藍色の彼

伊吹藍は本質が中々見えない男。
何かしらの影は見える弱さも見える、なのにイマイチ開けっぴろげに彼の心が見えない。

番宣段階で言われていた伊吹藍は“機嫌がいい”“足が速い”“野生の勘が働く” 理性的な志摩とは正反対だと言われていた。

けれど、主演二人は普通のバディものの正反対とか、凸凹とか静と動ではない。と口を揃えていっていた。何か有るだろうなと番宣段階から思われていた志摩一未の方がどんな人間なのか本質が見やすい。だが、伊吹藍はバックボーンが見えにくい。彼が抱えてるものが気になる。知りたいと思う。これは製作側の意図なのだろうか、それとも私達が深読みし過ぎなのだろうか…

本質がなかなか見えない人が気になってしまうのが人間の心理。人間観察が好きな人からしたら伊吹藍は絶好の観察対象なのだ。すっごい良いやつで可愛らしくて愛おしいのに、掴みどころがない。掴もうと思うとスルッと指の間から抜けていかれる感覚。うん、堪らない。そーいうの大好き。全部理解できるとは思ってない。でも、自分のありとあらゆる感覚を使って伊吹藍に寄り添ってみたい。彼は何を感じ何を考え何を想って行動したのか発言したのか。


“伊吹お前は今何を感じてる?”

ある程度彼を知れた8話後に伊吹にだけ視点を合わせて過去回を見て行くと、何たる愛おしさ。

志摩は8話で、伊吹の事をこう総評した。
『動体視力や聴覚や嗅覚が鋭い分、人よりも多くの情報が脳に入る。ところが思考力と語彙力が足りないせいで論理立てて説明ができない。うまく言語化もできない。その結果“俺様の勘だ!”みたいなバカみたいな物言いになる』

伊吹は思うこと感じる事は山のように有るが、それを言葉に出せていない。つまり彼が発する言葉は彼の考えや想いの氷山の一角に過ぎない。今まで伊吹が発した言葉には、その言葉以上の感情や考えが裏側には潜んでいるという事だ。何それ。深読みしたい。

全部あげてたらきりが無いので、とりあえず何個か気になった部分をピックアップ。

志摩が、伊吹がどんなやつなのか今まで配属された警察署に聞きに行っていた。その時の反応からして、彼は邪険に扱われていたのだなと想像できる。学生時代に誰も信じてくれなかった過去を持ってる彼からしたら、ある意味いつも通りの反応だったのだろう。
“どうせ伊吹だろ?”“あれが、伊吹か…”“うわぁ、伊吹だ…”敵意、失意、 諦めたような、馬鹿にしたような、言葉にせずとも解ってしまう不愉快な視線にずっと耐えてきたのだろうな…と勘ぐってしまう。

伊吹が、犯人の車を見つけたと緊急配備をしようとした時、志摩の堪忍袋の緒が切れた。
初っ端は感情的にゴミ箱を蹴っ飛ばしたがその後に、なぜ色々すっ飛ばした緊急配備が出来ないのか警察官として何を守らなきゃいけないのか、半分怒鳴りながらではあるが、志摩はちゃんと伊吹に説明をした。理由を伝えた。
志摩はマウントを取り返してしまったことに落ち込んでいたが、一方の伊吹はテンション爆上がり。
最初見たときは、アホの子!可愛い!とか私もアホな感想しか出なかったが、志摩が諦めのような不愉快な視線をただ向けるのではなく真っ向から怒鳴って伊吹に向き合ってくれた事にテンションが上がったのか…と思うと、意外と素直に話を聞ける子なのに、なんで今まで伊吹と出会った奴らは初っ端から見限って伊吹に大切な事を伝えなかったんだ。と若干の怒りすら覚えてしまうし、テンションが上がる伊吹に、良かったね…。となんとも言えない愛おしさが湧き出る。

あとは、志摩だけが桔梗さんに呼ばれた時の伊吹の表情。彼は何を思ってあの顔をしてるのだろう。捨てられた子犬のような表情は、自分がまた切り捨てられる恐怖が混じった顔なのか…そうだとしたら、こっそり教えてあげたい。
数話後には『俺はアイツを意外と買ってる』って言うし、1日伊吹と接しただけで、とりあえず保留で…って微笑んじゃうくらい君の事を悪いように見てないよ。って。

あとは、犯人にかけた言葉。
“よかったな、誰かを殺す前に捕まって。”
この言葉を発した伊吹は何を感じ、何を考え、何を思いこの言葉になったのだろう。
お前みたいのが生きてるとみんな不幸になるんだよ。とフリではあったが、殺したほうがマシなんじゃないかと思ったであろう犯人に、彼は何故優しいとも取れる言葉をかけたのだろう。。

そして、伊吹が勘を感情で蓋をした2話。

初っ端は勘がビンビンに働いてた。
隣のおばちゃんの様子がおかしい、着衣が一致!あれは絶対犯人だ!
検問の時も、他の警察官が息子さんでした。と言ったのを聞いても納得せず、それでも犯人だと思うんだけどな〜とブータレた。

