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「いっとき住所がマンゲキだった」生粋の劇場育ち・見取り図が語る、よしもと漫才劇場メモリー

大阪への愛を常に持ちながら、活躍の場を全国へと広げている見取り図。どんなに忙しくなろうとも、変わらず劇場に立ち続ける彼らは、誰もが認める“大阪の劇場番長”だ。
そんな見取り図と切っても切り離せないのが、彼らのホームである「よしもと漫才劇場」。劇場の思い出や七不思議、そして彼らのお笑いのルーツなどを、現地・大阪で取材した。

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見取り図が“劇場番長”と呼ばれる所以

──よしもと漫才劇場(以下:マンゲキ)、今年で7周年を迎えるんですね。

盛山:僕らは設立当初からいます。僕ら、その前の5upよしもと、baseよしもとにもいたんで、3劇場所属したことある人はあんまりいないんじゃないですか?

──全部合わせると何年ぐらいに?

リリー:12、3年? 芸歴2、3年目で劇場に入ったんで。

盛山:baseよしもとの時は、一番後輩でした。で、5upよしもとで、僕らが一番上の時代があって、それが10ヵ月で終わって(笑)。そのあとマンゲキになりました。そっから7年。

──先日放送された『アメトーーク!』の「よしもと漫才劇場芸人」を観てさらに、見取り図さんは“ザ・劇場番長”だなと感じました。

盛山:別に、そう言われるようなことを何かしたわけじゃないんですよ。だから、何をもって劇場番長って言われてるんやろ?

リリー:テレビ出れてなかっただけやろ(笑)。劇場長いけどテレビ出れてなかっただけ。

盛山:劇場番長って、良い意味も悪い意味もあるんで(笑)。東京のテレビで「大阪の劇場番長」って紹介されるようになって、それでだんだん「そうなんや」って。楽屋ではよく遊んでたんで、“楽屋番長”とかなら自覚ありましたけど(笑)。「劇場番長、僕らで良いんですか?」って感じです。

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──周りの皆さんは誰も、悪い意味では言ってないと思います。

盛山:そうですか? そんなら劇場番長いっぱいおるよな?

リリー:上で言ったらテンダラーさん、やすとも(海原やすよ ともこ)さん。

盛山:やすともさんなんて、劇場スケバンなんで(笑)。プラマイ(プラス・マイナス)さんなんて、劇場で絶対スベらないんで。

──皆さんが見取り図さんを劇場番長と呼ぶのは、ネタだけではなくて、それこそ楽屋での様子も大きいと思っています。

盛山:それやったら、僕だけちゃいますかね? こいつ、楽屋ではめちゃくちゃ静かなんですよ。

リリー:全然遊んでないですね。

盛山:僕が楽屋で野球とかやってて、すごいスピードのボールがコイツの真横に飛んでも、表情変えずに本読んでます。

リリー:1回、首に当たったことあるもんな。

盛山:逆に頭おかしいですよ(笑)。

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盛山がボール遊びをできなかった、縦社会の時代

──『アメトーーク!』で、盛山さんがマンゲキの楽屋を「高校野球みたい」って仰っていたように、吉本の劇場って部活動みたいなイメージがあるのかな?と。

盛山:たしかに体育会系というか、吉本興業は昔から縦社会なので。先輩方がそうやったよな?

リリー:もっと怖かったな。俺らは優しいほうよ。

盛山:僕らはそんなことないんですけど、先輩方は「怖いもん」として……なぁ? 普通に怒られたりしたよな。

リリー:それどころか、話しかけるのもムリやったもんな。

盛山:baseよしもとの時はムリでした。今ではこんなに楽屋好きな僕が、とにかくすぐ帰ってましたもん。「先輩方、怖え~」ってのはありました。当時ね、若手の時は。

──それこそ、部活で1年生が先輩のことを怖がるような感じでしょうか?

盛山:ほんまその感じです!

リリー:入れない楽屋とかもいっぱいあったもんな。

盛山:あるんすよ、ホンマに。タバコ吸いにいくのも、劇場の喫煙所には行けんから、外に出てパチンコ屋で吸ったりとか。

──しっかりと縦社会が。

盛山:イノグチさんって女性のレジェンド劇場スタッフの方が、実家がコンビニみたいなところで、余ったパンとかを若手のために大量に持ってきてくれてたんです。その「イノグチパン」を取る順番とかも決まってたよな。僕ら後輩は最後。他にも、後輩は掃除して帰るとか……これは今でもあるか。

──マンゲキになってからは、少し環境が変わったんですね?

