【劇作家女子会。のQuest①対談 綾門優季さん(後編)】演劇界に溝を作らず、ルールを作っていく

劇作家女子会。のQuest①として、劇作家女子会。は、演劇の現場で使える、オープンソースの(web上などで公開され、誰でも自由に利用できる)ハラスメント防止のためのガイドライン作りを目指しています。
色んな劇団で、或いは現場ごとに自由に使用ができるガイドライン作りのために、私達は何を知り、何を考え、何を実行していくべきか。
その答えを探すために、私達はこれまでに、演劇の現場で活動している様々な方々からお話を伺い、思考を重ねてきました。
このQuestでは、これまで私達と話し合ってくれた方々との軌跡を、対談記事として順次公開していきながら、ハラスメント防止のためのガイドライン作りを目指していきます。 

劇作家女子会。のQuest①、青年団リンク キュイ主宰、劇作家の綾門優季さんをゲストにお招きしての対談記事の後編です。

記事の前編はこちらから→https://note.com/gekisakujoshi/n/na02329c751e7

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左から、モスクワカヌ、オノマリコ、綾門優季さん、坂本鈴。(撮影:黒川陽子)


■通報先のいない被害者と会員制のバーみたいなものって相性がすごく悪いんです

綾門 ちなみに劇作家女子会。は、セクハラの相談窓口になることは考えているんですか?

坂本 それはね、難しいって話になってる。

モスクワカヌ 公の通報先をリストアップしてお伝えするって案は出たけどね。ただ、それを紹介することにも責任はともなうから…

綾門 そうですね。これは、最近の僕の個人的な悩みなんですけど、セクハラ被害を聞いたとして次のアクションが難しいなと。

オノマ 私、最近思ったんだけど、セクハラ被害について被害者本人から相談を受けたとき、その被害者をとりあえず劇団員にしたらいいんじゃないかと。

坂本 お、どういうこと?

オノマ 被害者に必要なのはとりあえず後ろ盾じゃない。だから全員劇団員にしたらいいんじゃないかな。私が主宰している趣向に入れるとか、劇作家女子会。に入れるでもいい。もちろん、入るかどうかは、本人の意向次第だけど。

綾門 男子が被害を受けたらどうするんですか。

オノマ 男子も入れる。

綾門 あ、劇作家女子会。に? 男子も?

黒川 意外と、劇作家女子会。は性別にこだわらないんです。これまでにも男性の劇作家を入れようかって話もあったし。

綾門 へー…

モスクワカヌ リコさん。実際に似たようなことがあったのを知っているけど、リコさんの場合、その時その時で一人か二人までが話を聞いたりケアをしたりの限界だったじゃない。

オノマ それは、そう。

モスクワカヌ 被害にあった人と向き合えるかとか、その人との相性もあるだろうし、とにかく劇団員にするっていうのは現実的とは思えない。

坂本 うん。ちょっと協議だなー。実際、名前を貸すだけでなんとかなるってわけじゃないでしょ。

綾門 えっと、被害者を劇団員にしたとして、次にどうすればいいんですかね。

オノマ 加害した人に文句を言う。うちの劇団員に何してくれるんだって。

綾門 加害者が劇団員だったら主宰に申し入れですね。

坂本 主宰がやった場合は…

オノマ 制作さんに申し入れ。

坂本 制作さんと主宰がぐずぐずだった場合。

綾門 制作と主宰がぐずぐずはあり得るなあ。

坂本 さらに劇作家女子会。の方が立場が弱い、むこうの方がはるかに大きな劇団とかいう場合。

オノマ 証拠を集めて裁判かな。

坂本 でも被害者本人はそんなに大ごとにしたくない場合。

オノマ 相手より大きい劇団の劇団員にする。

坂本 パワーね、やっぱりパワーなのね。

綾門 あの、そのパワーを増していくやり方、どうにかなりませんかね。

黒川 発想がマフィア。

綾門 それ、つきつめるとアウトレイジみたいになっていくんで。

坂本 弱い人が弱いまま生きていけるようにしたいよー。

オノマ たしかに。気がついたらパワーゲームをしてしまっていた。反省する…。でも、「弱い人が弱いまま生きていける」が理想だけどさ、まだ制度が十分に整ってないから、とりあえずドラえもんの居ないのび太にドラえもんをつけたい。まぁ、ドラえもん程にはなれないですけど。

