第2回『マンゲキ×神保町 東西グランプリ』優勝! フミのコンビ結成のきっかけは、略奪!?
「今はバリアフリーな階段を登っている感じ」
――第2回『東西グランプリ』優勝おめでとうございます。大阪から神保町に乗り込む形になりましたが、アウェイでのネタはいかがでしたか?
吉永もーりしゃす(以下、吉永):その日、寄席の方も2回出させていただいて、その後に『東西グランプリ』だったんですけど、初めて東京でネタをやらせていただいたのですが、初めてにしては温かく迎えていただいた感じがしました。思ってたより、やりやすかったなという感じです。
――神保町よしもと漫才劇場はどんな劇場でしたか。……その前に、もういっちょ!とん平さんは何とお呼びしたらよいでしょう?
もういっちょ!とん平(以下、もういっちょ!):もういっちょ!でも、とん平でも、何とでも(笑)。
――では、とん平さんとお呼びします(笑)。改めて、とん平さんは神保町よしもと漫才劇場はいかがでしたか?
とん平:大阪のマンゲキよりもちょっとキャパが狭いので、笑い声がダイレクトに届く気がしました。距離感がちょっと近い。ただ、マンゲキは満員のときにウケたら笑いが波のように来る感じですね。
――『東西グランプリ』はいかがでしたか。
とん平:行ったメンバーが、僕たちと先輩のカベポスターさんと後輩のうただという、結構渋いメンバーで。カベポスターさんは『ytv』(『漫才Loversスペシャル 第11回ytv漫才新人賞決定戦』)で優勝されていますが、パッとした華やかなメンバーが揃ってるわけでもなく……(笑)。『東西グランプリ』の平場では、向こうの団体芸に圧倒されましたね。正直、チームとしては完全に(大阪の)マンゲキは負けてました……。この3組は前に出るタイプがゼロという状態で。サッカーでたとえるならフォワード不在みたいな。ディフェンスだけ、センターバックだけで戦った感じですよね。その中でカベポスターさんがちょっと引っ張って、フォワードの方に出ていってくださったのですが、神保町のメンバーに圧倒されましたね。
――『東西グランプリ』でも優勝して、最近は上り調子という感じですか?
とん平:そうですね、下ってはないんですけど、ひく~い、バリアフリーな階段を登っている感じですかね(笑)。低いとはいえ、登れている感覚はあるので、それはいいことかなと思います。
――登りだしたなと思うきっかけやタイミングはありましたか?
とん平:やっぱり僕たちが出番をいただけるようになったのは『Kakeru翔GP』の優勝が一番大きいと思います。
吉永:そうですね、『Kakeru翔GP』優勝を1回、2回、3回と続けていたら、大阪では自然と「何かおるな」って思われると思うので、それでちょくちょく「フミ」っていう名前を聞くから、「どんなもんかな?」っていうので、見ていただいている部分もあると思います。
――手ごたえも感じますか?
とん平:お客さんの見てくださる目が変わってる感じはありますね。
吉永:少し受け入れられてる感じがします。「誰やねん、こいつ」という始まりから、「ちょっと名前を聞いたことあるな」からの始まりに変わって、お客さんの背もたれの感じが違うように思います。ちょっとずつ背もたれから背を浮かせてくれているのかなって感じですね。
とん平:劇場に最初に上がった直後のグランプリは、もう即行で『Kakeru翔チャレンジバトル』(以下、『チャレンジバトル』)という下位の方に落ちてしまって。そのあと、すぐコロナ禍になって劇場が閉館したんです。5ヶ月ぐらい空いて、7月にまた『チャレンジバトル』の入れ替え戦に出なきゃいけなくなったのですが、そこで何とか優勝して残れて。なんか知らないですけど、8月はその勢いで『Kakeru翔GP』で優勝できたんですよ。こっから急に変わった感じがあります。個人的には今、すごくホームを感じてます。やっぱ初見さんがいらっしゃるライブとはウケ方が変わってくるので。ここからはネタを深く作っていかなあかんやろなっていう感じですかね。まず市民権を得ることに必死でした。
「才能の原石を潰している」と言われ…
――フミとしての初舞台は覚えてますか。
とん平:初舞台かどうかは覚えていないんですけど、ほんまに初期ぐらいに出たライブで、信じられへんぐらいスベって。僕らは元々別のコンビだったんですよ。で、二人で組んで出たオーディションライブで漫才をしたんですけど、すごくスベって。作家さんからのダメ出しがあるんですけど…。
吉永:作家さんが僕の方だけ向いて20分間ぐらい、「この才能の原石をお前が潰している」みたいなことをボロクソ言われたんですよ。
とん平:僕が前に組んでたコンビがNSCの中では上位やって、吉永が組んでたコンビも面白かったんですけど、解散とか繰り返してて、そんなにまだ世に出てない状態で。僕にも「なんでこんなヤツと組んでんねん、何をしてんねん」ってめっちゃ言われて。まあ、思い返せば、あのときやったネタも荒々しかったので、確かに言われてもしゃあないという部分あるんですけど…。
吉永:ほんまにあれは悔しかったですね。悔しすぎて、その晩にLINEしたんちゃうかな? 「マジでごめんな」みたいな。
とん平:そうやったっけ? ただ、そういうことは全コンビが経験していることだと思うので……。まあ、その2年後ぐらいですかね、ちゃんとウケたときはウケたときで、同じ作家さんから「初めてお前らで笑ったわ」って、厳しいながらもちょっと認めてくれるようなことも言ってくれたりしたので……。
吉永:ただ未だに僕は会ったとき、ちょっと緊張しますね(笑)。
恋愛とコンビ結成、どちらも強い押しが決め手?