盛山:青空さんとかヘッドライトさんとか先輩方はたくさんいますけど、今は「先輩怖い」って感じではないよな? みんな優しいし。でも、昔は昔で良かったよな。怖いのがイヤだったというわけじゃなくて、単純に僕らがビビってたってのもあるので。先輩の話を聞いてると、ノリとか礼儀とか昔はもっとスゴそうだったもんな。

──baseの時は、廊下でボール遊びもできない?

盛山:絶対できないですよ! なんやったら先輩方のボール遊びを見てましたもん、僕は。

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──ボール遊びは、どの時代も健在なんですね。

盛山:やっぱ、男ってボール好きなんですよ。球状のものが。バスケットボールもあった。

リリー:ボール以外もいろんな遊びが流行っとったな。フリスビーとか。

盛山:パチスロ台もあったもんな。

リリー:将棋ブームとかな。

盛山:卓球台あったり。

リリー:卓球、流行ったなあ!

盛山:ほんまにルーキーズの部室みたいな感じです。

リリー:卓球だけやりに行った日とかありましたもん、休みの日に。

盛山:夜中でも行っていいから、大阪の劇場はいつでも芸人いますね。

──24時間?

盛山:誰かはいます。単独前で夜中ずっとネタ合わせしてるヤツがいたり、打ち合わせしてるヤツがいたり。今はご時世的にいないですけど、ただ飲んで、家帰るの面倒くさくて泥酔してるヤツとかもおるよな。

リリー:何回泊まったか、もう分からん。

盛山:僕に関しては、借金して家追い出されて、いっとき住所がマンゲキになってたときもありました。郵送物が全部「よしもと漫才劇場」に届くっていう。住所だけ見たら、僕一等地に住んでたんですよ。だからそういう意味でも劇場育ちですね。ホンマに育ってるんで(笑)。

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全国の劇場と比べてわかった、マンゲキの楽屋は異様

──東京の劇場に立つ機会も増えたと思うんですが、マンゲキとその他劇場、やはり雰囲気は違いますか?

リリー:全部特徴があるよな。ちょっとずつ違いますね。

盛山:マンゲキは若手の劇場、ルミネ(ルミネtheよしもと)は幅広い方が出てはる劇場。スーパー売れっ子の兄さんとかも出てるので、また全然違いますね。ルミネの居心地どう?

リリー:だいぶ慣れたよな。最初はめちゃくちゃ居づらかったけど。

盛山:楽屋のどこにいたらいいんだろうってね。もちろんボール遊びなんてできない感じでした。

──確かにルミネの楽屋でボール遊びって、あんまり聞かないです。

盛山:でもそれが本来普通よな。マンゲキが異様なんですよね、部室感がスゴいというか。まず楽屋が広いんですよ、フリースペースみたいな感じで。あそこではネタ合わせしてて、あそこでは打ち合わせしてて、あそこではノリやっててみたいな中で、それが当たり前みたいに過ごしてますけど、冷静に考えたら異様ですよね(笑)。

リリー:東京で言うと、無限大ホールが近いよな。

盛山:無限大も部室感あるなあ。

──NGK(なんばグランド花月)はいかがですか?

盛山:NGKはもう、レジェンド劇場。

リリー:師匠の巣窟ですよ。

盛山:巣窟っておい(笑)。

リリー:なんぼでも出てきますからね、師匠が。

盛山:メッカですね。NGKで僕がキャッチボールするのは、68歳ぐらいの時ちゃうかな。

──元気ですね(笑)。

盛山:キャッチボール、するのはするんですけど(笑)。解禁されるのが68ぐらい。

リリー:こないだ文珍師匠がロビーおったで。

盛山:文珍師匠の前でキャッチボールなんてできるわけないですからね(笑)。

──マンゲキにも先輩方はいらっしゃいますが、その方々にはもう「盛山さんはボール遊びをする人」という認識があるんですね?