綾門 なれたとして、ドラえもんが後ろについたのび太が凶悪なこともありますから。やっぱり慎重に。ただ、「あそこに相談します」っていうだけで加害者への牽制力になるかもなってことは考えます。勉強会(※9)も、そういう受け皿になっていけないかなって、あくまで個人的にはですけど、思うんです(※10)。あの人もあの人も知ってます、っていうだけでも割としんどい。

モスクワカヌ 勉強会は人数も多いしね。

綾門 でも活動を広げていくってことは諸刃の剣で、加害性のある人をメンバーにする危険もある。過去にハラスメントをした人を、僕たちが知らずにメンバーにしてしまう。そうすると被害者は一転、相談がしにくくなりますよね。

坂本 それなら、会員制のバーみたいにしておくのが安全なのかな。

綾門 会員制のバーみたいにしたらしたで、やっぱり有名な人が有利なんですよ。紹介者をすぐに探すことができるから。でも舞台業界で問題なのは、市原幹也氏のケース(※11)がわかりやすいですけど、演劇を始めたばっかりの、人間関係的にはどこにも接続してない若い人が被害にあうケースも一定数あるわけですよね。そして会員制のバーみたいなシステムだとそういう人が入れないわけですよ。でもそういう人がアクセス出来たほうがいいんですよ。市原氏のやつも、被害者自体は多かった。でも明るみに出るのが遅かったのは、そういう通報先に心当たりのない若い人たちを主に狙っていたから。

モスクワカヌ なるほど。

綾門 通報先のいない被害者と会員制のバーみたいなものって相性がすごく悪いんです。だから色々なリスクはあれど、個人的には活動をなるべく多くの人に開いていった方がいいとは思っていて…あ、モスクワさんはTPAMでの発表を見に行ったんでしたっけ。

モスクワカヌ そうです。

綾門 ああいう場所が定期的に設けられることが重要なんじゃないかと思うんです。そういう場が年に一回か二回あって、外部の人が行こうと思えばいつでも接続できるってだけでも助けになるんじゃないかなと。通報先のいない人をすくいあげることができないかな、と。

モスクワカヌ 勉強会自体も、舞台芸術に関わる様々な人に開くことを目指して活動していますものね。

■セクハラの体験型演劇とかやればいいのかな

綾門 本題に戻って、ハラスメント防止のガイドライン作りのことですね。青年団の規定なり、ロイヤルコートシアターのガイドラインなりを参考にした上で、あとは想定される事態をどこまでカバーするのかですね。あんまり短いと機能しないんですよ。

モスクワカヌ うーん、でも長いと読めないんですよね。

オノマ ははははは。

綾門 人によるよ!

坂本 でも、読めない人もいるっていうことだよね。

モスクワカヌ ロイヤルコートシアター読めなかったんですよね…。

オノマ ロイヤルコートシアターのガイドラインは、冒頭で「心構え」のような話が続くんだよね。「自分の行動に責任をもつ」とか「パワーを自分より弱い人に振るわない」とか「(ハラスメントを受けたことを)恥だと思わず助けを呼ぶ」とか。

坂本 それをみんなで共有するのはなかなかハードルが高いよね。書いてあるのはとても大切なことだけど、もうちょっと具体的なところに落とし込みたいというか。

オノマ 抽象的だと、読みにくい人は出てしまうよね。あれかな、セクハラの体験型演劇とかやればいいのかな。これがセクハラで、ここできっぱり断りましょう、みたいな。たしかパワハラ版を子供鉅人さんがやってたんだよね(※12)。ブラックな会社に貴方は入っていて、こんだけブラックなことが行われます、っていう体験型演劇。

綾門 それのセクハラ版かあ…

オノマ うーん、でもそれを体験させるのがセクハラじゃねーかみたいなところもあるけれども。

黒川 「動画で簡単、これがセクハラ」みたいな、You Tubeでありそうなのも良いかも。

綾門 そういえば、性行為の同意をとることについて、紅茶をすすめる方法に例えて説明する動画(※13 https://www.youtube.com/watch?v=KXgaD-0Ara8)ありましたね。あれくらい簡潔なものだったら、わりとヘトヘトにならずに最後まで観れるような気がします。あれはあれで簡略化し過ぎていて、その場でだけ合意が取れればそれ以降問題ない、とも解釈出来てしまう危うさはあるにしろ、なによりわかりやすい。

