から今年”を聞いてみました。

※記事内の写真において、全てひらかたパーク様ご監修の元、
特別に許可をいただいて撮影させていただいております。


――まずは今回の撮影がひらパーこと、ひらかたパークですけど、木﨑さんは枚方っ子として大好きなんですよね。

木﨑:大好きです!『天国に一番近い町。枚方』ってずっと言い続けてるんですよ! 枚方出身の芸能人の方はめっちゃ多いんです。ハイヒールのリンゴ姉さん、川﨑麻世さんなどなど……そういえば最近、ラニーノーズがFMひらかたで「ラニーノーズのらにぱくパーク」ってラジオ番組を始めたんですけど、めちゃめちゃ悔しかったです。絶対に俺の方が枚方のことを愛してるのになって。

ひらパーさんでも何度かお仕事をさせていただいてて、Twitterをフォローしてるんですけど、ひらパーさんからはフォローしていただいてないんです。だからまず、Twitterのフォローをしてもらえるように、これまで以上に枚方っ子として頑張りたいと思っています!

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――ひらかたパークへの意気込みをお聞きしたところで、昨年の「M-1グランプリ2020」、敗者復活戦に出ることが決まっていたものの、木﨑さんがコロナに感染したことが判明、残念ながら棄権することになってしまいましたが、それぞれどう感じていましたか?

木﨑:療養が終わったのが敗者復活戦の翌日だったので、もう1日、2日、療養が早く終わってたら出ることができたのかなぁって。めちゃくちゃ運が悪かったなと思いましたし、自分自身こんなことが起こってしまうんやってびっくりしました。

元々、準決勝に残ったことも、敗者復活戦に出ることも初めてやったので。自分の中でずっと緊張状態が続いて、知らないうちに体が結構弱ってて、それで感染してしまったのかなぁって……。

櫻井:まず、2019年の「M-1グランプリ」予選の3回戦で落ちたんですね。で、2020年はちょっと拗ねてたというか、この大会には向いてないのかなって思って、正直もうええわって翌年は「M-1グランプリ」の方向を見ていなかった感じやったんです。
でも予選時期が来るとエントリーをされるので、別にあかんかったらええかみたいな、肩の力抜けて無欲で挑んでいたんです。そしたら皮肉なことに予選を突き進んで、準々決勝でむちゃくちゃウケたんですよ。

その時思ったのは、あ、そうか今まで自分たちが勝手に「M-1グランプリ」に対して苦手意識を持ってただけで、ちゃんと向き合えばウケるし予選を通してくれるんやってわかって、改めて向き合おうとしました。で、東京が準決勝の場でしたけど、新幹線に乗ってて「これに受かったら決勝やん」って思った途端、緊張しまくりまして……。

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櫻井:実は、前日に「最終のネタ合わせしよう」と言われたんですけど、向き合うつもりが、もう大丈夫やからいいかなと思って。それでもやっぱり準決勝にかけようとしてたネタをやってみたんですけど、僕、頭が真っ白になってしまって、お客さんの前で「なんやったっけ?」って言ってしまって……。で、準決勝当日も緊張と前日のことを引き摺ったのか、コテンパンに打ちのめされたんですけど、2019年よりは成長したと思うし、初めて勝ちたいと思ったし、「いい経験ができた」って考えを切り替えて、敗者復活戦に臨んでたんです。

それが、翌日に朝からテレビのロケがある日で早く寝なきゃと思って寝ていたら夜中にマネージャーから「明日ロケには、一人で行ってもらうことになるかもしれません」って連絡が来たんです。“どういうこと?”って思ってたら、また連絡があって「コロナに関係することでお二人とも自宅で2週間待機してください」って。再び連絡がきて相方が陽性だったと。

もう「え!?」ですよね、とっさに明日のロケをどうしようって焦りました。それでしばらくして「M-1グランプリ」のことを思い出して、日を数えていったら、どう考えても敗者復活戦の日に被るやんと。それで改めて「あぁ敗者復活戦に出られへんのや……しゃあないなぁ、どうしようもないな」という気持ちでした。

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――「M-1グランプリ2020」の当日はどうしていたんですか?

櫻井:家で放送を見てました。

木﨑:僕は家族と離れてホテルで療養中だったので、部屋で見てました。
「PCR検査の結果で陽性ってわかったら、敗者復活戦に出ることができません」って言われた時は、ただただ絶望感しかなかったんですけど、当日は気持ちも切り替わってて、もうしょうがないというフラットな気持ちでオンエアを見ることができました。

櫻井:敗者復活のところはインディアンスが、僕たちのネタのつかみをやってくれたり、金属バットが「僕らはもう出なくていいので祇園さんを出してください」って言うてくれたり、敗者復活戦に出る人たちの幟を、放送後に後輩のロングコートダディが持って帰ってきてくれたり……。みんな優しくて、ほんまは僕らもそこにいたんやでって、存在の爪痕を残してくれる感じが伝わって、本当に嬉しかったです。もう絶対この瞬間を忘れんとこうって思いましたね。

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――その経験を越えて、2021年の上半期はどうでしたか?

