TV番組『発掘!あるある大辞典II』打ち切り事件について

フジ系列 『発掘!あるある大辞典II』、放映前に内容が大手に漏洩(上)

PJニュース 2007年01月14日
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大手スーパーでは、夕方でも、納豆売場に商品が並ぶ。(撮影:穂高健一)

- 年明け早々に、「納豆狂想曲」とでもいうほど、スーパーマーケットでは納豆が品切れ状態だと聞いた。東京都内の板橋区、練馬区の10店舗ほどのぞいてみた。中小スーパーや零細の食品店は見事に品切れだった。店長のお詫びのPOPだけが目立つ。ところが超大手スーパーマーケットの納豆売り場となると、品揃えが良かった。

 埼玉県内の、ある物流センターに勤務するパート従業員から話が聞けた。「3日前に、トラック3台が納豆を満載してきました。センターはいま納豆だらけです」と話す。あらためて都内の上場企業の上位スーパーをのぞいてみた。トップ銘柄の『おかめ納豆』『金の粒』などが潤沢に並んでいる。店長の『納豆の品切れ』お詫びPOPすらない。

 フジテレビ系列の『発掘!あるある大辞典II』は前まえから「放送内容が事前に流通サイドに流れている」という噂があった。大手スーパーがそれらTVの放映情報を元に、該当商品を大量に買い占めている、という内容だ。このため、零細商店は影響をこうむり数日間、ときには数カ月に渡って欠品状態が発生しているのだ。

 このたび、納豆製造元のある食品メーカー(長野県・飯田市)が流通側に出した文書を入手した。『「あるある大辞典II」納豆特集の放映の案内のご案内』という表題で、平成18年12月21日付だ。つまり、同番組の放映の二週間以上も前に、納豆メーカーから大手流通関係者に流れた情報提供の案内文だった。

 同文書の前置きでは、1月7日の同番組において40分間の納豆特集がある、と明記している。本文に当たる〈記〉からの全文を検証してみたい。同番組の倫理観を欠いた、放映内容の流失の一端が浮かび上がってくる。

■番組名      『発掘!あるある大辞典II』
■放送局/ネット  全国27局ネット
■平均視聴率    14.6%
■放送予定日    平成19年1月7日(日)  PM9:00~PM9:55
■放映時間     番組全体が納豆特集となります。

 上記は本文のリード文である。納豆業者が想像で書いたとは思えない。放送関係者からのリークがあったから、『番組全体が納豆特集』と、業者に番組作りの全容がわかったはずだ。それは次の文面からも裏付けられる。

■放映内容
・若返りホルモンとして認知の高いDHEAを増やす最適な食材として「納豆」が取り上げられます。
・全体のテーマとして、納豆がダイエットに効果的である、という内容で番組は進行します。
・DHEAを増やすためにはイソフラボンを含む大豆加工食品を毎日食べることが望ましいと紹介されます。また、納豆のイソフラボンは発酵により、吸収率が高まることがメカニズムとして紹介。

 3項目は台本を要約したような内容で、放送の進行状況がくわしく述べられている。同文書の本文はさらに続いている。

・1日2パック食べる、朝・晩食べる、よくかき混ぜ少々の時間放置する、ということがダイエットには適切ということが実験やメカニズムを通して伝えられます。
・納豆ガーリックトースト、納豆包み揚げ、納豆カナッペ、納豆豆腐ステーキのレシピが紹介され、被験者たちが実際にその料理で体重が減少したということが紹介されます。

 ダイエットのためには『1日2パック食べる、朝・晩食べる』。これが女性心理をつよく刺激し、急激な消費量の拡大になったのだ。大手スーパーのバイヤーには、放送前の事前文書により放送内容がわかり、『これまで以上に、納豆の買いだ』と判断できたから、契約量を大幅に増したのだろう。
 
 他方では、中小スーパーや商店、さらには地方都市では納豆が買えない状態に陥ってしまったのだ。【つづく】


フジ系列 『発掘!あるある大辞典II』、放映前に内容が大手に漏洩(下)

PJニュース 2007年01月15日
【写真】(*リンク切れ)
フジ系列 『発掘!あるある大辞典II』、放映前に内容が大手に漏洩(下)
中小スーパーには、納豆売場に商品がない。下段には空箱とお詫びPOP。13日、16時半。(撮影:穂高健一)
- (上)からのつづき。 1月13日付の一部報道によると、『大手納豆には放送後、通常の倍以上の注文が殺到。納豆メーカーは11日付の各紙朝刊に品薄をわびる広告を出した』と報じられていた。それは真実を語っていない。ある大手納豆メーカーは放送内容をテレビ局から受けた段階から、大手量販店などに詳細な情報を流した。厳密にいえば、放送後でなく、放送前から注文が殺到していたのだ。 

 納豆メーカーはテレビ番組の情報を流すことで稼働率はほぼ100%。ロス率もなければ、返品もない。大手スーパーは納豆の特売をさけた定番販売だから、利益率は高い。まさしく、情報コントロールができる企業が儲かる構造だ。

 中小スーパーや零細な商店、それに地方都市には「納豆」がほとんど回ってこない。昭和初期に起きた豪商による『米の買い占め』を思わせるものがある。そのときには一般庶民に米が回ってこなかった。米にしろ、納豆にしろ、情報を牛耳(ぎゅうじ)り、買い占めたものが利潤を生む。こんな世の中でよいのか、という疑問が生じる。

 都内の中堅スーパーの食品担当者から、現場の生の声を聞いた。「年末年始で、一般の人は金を使い果たすから、門松が取れるころになると、質素な商品が急に売れるんです。納豆とか、お茶漬けとか、即席ラーメンとか。『発掘!あるある大辞典Ⅱ』のテレビ局は、健康情報とは表向きで、この時期に放送して欲しいと、納豆業者に乗せられたんじゃないですかね。納豆の売り上げが伸びる需要期ですから。タイミングが合いすぎですよ」と話す。

 同番組で、朝夕に2パック食べなさいと勧めたから、需要が2倍になり、「納豆狂想曲」となったのだという。

 「気の毒なのはお年寄りです」という、お客の声があった。大手スーパーの売り場は広すぎて商品を探すのが大変。年配者は商店や中小スーパーを利用するひとが多い。「毎日、健康食品として納豆を食べているお年寄りがある日突然、買えなくなるんですからね。自転車で買いまわりもできないし」と話してくれた。

 茨城県や愛知県の納豆メーカーは新聞各紙に品薄のお詫び広告を出した。放送前に大手と成約しておきながら、他方でお詫び広告とは茶番劇だ。本気で詫びる気があれば、大手スーパーとの契約をキャンセルし、地方都市の商店まで幅広く行き渡る、緊急策をとるべきだ。

 同文書のあとがきの注意には、『制作サイドへのお問い合わせはご遠慮ください』とある。裏を返せば、業者ならば、制作関係者が情報を聞けると受け取れる内容だ。

 『発掘!あるある大辞典Ⅱ』の責任者は、放送内容を業者にリークすれば、世の中に不公平を招く、業者たちを利するとわかっているはずだ。知らなかったといえば、お粗末過ぎる。すくなくとも、同番組の責任者には、放映前の内部情報の流出は罪だ、という意識に欠けている。もっとチェック機能を持つべきだ。

 民放だからコマーシャルイズムだ、放映前の情報流出は許されると考えれば、それは間違いだ。電波は国民の共有財産だ。「大が利を得て、小が泣く」。そんな不公平な公の電波の利用はしてもらいたくない。【了】

PJニュース (ライブドア)
記事:穂高健一

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