盛山:むっちゃ厄介なヤツやん(笑)。そんなしょっちゅうボール遊びしてるわけちゃいますからね? 一応先輩おらん時を狙ってやるんですけど、一回、ボール投げた瞬間にミルクボーイの内海さん出てきたことありました(笑)。でも、藤崎マーケットのトキさんはずっと一緒に野球やってくれます。

──本当に、放課後とか部室みたいな感じですね。

盛山:まあ……ダルがってるヤツもいっぱいいるでしょうけど(笑)。でも言うほどそんなやってないです。と言いつつ、今日はサッカーボールでリフティングしてましたけど。

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マンゲキ七不思議
「稲田さんは化けネズミ」 「中谷が全ての元凶」

──先ほどの「イノグチパン」のお話のような、芸人さんだけが知っているマンゲキの七不思議を教えていただきたいです。

盛山:イノグチさんのデスクに写真飾られた芸人は売れるってのがありました。

リリー:不思議な力。

盛山:当時やったらノンスタ(NON STYLE)さんとか。

リリー:1回イノグチさんに飲みに連れていってもらったんですけど、連れてきた人が、ライオン飼ってるドバイの女の人でした(笑)。どういう繋がりなん?って。人間関係めっちゃ広いんですよ。

盛山:これは『アメトーーク!』でも話しましたけど、アインシュタイン稲田さん。あの人、給湯室とかトイレとか、水回りのところにしか荷物を置かない。ネズミと同じ立ち回りしてる。

リリー:稲田さんは化けネズミ。

盛山:あと、ミルクボーイの内海さん。M-1チャンピオンになったのに、マンゲキメンバーやから個室じゃなくて僕らと一緒の大楽屋なんです。でも後輩のインディアンスとか、東京の芸人が来たら個室を用意してもらえるんですよ。それを内海さんが未だにずっと怒ってますね。「なんで俺、お前らと一緒に着替えなアカンねん」って(笑)。

リリー:それ不思議ちゃうやろ(笑)。

盛山:「なんで怒ってはんねんやろ」って(笑)。

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──怒ってることが、七不思議?

盛山:もうええやろ、って(笑)。あと何ある?

リリー:マユリカ中谷が全ての元凶ですね。悪いことばっかり起こしてます。やってることムチャクチャなんで。

盛山:ずっと「マンゲキのYankee」って呼んでる。イントネーション、ヤンキー(↓)ちゃいますよ、アメリカの方のYankee(↑)って呼んでます。

リリー:ホンマにマジで一番悪いよな、アイツが。到底、人ではできないことやってます。「田口合唱団」っていう、先輩に呼ばれたユニットがあったんですけど……

盛山:ユニットでネタするやつね。

リリー:テレビだったのに、本番に行かなかったんですよ、飛んで。先輩のユニットですよ?

盛山:ちょっとネジ外れてるというか。でも喋ったら「むっちゃちゃんとしてる子やな」と思うと思います。付き合いが深くなればなるほど、一番Yankeeです。よく遅刻するんですけど、そのまま飛ぶんですよ。

──飛び癖が……。

盛山:劇場出番も飛ばして、連絡も繋がらなくて、マンゲキの何百人もいるLINEグループで「マユリカ中谷、今どこにいるのか分かりませんか?」って聞いても、誰も知らない。後輩が一日中探しに行って、家にも行ったけどいない。そしたら、夜中にポツンって帰ってきて。話聞いたら、遅刻しそうになってイヤになって、鶴浜っていう歩きじゃ絶対行かない海のほうまでずっと歩いてたらしいんですよ。

──すごい(笑)。それでも今なお、芸人さんから愛されてるのは何故なんでしょう?

盛山:圧倒的な愛嬌と、圧倒的な面白さ。

リリー:マユリカ、ホンマに面白いっすよ。

盛山:マジでおもろいっす。面白いは正義だなぁというのを体現してるような二人。

リリー:あれでおもろなかったらヤバいよな(笑)。

──ただのイヤなヤツになっちゃいますよね(笑)。七不思議、あと三つありますか?

リリー:スーパーマラドーナの武智さんもね。M-1の時期になったら劇場に現れて、M-1の話して帰っていきますね、あれは不思議です。

盛山:情報収集だけして帰っていきます。ほか、どの芸人でもいいですよ。なんぼでも出てきます。

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──「もっともっとマンゲキ」のMC陣ではありますか?

リリー:最近、からし蓮根の伊織が池乃めだか師匠の髪型してきて。不思議やったよな。

盛山:めだか師匠の写真を美容室に持っていったやろっていうぐらい、まんま同じ髪型。だから僕、ずっと「池乃大魚」って呼んでますよ。デカすぎるから、メダカじゃなくて大魚。

リリー:倍ぐらいあるもんな。

盛山:同じ吉本社内でその髪型被るんかって(笑)。レジェンドにいてはるのに。

──伊織さんは実際、めだか師匠を意識してその髪型に?