櫻井:去年、いいとこまで行かしてもらった時のネタっていうのは今までやってたようなものとはテイストが違うものなんです。それまでは木﨑の“僕ってかっこいいでしょ”みたいなキャラをずっとやってたんですけど、ガラッと変えたんです。今年に入ってナルシストな木﨑のようなネタは、ほぼ作っておらず、賞レースに向けてというか、自ずと去年のネタを超えるぞというネタ作りに変わってきてます。

木﨑:僕もテレビのロケとかの場合は、ナルシストの木﨑っぽさを求められるので、その場合は、めいいっぱいのモードで木﨑を出して、舞台では“現在(いま)”の祇園の漫才をするっていう使い分けが今年に入ってしっかりできるようになってきたなと思います。

僕自身、枚方も含め、関西でやっていくことがすごく好きで、特になんばグランド花月に出させていただくことが一番楽しいです。その時にいろんな世代のお客さんが来はるので、ナルシストな木﨑を全開にしてしまうとお年寄りも含めて正直ポカンとされる方もいらっしゃいます。だから、そこは“祇園”でしっかり笑っていただきたいと思っています。
ここ数年は、NGKでトリを取ってはる海原やすよ・ともこさんや中川家さんの姿を見てて、なおさら漫才に対して、真摯に向き合いたいって思うようになりました。

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櫻井:今まで、相方に口出ししてたと思うんです。ナルシストなスタンスをやるならやる!やらへんならやらへん!て決めろ、みたいな。でももう今は、投げやりとかそういうのじゃなくて、素直に伸び伸びやってくれはるのが一番だなって思うようになりました。
本当に相方の好きにやりはったら一番やなと。やっぱりネタをやってて自分らが楽しいのがいいじゃないですか。決して無理矢理やらされてやるもんじゃないので。
そらもっと若手時代は世に出るため、覚えてもらうために、こういう喋り方をしないといけないとか、相方のナルシストなキャラクターを印象付けることに必死でしたけど、少しばかりキャリアを積んできて、今はそんなんじゃないなぁと思い出して……。やるならやったらいいし、やれへんかったら、相方はそういうことをやる日じゃないんやって思うようになりました。

昔は、お笑いのいろんなジャンルを全部できないといけないと思ってた。
もちろんできればいいんですけど、やっぱり僕らにはなかなかできなくて、常にもどかしさを抱えてきたところもありました。それが苦手な部分は苦手と分かった上で別に無理してやらなくてもいいじゃないかと。僕らが楽しめるところをもっと伸ばしていこうというスタンスになってきましたね。今年に入ってそういう部分への思いは強くなってきてますね。

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――では、東京での活動への意識はありますか?

木﨑:う~ん、あまり意識してないです。正直、皆さんが思っている以上に木﨑のメンタルは非常に弱いというのがありまして…(笑)。
東京へお仕事で行かせてもらっても、ほとんど実力が出てないなぁと自分でも思うんです。なんせ東京へ3泊の仕事の時に、2日目に全身に蕁麻疹が出まして……。あ、これは本当に僕自身、東京がダメなんだなと自覚した瞬間でもありましたから。

きっと「M-1グランプリ」の前に免疫力が落ちてたのも少なからず、メンタルの弱さが露呈したというか……。かといって大阪でも毎日緊張してるんですけど(笑)。

そんなとこもあるからではないですけど、それこそ東京に活動の場を移さなくても大阪の芸人が面白いので、こっちの方で盛り上げたいっていうスタンスも全然ありだと思いますし、むしろそうしていきたいって気持ち、大阪愛が全然ありますんで。

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櫻井:現状という意味では、東京でヨシモト∞ホールやルミネtheよしもと、よしもと幕張イオンモール劇場とかの出番をちょこちょこといただいてて、大阪もなんばグランド花月、なんばと森ノ宮のよしもと漫才劇場、祇園花月と出させていただいてて、劇場が違うだけでネタをやらせてもらう以上は一緒やんと思ったりするわけです。

客層は違えど、同じ板の上。もともと東京のテレビに出させてもらってるわけではないので、変に色気を出すよりかは、これぞ祇園の舞台ネタというのを作ることができて、それを東京、大阪、そして全国関係なくいろんなところで披露できたらっていう、スタンスですね。

