のど越しで味わう京都のおやつ。

小学校に上がる前から、お盆には親戚と一緒にお墓参りをし、八坂さんを通りぬけて「鍵善」で涼を取るのが恒例だった。そう考えると、くずきり歴はもう数十年になる。

「鍵善」は、屋号が確認できているのが1695年、現時点で325年も続いている老舗中の老舗の京都の和菓子屋さんである。
歴史のあるエルメスでも1837年創業なので、業界は違えどダントツでその上をいく年月を重ねている。

店内に足を踏み入れると、中は一瞬ひんやりする。
改装する前だったか子供の頃はもっと暗く感じて、それだけで体温が少し下がったような気がしたものだった。
席に案内されると、ホッと一息ついて、メニューは見ずとも注文するものは決まっている。

わたし、黒蜜。

まるでタイムスリップしたかのように、    子供の時と同じお店でくずきりを食べている  不思議な時間。

白蜜もあるけれど、黒蜜以外は食べたことがない。
そうこう涼んでいると、大きな器に入ったくずきりが運ばれて来る。
くず切りと一緒に入っている氷が、これがまたものすごく透明感があって大きくてきれいなので、子供心にもこの氷は家の冷蔵庫のとは違って
お店屋さんの氷やねと思っていた。

代々受け継がれてきた時代ものの着物に対しておろしたての足袋の白にハッとする感じというか、足袋はキレイじゃないとあかんやん?という立ち位置にこの氷はある気がする。

二段重ねの器を分けて、下段に入った白のつるつるのくずきりを慎重にお箸ですくうように挟んで、黒蜜にさらっとつけて飲み込むように頂く。
噛んでるのか飲んでるのか分からないあの感触。
つるん、ごくっ。
くずきりは、本葛と水だけで出来ているので当然ながら味わいと言ってみれば触感のコメントになり、この黒蜜が鍵となる。

お墓参りで汗のかいた身体にようやく風が吹き抜ける。

蒸し暑い京都の夏をのど越しで感じる涼しいおやつ。「鍵善」のくずきり。

温かいお気持ち、ありがとうございます。 そんな優しい貴方の1日はきっと素敵なものになるでしょう。