オノマ あれよかったよね。

モスクワカヌ 絵柄もかわいかったし。

オノマ 絵柄かわいいの結構重要な気がする。

綾門 あるいは、簡単なマニュアルも作って、中高生とかが読めるようにして…

モスクワカヌ 中高生が読めるようにはしたいですよね。

坂本 もしくは漫画とか。

オノマ あー、そういうのは考えてなかったなぁ。なるほどね。

綾門 誰にでも分かりやすい、どんな団体でも使いやすいものにするって意識は、たしかに大切ですね。そうしないと、意識の高い人だけがどんどん進んで、そうでない人たちが離れ小島みたいになりかねない。そしてその離れ小島、わりと大きいみたいな。そっちが本島みたいな。

オノマ 私たちのガイドラインが、かえって演劇界の溝を深めないように気を付けなければいけないってことですね。

綾門 そう思います。僕は女性だけでセクハラについて考えるのも危ないと思っていて。どうしてもセクハラの被害者は女性が多いし、加害者は男性が多いし、実際ハラスメントおじさんはいっぱい居る。ただ、やっぱり男女前提で縛りすぎると、女性から男性への加害や、同性間で起きたもの、セクシャルマイノリティへの加害などを見落としそうになるし、何より男女で取り組んでいかないとお互いの溝を深めるなと思っていて、それは良くないんじゃないかと。セクハラをする人を「よく分からない生き物」「遠い存在」にして、自分と全く関係のない「敵」にしてはいけないと思うんですよ。自分と全く関係ないと思った相手、敵だと認定した相手を、それこそゴキブリを叩き殺すような勢いで叩ける人って、一定数いますけど。でも、SNSの向こう側に実際は人間がいるわけですよね。まったく理解できない相手でも、どうやら虫じゃなくて人間らしい。人間ってことは、加害者として糾弾された後の人生があるわけじゃないですか。ゴキブリなら出た瞬間パーンと叩いて捨てて終わりだけれど、そういうわけにも…

坂本 なんだか、ハラスメントする人をナチュラルにゴキブリに喩えて話が進んでいますが…

綾門 よくないですか。

黒川 人間をゴキブリって言うのは、あまりよくないかもしれないですね。

オノマ それ、ゴキブリに失礼じゃないか。

モスクワカヌ じゃあ、間をとって「G人間」としましょう。

オノマ それって間とってる? あとみんなゴキブリを悪く思い過ぎだってば。

綾門 まあ、便宜上「G人間」ということで。で、そのG人間が出た場合、出るたびにそのG人間を叩く、というやり方は、有効な解決策かというと怪しい。G人間が出にくい環境を整えることの方が大切だと思うんですよ。

■G人間を叩くよりも、G人間が出ない環境を作っていくことの方が大切

綾門 僕が青年団の規定をすごく良いなと思うのは、劇団という閉じられた世界ではあれ、G人間が出にくい環境を作っているところなんですよね。ゴキブリがよく出る場合は、いちいち叩くよりも、専用の薬剤を置くとか、家の掃除をマメにするとかした方が良い。

モスクワカヌ 部屋が汚いままだと何も変わらないよね。

綾門 「あそこ汚いんだな」で終わっちゃいますよね。「また出たの」みたいな。それを舞台業界に反映するとして、僕たちが「G人間が出たぞー」と頻繁に言ってたら、「やっぱ舞台業界って汚いんだね。掃除してないのね」って、外から見るとなる。ていうかもうなってる。

モスクワカヌ まあ、日本全体がまだまだ汚いお家という部分はあるとは思います。

綾門 あちこちで告発ありますしね。ガイドラインは、そういうG人間が出にくい環境づくりに役立つと思うんです。「本当はG人間の気質あるんだけど、罰がめちゃくちゃ下されるから、やばいと思って何も起こしてない奴」に罪はないんですよ。

坂本 それはそうですね。

綾門 考え方はいろいろありますけど、性根がG人間だったとしても、何もやってないなら別にいいとは思う。何もやってないのにそもそも誰がG人間かっていうことは事前にわからない。人狼みたいに、怪しい奴をとりあえず最初に殺しておく、みたいな発想は良くない。

坂本 性根がG人間である権利はある。

黒川 「内心の自由」みたいなことかな。

オノマ その気質が出るかどうかは、環境によると。性根や、気質をたたかないことは大事ね。私たちだって、考えていることだけで判断されると危ないもんね。

綾門 根本に立ち戻れば、危険思想じゃなくて危険行為でジャッジしていくしかないんですよ。

モスクワカヌ 思想までどうこうしようとすると、おかしなことになりますね。

坂本 でも、演劇って個性をいかした作品を創るところだから、やっぱり「ちょっと変でもしょうがない」みたいなのがさ、なんとなくまかり通ってきちゃったところはあると思うんだよね。