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――そのスタンスで言えば毎月開催している「GIONライブ」「GIONトーク」はライフワークのようでもありますね。

櫻井:トークライブはずっとやりたかったんですよ。
以前、よしもと漫才劇場がオープンする前にあった5upよしもとに出させていただいてたんですけど、なかなかオーディションに受からなくて、正規のメンバーに入れたり入れなかったりの2軍の時代が長かった。それに2軍は自分でライブを打てないというルールがあったんです。

「ラジオ番組を将来持ちたいから、トークライブとかやりたいなぁ、できませんか?」って言うても、「正規メンバーになってから言うてください」って言われて、やらせてもらえず……。やりたいなぁやりたいなぁって言うてたら、僕らハルカス組と呼ばれる、あべのハルカスにあるスペース9という劇場にアインシュタインさんやトットさんらと移動になったんです。

そのタイミングでイベントをやらせてもらえることになり、道頓堀にある道頓堀ZAZA POCKET'Sという劇場で1回目をやってから、おかげさまで今も続いてまして、次回で83回目になります。
トークライブが月一あることで日々思ったことや経験したことをメモする習慣がつきましたね。それは他の仕事にも役立ってますし、「GIONライブ」も毎月新ネタを作らないといけないので、メモ自体、活かせてるので習慣づけてよかったと思います。

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木﨑:毎月ライブをやっていて思ったのは、基本、トークを磨くための場所だと思ってたんですけど、毎度面白いことなんてないんですよね。正直、話せるエピソードないなって月もあって……。とはいえライブとしては1時間絶対に成立させないといけないってなった時に、ちょっとしたテーマを広げたり、ノリになったりとかするうちにトークライブって話だけじゃなくて、こういうことも練習になるんやって。
で、それが櫻井も言うたようにロケやMCに活かされたりするので、それは自分たちでも思ってもなかった副産物でしたね。
毎回、トークライブは一切何も打ち合わせはしないです。本番勝負。

やっぱり面白いのが、仕事とかで長時間一緒におるのに内容が見事に被らないところ。だから毎回お互いに刺激は受けてますね。今、櫻井の話を聞いてて、メモをするんやと。自分は前日に、明日どうしようってなるタイプ。夏休み最後の日に追い込まれる学生みたいな(笑)。そういう性格の違いもトークライブでは、僕自身楽しんでたりしますね。

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――今年も、もうすでに下半期ですが、祇園としてはどう見据えていますか?

櫻井:僕らってこれまでトップになることが一度もなく……、例えば、劇場で僕らNSC28期まで卒業で、これからは29期から、特に吉田たち、令和喜多みな実を中心にしていきますなんてことが過去にあって、いわゆる僕らがトップになれなかったんです。

「もっともっとマンゲキ」っていうイベントとかも僕ら世代がMCやってたんですけど、そのメンバーが東京に活動の場を移したりしたら、本格的に自分たちがメインになるかなと期待はしたんですけど、結局、次の若手の子たちでいきますみたいになって……。でも、自分たちはずっとそこにおる奴、であることは譲りたくないなとは思います。やっぱり劇場が大好きですし、そこでちゃんとネタが面白いコンビであるという結果を下半期以降も長いスパンで出していきたいです。

木﨑:僕ら、ありがたいことに、関西の番組でロケとか多くさせていただいてて。そこで僕がキンキラキンのスーツを着て、“こんなんやで”って印象付けて興味を持ってもらって、そこから劇場に足を運んで、祇園のネタを見て「面白いんだ」っていう流れを作りたいんですよね。これが理想です。
もちろん今年の「M-1グランプリ」も決勝を目指して、そこで改めて祇園ってどんなんやって興味を持ってもらって、今言うたみたいに劇場へ来ていただき、ナマ祇園をっていう流れもアリです。

櫻井:とにかくネタが面白いって思われたいし、言われたい。そこは祇園としては譲れないし、諦めたくない。「M-1グランプリ」にはあと3年エントリーできますけど、その3年を僕らとしてはどう向き合っていくのか、絶対に後悔したくない3年にしたいですね。


「GIONライブ+」
8月22日(日)
開演/20:00
会場/よしもと漫才劇場(※配信のみ)
出演:祇園
ゲスト:藤崎マーケット、ビスケットブラザーズ
料金/配信2,000円

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撮影協力:ひらかたパーク

■祇園 プロフィール
木﨑太郎と櫻井健一朗のコンビ。
2008年4月25日結成。
2018年4月 第53回上方漫才大賞 新人賞受賞
2019年 自身初DVD発売「お待たせしました祇園のDVDです!」

祇園INFO

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ライター/仲谷暢之(アラスカ社)
撮影/渡邉一生
撮影協力/ひらかたパーク


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