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背なかあわせの彼らと綴る

こんにちは。『透露光過』にて百瀬の先輩・緒方と警察官・筒美を演じさせていただいた藤咲です。
初めて完本した台本を読ませていただいた時、当時は配役がほぼほぼ決まっている状態だったと記憶しているのですが、自分の役に抱いた率直な印象は「自分はこんな人にはなれないな」ということでした。
筒美は「おっさんっぽい感じの警察官」ということだったので年齢も職業も違う……というのはもちろんなのですが、年齢が近い緒方に関しても、自分からはかなり遠い存在に感じていました。仕事ができて、自信があって、でも愛嬌もあって、先生からの信頼も厚く、後輩にも慕われる。こんな素晴らしい人いる?もしこんな人身近にいたらファンになる未来しか見えない、こんなキラキラした強い人にはなれないな……という感じで。
ただ、台本を読み進め、彼女への解釈を膨らませていくうちに、その印象は変わっていきました。
彼女にも辛かった過去があって、でもそれを乗り越えて今がある。緒方の強さも輝きも、彼女自身の弱さの上に成り立っているものであると。
だからこそ、今苦しんでいる百瀬に優しい言葉をかけてあげられる、憧れの先輩でいられるのかもしれない。
そして、だからこそ百瀬にとっては、彼女が明るい光に見えるのかもしれない。
そう考えていたら、畏敬にすら近かったような緒方に対するイメージが、柔らかく、親しみやすいものになっていきました。
筒美に関して。
筒美としている間は、自分があの場を取り締まるような、仕切っているような、そんな気持ちでいました。
そんな堂々とした生き方ができるのは、きっと自分にそれなりに自信があるからだと思うんです。
そして、これは作中に描かれていないので私の解釈に過ぎないのですが、きっと筒美も長い時間の中で辛いことも、それを乗り越えることもたくさん経験して、その上で堂々と生きているんじゃないかなと思います。
私自身の中には、弱い部分がたくさんあると思います。そして、まだそれを乗り越えきれていないと思います。だから緒方や筒美のことを別世界の人間だと感じたのでしょう。
自分と彼らの最大の違いは、弱さを乗り越えて強くなれたかまだ乗り越えられていないか、ここにあると思います。
案外、壁を1枚隔てただけの、表裏一体、背なかあわせの関係なのかもしれない。
遠いように見えて、実は根元の部分は近いのかもしれない。
そして、人生のうちでほんの一瞬でも緒方として、筒美として、自分が尊敬する存在として舞台上で生きていた過去が、いつか私が弱さを乗り越えて、自信を得て、憧れに近づくのを助けてくれるかもしれない。
そんな気づきを得た新人公演でした。
もうすぐ大学生活での新たな1年ということで、この学びを生かして、もう少し前向きに、自信をもって生きていきたいものです。
プリズムの新人と呼ばれることもなくなるわけですし(怯)
大分長く語ってしまいました。ここまでお読みくださりありがとうございました。

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