綾門 思想は変でいいんだが、行為をするな、ってことでしょ。作風のヤバさが行為の免罪符にはならない。

坂本 うん。そこがさ、ようやく追いついてきたみたいなところなんだろうなと思う。「行為も変でも仕方ない」みたいなのが10年くらい前までは横行してた気はするんだよね。で、その「思想は変でいいんだが行為をするな」ってのが少しずつ言われ始めてきて、でも青年団ほどは浸透してるわけじゃないっていうところですよね。

■みんな偉くなることに慣れてない

綾門 ガイドラインがあると、自分がうっかりG人間になるのも防げますよね。そもそもハラスメントについては教育の方もまだまだだし。セクハラはともかく、パワハラに関しては、みんな偉くなることに慣れてないってことが原因にあるような気もします。僕も含めて、自覚なくキャリアは上がってきちゃってる人が多い。

オノマ たしかに、パワーの持ち始めにパワハラが起きやすいみたいなことはある気がする。

綾門 たとえば劇作家でいうと、自分の戯曲を上演したくて、ユニットをもった。その時に、後々高校演劇や大学演劇の審査員になるとか、ハラスメントの規定を若い人に教えるとか、そんなことをあらかじめ想定して演劇始める人はあんまりいないわけですよ。でも、気がついたら何年か経って、違うポジションにいる。僕も10年後20年後、それこそ先輩よりも後輩の方が多くなってきた時、僕の攻撃的な発言でひーってなる若い人が一定数出ることを考えて喋らないといけないなっていうのは思います。今でもちょっといますけど、いうてまだキャリア10年未満ですからね。これからだんだんその差が深まっていくわけですし。

坂本 これは女性にも起こり得ることだよね。

モスクワカヌ どういうこと?

坂本 女の人って、自分がパワーを持ってるってことに気づきにくい面があるじゃない。私も過去の自分の振る舞いを思い起こすと、「あれってセクハラだったんじゃない? 私、加害者だったんじゃない?」って思い当たることがあるのね。でも、当時それを見逃していたのは、「私は女子だからやってない、加害してない」って意識があったからだと思う。

モスクワカヌ 女性は被害者になるものだってイメージがあるからね。

綾門 でもそれも、ガイドラインという目に見える形でルールがあると、起こりにくくなりますよね。青年団だって何か起きたときに「あれ、これ何の違反だろう…」って調べて、「あ、これか。これは違反だね」ってすぐにできることが、やっぱり大きい。

坂本 それいいなぁ。やっぱりそれ欲しい。自分が公演するときにも欲しいし、劇団員が客演するときにも欲しいし、若い子がこれから酷い目に遭わないためにも欲しい。

オノマ 自分が加害者にならないためにも。

黒川 出演交渉のときに、俳優さんが「これを使ってください」って出したりね。色んな使い方ができそうだよね。

■溝を作らず、ルールを作っていく

坂本 今日は参考になる話を色々聞かせていただいてありがとうございました。最後に、これからガイドラインを作っていく私たちに、伝えたいことがあったらお願いします。

綾門 さっきも少し話に出たことですけど、いかに演劇界に溝を作らずに進めていくかが肝だと思います。僕は、大学を卒業するのと同時くらいに青年団に入ったので、青年団のハラスメントのルールにもまだしもスムーズに馴染めたんですよ。新卒で入った会社に、たまたまハラスメントのガイドラインがしっかりあったようなものだから。だけど、うーん、あんまり世代論にはしたくないですが、人によっては、50代より上の方だと、途中で急にルール変更あったっぽいけど何?ちょっとついていけないよ、みたいな反応を貰ったことはあります。過去からのギアチェンジを急に出来ない、という見えないハードルがありそうなのは、ルールを整えることとは別件の問題としてある。まあ、青年団のルール徹底は、若い人だって人によってはギョッとしますしね。大学は大学で酷いところもあるから。急激に厳しくなるので。