途中から彼は感情で蓋をした。
『無実を証明するために逃げてる』
...あれ?犯人説どこ行った?となったが、彼が犯人だ!から犯人じゃないな、うんうん違う。と勘に蓋をしたのは、志摩が車内に仕掛けたボイスレコーダーからの話を聞いたとき。岸が犯人じゃない?と確かにみんな思った瞬間だとは思うが、着衣一致、凶器らしきモノも持っていたと車内を見た志摩に言われ、ほら見ろ〜並みに喜んでたのに、まさかの必殺掌返し。
志摩はある意味、伊吹の勘を信頼して推理してるのに伊吹自身が自分の勘に蓋をした。
何が彼に蓋をさせたのだろう?加々見の境遇?だとしても、そんなに深入りする?どこか自分に重なる部分があったのか…でも、別に加々見は誰にも信じてもらえなかった訳ではない。父親が毒親だったって話。
伊吹の境遇はまだまだ謎な部分が多いからこそ、不思議な部分でもある。
“俺の勘は当たる!”と言う男が、サラッと自分の勘を覆したのが何故なのか。覆すほど加々見を信じてあげたいと思う何かがあったのか。
答えは最終話まで見れば解るのか解らないのか…

そして3話での少年法に対する桔梗隊長の言葉にビビビッと少年の心が反応して、“好き”という語彙しか浮かばない伊吹。語彙力を失ったヲタクと一緒やな、伊吹くん。

彼の生い立ちを聞けば、隊長の言葉にどれだけ救われて感動したかがわかる。きっと、伊吹は今自分が身を置いてる警察組織の中に、それも直属の上司が青少年に対して自分の恩師のような見方をしてくれているという事が、とてつもなく嬉しかったのだと思う。
貧しいというだけで、舐められたり本来偏見を持って生徒に接してはいけない教師にまで見放され疑いの眼差しを向けられていた彼からしたら、あの時の桔梗隊長は聖母や女神のように見えたんだと思う。
色々噛み締めて、出た言葉が『俺隊長のこと好きだわァ…』なのが伊吹らしさでもあるのだが、こういう言動が伊吹の評判を下げてしまってる気もしなくもない…

その言葉に至るまでの経緯や、彼の背景、彼の真意を知れば、『ほんっと語彙力ねぇな(笑)』と笑い飛ばせるものでも、彼の背景も真意も知らない知ろうともしない人達からしたら、訳のわからんただのバカ。居るだけ迷惑。と思ってしまうんだろうなぁ…
今なら多分、桔梗さんに同じ事言っても恐らく志摩が通訳してくれると…思う…よ?

あしながデカより。とランドセルを贈ったのも、彼が“貧しい家庭に育った”事で更に深みが出る。

伊吹が、どの程度貧しかったのかは解らないが、もしかしたら新品のランドセルを持てなかった可能性も捨てきれない。兄弟は居なそうだが、誰かのお下がりランドセルを使っていたとしたら…それで馬鹿にされたりイジメられたりしていたとしたら...同じ気持ちを味わってほしくない。イジメられてグレて道を踏み外してほしくないと思ったのかもしれない。児童養護施設育ちってだけでイジメられる可能性があるのに、更に辛い思いをして欲しくない。と思ったのかもしれない。(サクラ先生でその苦しみは解ってるもんね。って思ったのはココだけの話。)

ランドセルの平均価格は6-7万円。
それを3つ買って施設に置いてきた…
ゲスい話だけど、約20万円寄附をした…自分の給与の約半分位寄付してる伊吹。
そりゃ、もうランドセルはいりません!言われたら泣くわ。うん。ショックだよな、うん。

“お前は人を信じすぎる”と恩師に言われていたが、果たしてそうだろうか…と思ってしまう部分も多々ある。確かに真っ直ぐに色んなことを信じて突き進んでいる。だけど、どうしても7話でポロッと出た言い回しが気になって仕方ない。『おじさん、俺はね大抵の事は信じるようにしています』大抵の事は信じます。じゃなくて、信じるようにしています。彼は信じすぎる訳ではなく、一生懸命信じようとしてる必死さが信じすぎるように見えてるだけなのではないか…彼がそこまで一生懸命に人を信じようとするのは、自分が信じてもらえなかった過去があったからだけなのか、はたまた違う理由があるのか。

ヘラヘラと笑って真意をなかなか見せない伊吹藍が抱えてるものはもっとあるんじゃないか、それを上手く言語化出来ずに伝えられずに飲み込むしか出来ないんじゃないのか…

伊吹藍を知ろうとすれば知ろうとするほど、彼が儚げで心配になる。君の笑顔の裏には何が隠れてる?本当はバカを装って何かを隠してる?
最終話まで終わった時、私達は果たして伊吹藍を攻略出来るのか…私達が考え過ぎなだけで、伊吹藍はもっと単純なやつなのだろうか…。

とりあえず、8話の傷がまだまだ癒えないがラストスパート一緒に駆け抜けて伊吹に寄り添いたい。

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