――お二人は別々のコンビを解散されて、2017年にフミを結成されました。どういう経緯で相方に選ばれたんですか?
とん平:これがちょっとね、解散したというよりかは、明確に言うと略奪みたいな。
吉永:そんなことないです。
とん平:いつも「そんなことないです」って言うんですけど、僕が前に組んでいたコンビ自体はNSCから順調で、首席候補みたいな感じで。結局、主席はオフローズになったんですけど。ただ、ちょっとこのコンビでは限界あるかもなあって、順調ながらもそんなふうに思ってたんで、解散しようかなあって考えてたんですよ。別に吉永とは関係なく。それを聞いたのか、たまたまのタイミングなのかわかんないけど、先に吉永のコンビが解散したんですよ。で、「解散を考えてるんやんな?」みたいな、「もう解散して俺と組んでくれ」みたいなLINEをめっちゃ送ってきて。それがもうほぼ毎日のように続いて。
吉永:いや、そりゃ誰でもそうでしょう。だって、好きな人がおって、その人が付き合ってて、別れるかもみたいな噂を聞いたら、それはLINEを送るでしょ。僕、待ってる時間がもう、モヤモヤするんですよね。
とん平:たまにインタビューを受けた時に、こういう話をさせてもらうんですけど、手に入れるまでほんまに頑張るんですよ。僕も解散も考えてたし、そんだけ押されたから吉永と組むか……と思って、「じゃあ、これぐらいのタイミングで解散したら、とりあえずユニットやってみようか」みたいな話をしたんですよ。それは一歩前進じゃないですか。そしたらそれはそれで、吉永が解散までの期間を待てへんくて、ずっと「ほんまに解散するやんな? まだ?」みたいなLINEを送ってきて。もう、毎日、毎日。で、いざ、解散しました。組むってなってからはもう……塩対応ですよ。
吉永:塩対応じゃないですよ。
とん平:もう自分のものになったので。
吉永:塩対応ちゃうやん。
とん平:確かに誇張して言ったけど、「手に入れるぞ!」の熱量がなくなった。これが恋愛もそうなんですよ。たまに吉永から聞くんですけど、全く同じことしてるんですよ。好きな女の子に対してガンガンガンガン行くけど、付き合って、何かうまくいかなくなって。付き合った期間の最長が3、4ヶ月とかなんですよ。
――割と短い。
吉永:そうですね……、手に入れたんでね。……って、ちょっと待ってくださいよ。これ、『月刊芸人』の取材ですよね? 『グータンヌーボ』的なことではないですよね?
――(笑)。だけど、コンビは5年も続いて。
吉永:そんなヤツが5年組んでるってことは、それはもう愛ですよ。
とん平:これはほんま、俺やで。僕、めっちゃ長いんですよ。付き合ったりしたら。まあ、恋愛してるわけじゃないんで。コンビなので(笑)。ただまあ、コンビとしても僕が一番長いっすね。
ロジカル×ダイナミズムから生まれるもの
吉永:まず、解散を1回も考えたことがないんですよね。まったく頭によぎらない。解散がよぎらない理由としては、助けてもらってるからですかね。
――助けてもらっているというのは?
吉永:さっきの「受け入れられる」みたいな話に少しだけ戻っちゃうかもわかんないんですけど、初めの頃の僕が考えるネタはお客さんに結構、押し付ける系、「汲み取って」みたいな感覚だったと思うんですけど、こっち(とん平)は、ずっとネタを作ってきてる側で、僕のネタを修正してくれるというか。結構、学ぶことが多いですね。
とん平:吉永はとにかく自分が面白いなって思うものをそのままバン!ってぶつけるようなタイプですかね。なので、伝わらんやろうなっていうところは全部、「こうした方がいい」とか言いますかね。
吉永:僕は今までずっとそうやったので、伝わらないって言われると「うん?」ってなるんですけど、説明されたら「そうか」って。納得したうえで舞台でやったら、反応が違うんですよね。修正してもらったらウケたりして。
――ネタ作りはどのようにされているんですか?