オノマ たしかに。それまで所属していた団体によっては、カルチャーショックが大きいだろうね。

モスクワカヌ セクハラパワハラが、成功体験に結びついてる人もいるかもしれないね。

坂本 体罰が良いみたいなね。「俺はあのとき殴られたけど、そのおかげで今の俺がある」みたいな。

綾門 「良い体罰」を語りたがる奴、まだいますからね。

オノマ ハラスメントについては、それと同じようなことが起きている気はする。

綾門 だから、そういう人がいるってことを受け入れた上で、溝を作らずに、皆が納得できるルールを作っていくことが大切だと思います。以前読んだ『私たちにはことばが必要だ フェミニストは黙らない』っていう本に、ざっくり言うと「この本に書いてあることはセクハラに疎いおじさんに説明をする必要はない。ググれカスで済ませ」みたいな表現があったんです。言いたいことは分かる。たしかに説明義務はこちらにはない。分かるんだけど、現場しばらく一緒になることだってあるわけだし、実際問題ググれカスっていわれて、その意味も分からないおじさんだって居る。結果として、ググらないし、ググれない。

オノマ うん。ググれない。

綾門 たぶんそこで言っていることは、「努力もせず、こっちに知識を求めてくるんじゃねえ」っていうことだと思うんですけど。とはいえ、言われた側は戸惑い、そして、相手を理解しようとする前に喧嘩になってしまう。

坂本 相手を理解する前に喧嘩になるのはよく見るね。だからこそ、コストをかけて、精いっぱい対話をしようとしているフェミニストの人たちはすごく頑張ってるなとは思いますけども、同時に「知らねえよ。もうコストかけません」ってなるのも分かる。うーん、でもあと20年たって今の20代の人たちがおじさんになれば…

綾門 もうちょっと短縮したいっすよね。

モスクワカヌ 若くても、ハラスメント加害者になるリスク高い人はいますしね。

綾門 そうですね。世代のせいにするのもやっぱり違ってて、同世代でもヤバい奴はヤバいし。

モスクワカヌ 今はやっぱり意識の変革期というか、急にガッと変わろうとしてるから、それに対する反発も大きくて、一過性の祭りとして共倒れになるんじゃないかって危惧はある。なんとかいい感じにもっていきたいよね。

綾門 そうして慎重に進めていった上で、実際にガイドラインを使うにあたっては、「誰がいつどういうことをしたのか」、「その結果どういう処分が下されたのか」、「その処分は客観的にみて軽いのか重いのか」と、ケースを複数知っていくことが、今後を考えて行く道筋になると思います。ひとつひとつの事例を、しっかり検証していくということですね。

坂本 世代間が、そして男女が共同しながら、溝を作らないようにして進めていけるといいね。

黒川 ハラスメント被害も加害も起こりにくい、起こさせない演劇界づくりを。

オノマ そうだね。

劇作家女子会。 綾門さん、今日は本当にありがとうございました!


【文章中の脚注】
(※9)勉強会:亜女会とON-PAMの有志を中心に行われているハラスメントの勉強会のこと。綾門氏やモスクワカヌ等、亜女会、ON-PAM以外からも様々なメンバーが参加している。
(※10)綾門氏の個人的な会の今後についての期待であり、現時点で、会が個別の案件の解決や相談に関与することはありません。
(※11)市原幹也氏のケース:2017年、演出家の市原幹也が、事件当時女子高生だった女性にセクハラ行為をしたとしてSNS上で告発された。その後、同様の告発が相次ぎ、市原は罪を認め、謝罪した。
(※12)劇団子供鉅人の体験型演劇:2018年の勤労感謝の日に、株式会社人間が開催した『THE BLACK HOLIDAY(ザ・ブラックホリデー)』のこと。ブラック企業アナリストの新田龍氏監修の下、劇団子供鉅人代表の益山貴司氏が脚本・演出を担当した。
(※13)性行為の同意をとることについて、紅茶をすすめる方法に例えて説明する動画:イギリスの警察署が2015年に公開した動画 “Tea Consent” のこと。
英語版:https://www.youtube.com/watch?v=oQbei5JGiT8
日本語版:https://www.youtube.com/watch?v=KXgaD-0Ara8

■綾門優季さんプロフィール
綾門優季(あやと・ゆうき)
劇作家。青年団リンク キュイ主宰。青年団演出部。2013年、『止まらない子供たちが轢かれてゆく』で第1回せんだい短編戯曲賞大賞を受賞。2015年、『不眠普及』で第3回せんだい短編戯曲賞大賞を受賞。「坂あがり相談室plus」2018年度版!対象者として選出。急な坂スタジオWEBにて「余計なお世話です」連載中。 

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劇作家女子会。は「死後に戯曲が残る作家になる」を目標に集結した、坂本鈴、オノマリコ、黒川陽子、モスクワカヌによる劇作家チームです。 演劇公演やイベント、ワークショップ、noteで対談記事を公開する等の活動をしています。 私達をサポートして頂ければ幸いです!