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劇作家女子会。のQuest① 女子会。の 「ゲリラチラシ」活動について(前編)

劇作家女子会。は、これから演劇をしていく若い人たちへ、お便りを出していたことがあります。
こうして書いても「なにそれ?」「そんなお便りだしてたっけ? 受け取っていたっけ?」と思われるでしょうし、そもそもお便りの存在を知らない方がほとんどだと思います。

私たちのお便りは手紙ではなく、「ゲリラチラシ(と私たちは呼んでいました)」という形で、劇作家女子会。の名前を明かすことなく、いくつかの演劇公演のチラシ束に折り込む形で配られたものだったからです。

「ゲリラチラシ」1通目

【ゲリラチラシ1通目の文章】
これから演劇をしていく若い人たちへ(1通目)

こんにちは。突然のお手紙失礼します。演劇やってる大人です。
皆さん、これから演劇をしていく中で、セクハラやパワハラにあうかもしれないし、するかもしれない。今は何がパワハラでセクハラかわからないかもしれないけれど、今日は被害の話だけしますね。

例えば、飲み会で肩を抱かれたり、お酒をつがされたり、無理して飲むことを強制されたり、あるいは特別な稽古と言って2人きりで呼びだされたり、セックスしたらオーデションに受かるんじゃないかと思わされたり、性経験をからかわれたり、稽古だからと理不尽なことを強要されたりするかもしれない。公演のあとに、知らない人に許可なく写真をとられたり、許可なく手を握られたりなんてこともあるかもしれない。これらは全部セクハラパワハラ被害です。
そんなときに「まとめてここに相談したらいいよ!」という場所はまだ演劇業界用意できてないんだ。ごめんなさい。(注釈:この記述はチラシ配布当時の状況です。2022年現在はいくつかの窓口が公開されているので、後編の記事の終わりでご紹介します)

でも何か起きたら、被害者に泣き寝入りさせる業界じゃダメだと思うし、何か起きないようにしないといけないと思ってる。色々なところで大人たちは動き出してはいるけれど、仕組みが作られるのはまだ時間がかかるかもしれない。だからごめん。今は自衛もしてください。証拠あるの大事。録音アプリとかスクショとか活用しよう。あと信頼できる人に相談してみてほしい。

あなたが悪いんじゃない。ともかく「私、俺が悪いんじゃない」という気持ちは持ち続けていてほしい。大人がんばる。だれもが尊重されながら、のびのびと演劇ができるのがふつうであってほしい。君たちも同じ社会で一緒にそんなふつうを作ってくれるとうれしーなー。よろしく。がんばろう。がんばる。じゃあまたね。

演劇やってる大人より

「ゲリラチラシ」2通目 表面


ゲリラチラシ2通目 裏面

【ゲリラチラシ2通目の文章】
これから演劇をしていく若い人たちへ(2通目)
(表面)
こんにちは。演劇やってる大人です。突然のお手紙もこれで2通目ですね。今回は、これから演劇をしていく皆さんに「演劇の現場でやっちゃいがちなハラスメント」について知っていて欲しいと思ってお便りしました。
以下は、私たちが間近に見てきた、体験してきた、あるいはやってきてしまったハラスメントの一部です。

・事前に俳優に同意をとらず、キスシーンや露出を強要する
・「演技をよくしたい」から、稽古場で俳優を怒鳴りつける
・怪我をしている俳優に「作品のため」と言って無理な動きをさせる
・「作品のため」といって、相手が秘密にしたいこと、言いたくないことを無理やり話させる

「よい演劇作品を作ろう」という思いから、これらのハラスメントが生まれてしまうことがあります。こうしたハラスメントをする人の多くが、自分自身のもっているパワー(主宰である、年上である、特別な技術を持っている等々)に無自覚です。つまり、若い皆さんも、加害者になる可能性が十分にあるということです。
無自覚なパワーから起こるハラスメントには、他にもこんなものがあります。

・「若いから」「女性だから」「新人だから」という理由で相手の話を聞かなかったり、言うことを聞かせようと圧力をかける
・仕事をしないことをほのめかすことで、相手を思い通りに動かそうとする
 EX)「お前に照明あてないぞ」って脅された。相手役に「あのセリフ言わないぞ」と言われた
・自分と違う演劇観をもった相手の人格を否定する

また、以下は座組の連帯感を高めようとした解きにおこりがちなハラスメントです。

・親しみを表現するつもりで、相手の体に触ったり、ハグしたりする
(触られるのが苦手な人もいるよ!)
EX)舞台袖で突然抱きつかれてこわかった
・「同じチームとして結束をふかめよう」と、相手が食べたくないものを食べさせる、飲みたくないものを飲ませたりする
EX)お酒を飲まされた、無理やり辛い物を食べさせられた

(裏面)
いかがでしたか?
作品のため、芸術のために一生懸命になるとき、ぜひ一度考えてみてください。
「私はいま、一緒に演劇をつくる仲間を使い捨てていないか」
「相手の生命活動に敬意を払えているのか」と。

そして逆に、自分が被害者になりそうなときには、ぜひ思い出してください。
「作品のため、芸術のために、どれだけ自分を行使するか、燃焼するかは、自分自身で決めていい、ラインをひいてもいいのだ」と。
私たち大人も、決して完璧には出来ていません。でも、考えながらやっていこうとしています。
がんばれ。かんがえる。
変えていくぞー!ちょっとずつ
じゃあまたね

演劇やってる大人より

劇作家女子会。は「死後に戯曲が残る作家になる」を目標に集結した、坂本鈴、オノマリコ、黒川陽子、モスクワカヌによる劇作家チームです。 演劇公演やイベント、ワークショップ、noteで対談記事を公開する等の活動をしています。 私達をサポートして頂ければ幸いです!