リリー:自分では「ベッカムヘア」って言ってましたけどね。

盛山:どこがやねん、どの時代のベッカムやねん。 あと、さや香・石井のチン○ン。彼のチン○ンは、嘘みたいに真っ白。

──“劇場”の七不思議ですよ?(笑)。

盛山:七不思議ですよ。なんであんな白いんやろう、絵の具の白より白いです、マジで。めっちゃ白いよな?

リリー:白いなぁ。

盛山:ビックリしました。刺身こんにゃくみたいな。

リリー:食べ物で例えるなよ(笑)。

盛山:白子ポンズみたい。ちょうど形状も。一回ポン酢かけて咥えそうになりますもん。スタッフさんでいうと、マンゲキの支配人は、今では神保町・森ノ宮とか全ての劇場の総支配人という役職でもあるんですけど、死ぬほどパーフェクトな方なんです。ほぼ全公演、後ろで見てはるんですよ。

リリー:ロボットやな。

盛山:ロボットです。前に、夜中に劇場行ったらパソコン打つ音聞こえて、事務所行ったら支配人が一人でずっと作業してて。この人いつ寝てんねんって。本当にすごいんですよ。

月刊芸人編集者:劇場の後ろに立ってない時でも、事務所で配信映像見ながら仕事しています。

盛山:(笑)。ほんまにヤバい人ですよ。パーフェクトです。

──芸人さんからも相当信頼がある方なんですね?

盛山:そうですね、そういう姿を芸人も見てるんで。ちゃんと怒るときは怒りはりますし。そして、下ネタが大っ嫌いです。

リリー:俺らはよく許されたほうよ。

盛山:それこそ中谷なんて、一番怒られてんちゃいますか? でも、マユリカは絶対売れますよ。

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リリーは大分の短大、盛山は新喜劇でのヤジ飛ばし。それぞれの芸人を始めた“キカッケ”

──お二人の、お笑いのルーツをお聞かせください。

リリー:とんねるずさん、ダウンタウンさん、ウッチャンナンチャンさんの番組はほとんど観てましたね。

──そんな中で一つ、ビビッと来たキッカケはありますか?

リリー:僕は学祭ですかね。学祭でMCしてめっちゃ楽しくて、こんなのが仕事になったらいいなと思って、その時芸人やろうって決めましたね。

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──高校の学祭でしょうか?

リリー:いや、短大です。

盛山:どこの?

リリー:どこの?(笑) 普通に横浜やけど。

盛山:いや(笑)。こいつ大分の短大行ってたんですよ。

リリー:(笑)。

盛山:岡山で生まれ育って、大阪でも東京でも地元でもなく、大分の短大ですよ。“短期”大学ですよ。大分に2年住んでみてるんですよ。

リリー:YouTuberみたいに言うな(笑)。美術を専攻してました。

──美術大学に行かれた、というお話は聞いたことがあったのですが……。

盛山:短大です。

──大分だったんですね。

盛山:そうなんですよ。

リリー:ちょ、俺が答えるから(笑)。

盛山:隠すんですよ。なんか、“東京の美大行ってました感”出すんで、ちゃんと言わんと。“大分の短大行ってた感”出すために。

リリー:俺が言うって(笑)。

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──お笑いのルーツというか、キッカケは大分だったんですね。

リリー:そうですね。

盛山:大分でお笑いを。

リリー:決めたよ、その時に。

盛山:短大の学祭で。

リリー:短大付けんでええやろ(笑)。学祭でええやろ。

──深堀りしてよかったです(笑)。盛山さんは?

盛山:僕はベタな大阪の子なんで、小学校低学年の頃に、親に連れられてめっちゃ劇場行ってました。

──家族ぐるみでお笑いが好きだったんですね。

盛山:新聞で吉本のチケットもらえたりしたんですよ。住んでるところから電車で15分のところに劇場があったんで、近い存在でしたね。当時は劇場ルールがめっちゃ緩かったんで、子供たちが客席とか走り回ったりしてたんですよ。新喜劇の末成映薫さんってベテラン女優さんがいるんですけど、公演中にガキの僕が舞台まで走っていって、舞台叩いて、末成さんにヤジ飛ばしてたんです(笑)。最悪の子供でしょ?

