見出し画像

にくの綺麗な世界

著作.岩満陽平

柔らかな地で少女が寝そべっている
静かな自然の優しさに包まれ
透明なオーラを放つ少女

まるで私たちここに住んでるかのよう
悦びの極地、そこにある安らぎ

まだ目を瞑っている老人
誰かの影がそこに投影される
小屋の中の動物、鳴かない動物

だが動物は鳴いている
まるでそこにいないかのように

小さな幼げな声が聞こえる
唄っているようだ
叢に紛れて揺れる花
風は全てを連れ去りまた連れてくる

川はキラキラと透明な光を眩しげにあたりに投げかける
木漏れ日もまるでそこに隠れるかのように一体となっている
ああ、この美しさを囚われとは云えない

私たち、過去世にいるみたい
ここはどこ? 私は誰?

鳥たちの姿、綺麗な川を泳ぐ魚、姿を見せない微生物
ここに柔らかな少女の匂い

処女の霧が降りてきた
私って、そんな純潔だったかしら?

どこかの喧騒が羨ましく思える
実は私は、もっと薄汚れた世界の人たちと楽しく遊びたいのかも
私を見つめる天使様は、私を思い違いしてるのかも

やっぱダメだわ、私はここじゃなきゃダメみたい
いやな運命ね

夜闇の、暖かな暗闇、そこに浮かぶ悲しげな月
青い空は、姿を消している
しかし少女にだけは夜なのに空が青く見える

私は不思議よ、幻の匂いがするの、置いてけぼりな私を何もかも知っているかのような匂い
胸が締めつけられる、とても良い匂いのはずなのに、すごく辛いの

夕闇がぽかんと口を開き、そこには公園がある
いつの日かの、私たちの居場所
あなたはどこにいるの? 会いたいわ
私ももう大人になるの、もっと早くあなたに出会えていたら
一緒に手を取り合って遊びたかった

少女は眠る、より綺麗になってしまう前に
あなたに出会えると信じて

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?