とん平:僕らは結構、ネタ作りに変遷があって、結果的に今の作り方になってるんですけど、まず、僕が丸々考えてくるか、吉永が丸々考えてくるか。もちろんそれに対してお互いに意見を出し合ってブラッシュアップするんですけど。もう一つは、吉永が出してくれた案を元に僕が筋を考えてくる。なので、ネタによっていろいろキャラも変わってくるところもあるかなと思います。
――ファンの方は「これは吉永さんが作ったネタ」とか、わかりますかね。
吉永:どうでしょうね。音響さんとかには、どっちが作ったか、すぐばれますね。
とん平:確かに、ネタの色合いが違う。
吉永:僕は単独ライブの3、4本目みたいなネタを結構作ってくるんですよ。
――マニアックな。
吉永:そうですね(笑)、ちょっと大味みたいな。
とん平:おもろいけどウケへんでみたいなものは結構、多いですね。
吉永:大味を1回食べてもらって、もういっちょ!に。「こんなんやりたいねんけど」って味見してもらって、「いや、世に出すんやったらのこっちの方がいいんちゃうみたいな」ことを言ってくれて。それで「助けてもらってる」っていう話にも繋がります。
――とん平さんはどういう作り方なんですか?
とん平:僕はどっちかって言ったら理詰めですね。それがうまくいけばいいネタになるんですけど、悪い方向に出ると、こじんまりしたものになりますね、自分の感覚では。ただ、どっちも良し悪しがあって。吉永の良い点は何にもとらわれずに自分の面白いものをやるというところがあるので、その方がオリジナリティが絶対に出ますし……。何やろな……、国語とか苦手やった? そんなことない?
吉永 国語はあんまり良い点数を取ったことがない。体育とかの方が好きやったな。
とん平:ちょっとそういうのが見えるんですよね。自分の中の面白さを伝えきれてないみたいな。僕は僕で、伝えることを重視する人間やったんで、逆にこじんまりしやすい。ダイナミックにドーンって出す勇気がそこまでない。で、こっち(吉永)はあるけど、言語化することが少ない。そこら辺のバランスは、今も模索中な部分はあります。
――ネタに関しては、コントと漫才、どっちかに重点置こうとか、そういうことは考えてますか?
とん平:どっちもやりたいという気持ちもある上で、僕はもともと漫才をやっていて、こっち(吉永)はコントをやっていて。個人的には吉永はコントの方が向いてるなとは思ったので、今は主にそれをするようになっていったかなっていう感じですね。あと、先に世に出る手段としてはコントやと思います。
次なる目標は大阪の伝統的コンテスト優勝!
――改めてコンビとしての近い目標と未来の目標を教えてください。
吉永:今は、目先の目標としては『ABCお笑いグランプリ』(以下、『ABC』)を獲りたいです、正直。
とん平:そうですね。僕も完全に『ABC』優勝。正直、それしか考えてないですね、今年は。それができれば、後は絶対ついてくるので。芸歴10年目までの間は『ABC』を獲ることが一番近いかなと思います。売れていくためには。『ABC』は劇場メンバーじゃないとエントリーできないので、去年、初めてエントリーできたんですけど、動画審査で落ちて。
吉永:今年は決勝には行きたいと思ってます。
とん平:『ABC』は伝統が長いので、影響力がすごくでかいなと思います。それこそまずは、よしもと漫才劇場で市民権を得て、自分たちのやりたいことを織り交ぜていって、どんどん進化させていって、『ABC』で結果を出して。それで今度は、もっと外に向けての市民権を得るためにステップアップしたいなって感じです。
吉永:少しですけど今は劇場で結果を出せて、劇場に来てくださる人には存在を知られ出しているかなと思うんですけど、今、一番微妙な状態っていうか、劇場内だけで知られている状態なので、もっと外で結果を出したいです。外で結果を出して、面白いと思われたいですね、世の中の人に。
――ちなみに「僕たち、こんなコンビです」と自己紹介するなら、どうお伝えしますか?
とん平:どういうコンビやろ…。人間的なとこで言うと、どっちも家族構成は末っ子なんですけども、吉永が末っ子の末っ子で、僕が末っ子のお兄さん。吉永は末っ子の中でも末っ子の感じがします。僕も末っ子の部分はめっちゃあるんですけども、吉永の前では末っ子になられへん。普段の関係性はそんな感じです。
吉永:……。
とん平:こうして黙り込むことはよくあるんですよ。僕もよくわかんないんですけど、言いたいことがあるけど言わないのか、ほんまに何も考えてないか。どっちかです。
吉永:え~、僕たちは、青です。
とん平:これ、何も考えてないです!
フミ INFO
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ライター/岩本和子
撮影/木村華子
企画・編集/いとう
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