リリー:それが4年前のことやもんな。

盛山:バリバリ現役やないか! 芸人じゃなくてもマズいやろ、31のオッサンが(笑)。でもその時、末成さんが僕をイジって、めっちゃ笑いに変えてたのを覚えてますね。で、オトンが後ろから追っかけてきて、パンッってどつかれて。NGKでの思い出です。

──吉本を作った方のNHKの朝ドラ『わろてんか』の映像が今思い浮かびました。

盛山:古すぎますって(笑)。昔は今ほど消防法も厳しくなかったんで、通路も座ってよかったんですよ。小学校でも文化祭の出し物で漫才とかやってて、ホンマにベタな大阪の子供って感じやったと思います。

──大阪がお笑いの街と言われる理由みたいなものが分かった気がします。

盛山:漫画に出てくる大阪人みたいでしたよ。目立ちたがり屋だったんで。

結成のキッカケ「いっちょやってみっか」の真偽

──そんなお二人の結成のキッカケは、六甲山へのドライブだと聞いたことがあるんですが。

リリー:その、Wikipediaとかに書いてある話は本当です。

──六甲山で星空を見ながら?

リリー:いえ、夜景です。

盛山:どっちでもええやろ(笑)。

リリー:「いっちょやってみっか」ってな。

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──本当なんですか?

盛山:そんなわけないやん、悟空みたいなこと言わへんて(笑)。夜景を見せてあげた、までがホンマです。

リリー:そこが一番ヤバイやろ。

盛山:でもそれがホンマなんで、「いっちょやってみっか」なんて言ってないですけど、「組んでみる?」みたいな。……キモいなぁ、それだけ聞いたら(笑)。口説くときのやり方やん。

──六甲山は本当なんですね。

盛山:ホンマです。

リリー:しかも一回じゃないですよ、何回か行ってました。

盛山:当時、夜景マニアやったんすよ。

──男友達に夜景を見せたいって、あんまりならなくないですか?

盛山:僕はなるんですよ。

──ロマンチックです。

盛山:夜景見せたいっていうか、夜中までの道中が好きで。目的地はどこでもよくて、それが六甲山なだけであって。いや、気持ち悪いか。

──(笑)。

盛山:山登ると、ちょっと肌寒かったりするじゃないですか。その変化、非現実が楽しかったですね。生駒行ったり、信貴山登ったり、リリー以外の同期芸人とかともいろんなとこ行きましたね。

盛山の遅刻ショック療法

──ケンカはされたことありますか?

盛山:ケンカはないかぁ。

リリー:確かに。大人になって組んだからなぁ。

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──過去に一度解散されたとのことでしたが、理由はケンカではなかったんですね?

盛山:それは、僕が遅刻癖エグかったからです。……今でもちょっとエグいですけど。最近、自分らがMCさせてもらってた大阪の番組の最終回、9時新大阪集合だったのに、9時半に品川で起きました。最悪やったよな? 伝説の遅刻です。

──中谷さんのように、飛びたくはならなかったですか?

盛山:このまま僕のこと知らない土地行って、海の見える白い家でひっそりと死ぬまで暮らそうと思ってました。芸人辞めたろうって。

リリー:そんなん思ってたんや、分かった瞬間(笑)。

盛山:でも、リリーは怒らないですからね。

リリー:まあまあ、しゃあないなって思いますね。人間ですから。

盛山:某ショッピングモールで「見取り図がやってくる」っていう僕らだけの営業が、11時開演だったのに11時に起きたこともあります。芸人じゃない司会者さんが30分ぐらい繋いでくれてて、その時はちょっと(リリーが)怒ってはりましたね。

リリー:それは正直、吉本の営業担当の人に「見取り図、このままやったら悪い噂立って仕事減ってまうから、リリーから言え」って。

盛山:正直、大阪の番組の遅刻より、この営業のほうが尾を引きましたね。

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──今後の営業のお仕事に?

盛山:いや、司会者さんがめっちゃスベってはったんで(笑)。

──(笑)。

盛山:それは冗談ですけど、すごい申し訳ないなって。芸人が3、4組いたら、持ち時間を伸ばしたり順番を入れ替えたりできるんですけど、それもできなかったし……。ショック療法じゃないですけど、あれからしばらくは遅刻なくなったよな。

リリー:もう6、7年前か。

盛山:それくらい前だから、今よりも人気なくて「こんな繋いでたのに、出てくんのお前らかい」ってなるし……もう居た堪れなかったですね。急いでタクシーで向かったんですけど、道中「このまま大阪湾突っ込んでくれへんかな」って、運転手さんと一緒に沈んでいきたいと思いました。

──道連れ(笑)。

盛山:運転手さんには申し訳ないですけど(笑)。迷惑をかけてしまいました。

とにかく楽しかった七年前と、それぞれの今

──マンゲキ設立当初である七年前の見取り図さんと、今の見取り図さん。それぞれ漢字一文字で表すとしたらなんでしょう?

盛山:七年前は「糞(フン)」ですかねぇ。遅刻も多かったし、借金しまくってたし。

リリー:でも楽しかったよな。金はないけど、めっちゃ楽しかった。

盛山:毎日はめっちゃ楽しかったんですけど、糞みたいな生活を送ってましたね。あの当時、糞のほうがまだいい生活してんちゃうかって。でも、お金はなくてもとにかく楽しかったから綺麗な糞でしたね、自分が糞なことに気づかず。

──リリーさんにはあまり「糞」みたいなイメージがないように感じます。

リリー:(盛山には)「糞」のイメージあったんですか?(笑)

盛山:糞前提で話進んでた?(笑)

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──いえいえ、借金だったり遅刻だったり、そういうイメージのお話です(笑)。

盛山:彼はそのへん堅実ですよ。

リリー:人生で親にしかお金借りたことないですね。すぐに返しましたし。僕はただただ毎日楽しかったから、「楽」ですね。

──では、コンビではなくお一人ずつの漢字にしましょう。それぞれ、現状の自分を表す漢字は?

盛山:僕は「泥」ですね。泥臭くやってるんで。

──なんだか、どちらも土系の……(笑)。

盛山:たしかに、全部汚くなりますね(笑)。天才じゃないんで、泥臭く行くしかないというか。もう30歳半ばなんでね。関西臭もキツいし、泥臭いでしょ?

──最近、盛山さんのお顔が疲れ過ぎていて、心配な時があります。

盛山:えぇ? それはよくないですね、プロとして(笑)。

──単独の頃が特に……少し表情が違って見えました。

盛山:正直、今年の単独はホンマにヤバかったっす。危なかったです、本当に。多分顔に出てましたね、気を付けないと(笑)。

──でも、それもファンが応援したくなる姿だと思います。

盛山:いやいや、でも泥臭く頑張らせてもらいます。スマートには立ち回れないんでね。お姉さんは?

リリー:お兄さんや。うーん、なんですかねぇ……。

盛山:「十」やろ、麻布十番の「十」。

リリー:いや(笑)。僕は逆に今、一番「素」かもしれないですね。タレントさんとかを見て思ったんですよ、何か演技してもバレるなって。タレントさんって、みんな強烈じゃないですか。芸人よりも個性ある人が多い。こないだ会ったブリアナ・ギガンテさんとか、あんな方がウヨウヨいる世界じゃないですか。だから変にキャラ作ったら、逆にやっていけないなって。

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──バラエティに出るタレントさんって、より個性がある人が選ばれていますもんね。

リリー:確かに。化け物だらけですよ。

──では最後に、改めて他己紹介をお願いします。

盛山:リリーはキン○マがものすごいデカいんすよ。バスケットボールぐらいあって。いや、マジでマジで。僕初めて見た時、トラベリングしそうになりましたもん。

リリー:なんで反則すんねん。

盛山:レイアップしそうになった。

リリー:ちぎれるわ。

盛山:だから、「朝に強いキン○マの獣」ですね。

リリー:僕は「包」っていう漢字ですね。……理由は色々、まあ皆さんの想像にお任せしますけど。

盛山:きたねえインタビューやで(笑)。ほんで、なんで一人だけまだ漢字一文字やってるんや。でもまあ、懐の広さとかそういうことやんね? 包み込むようなね?

リリー:そういうのも含めての「包」でお願いします。各々の「包」があるんで。

盛山:すいません、アイスピックないですか? このまま眼球にガンッていったろうかな。

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■見取り図ディスカバリーチャンネル
【密着動画】〇〇の撮影について行きました

■見取り図プロフィール
盛山晋太郎(左)、リリー(右)のコンビ。
2007年結成。盛山晋太郎の特技はラップ。リリーの特技は即興似顔絵。
・2018年12月 MBS「オールザッツ漫才」優勝
・2019年1月 第四回上方漫才協会大賞 大賞受賞
・2018〜2020年 M-1グランプリ 3年連続決勝進出

見取り図INFO

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取材/佐々木笑
撮影/TOWA
企画・編集/いとう

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