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日記 21/12/27(10月期アニメ総括)

 毎日日記つけるのを止めてしまったがクールごとのまとめぐらいはしたいね、という日記。今期終わってないアニメもいっぱいあるのだが、3月まで延期したアニメすらあるのでまあここで総括で。
 ちなみに7月期は↓

〇良作(順不同)

・王様ランキング
 唯一無二な設定と話運びをしているのにちゃんと正解の内容を示してくる原作の感触をしっかり再現しているアニメで面白かった。その中でも9話絵コンテ・演出:今井有文さん回。どの回もクオリティ素晴らしいんだけど1つ選出するならどのコンテも芝居も良かったこの回が特に印象深い。まあ皆そうだと思うがヒリング王妃が特に好きなキャラでして、幼いボッジから見た怖さも、めげずに愛されようと努力するひたむきさも、恐ろしい存在のボッスを前にしてもダイダを取り戻そうとする強さも全て描かれていて良かった。また、魔物と戦うドルーシの息遣いなど細かい所作も、グリグリ動かして大技を決めるカッコよさもなんでもござれな作画表現力の高さも見せつけられた。

・月とライカと吸血姫 12話(最終話)
 始まる前は林原めぐみさんがヒロイン、アリプロのOP、比較的撮処理の少ないルック等々、2021年にして色々な時代のセンスをまとっているアニメだというトンチキな印象を抱いていたのだが、それがいずれも響き合っていた名作だった。国家の威信をかけた宇宙開発プロジェクトに巻き込まれた少数民族・吸血鬼のイリナと対等な目線で指導する人間・レフ君が次第に惹かれ合っていく過程が凄く丁寧に描かれている。レフ君役内山昂輝さんの熱血で無いながらも真っすぐな芯を持った声がめちゃくちゃ心に刺さり、キャラとしての魅力にしても静かで壮大な宇宙の表現にシンクロするような情感しても大正解であった。吸血という行為を継続的に行わなければならない生理現象にはせず、愛情表現として特別なモノにしていたのも独自性があって良かった。
 中盤以降ずっと良かったからあまり特定話数を選出する意味すら無いのだが、印象的なのは7話「リコリスの料理ショー」。ついにイリナが宇宙へと行く一大イベント回で、そもそもロケットが爆破等せずに宇宙へ行けるのかという事すら不安であったのでもっと危険を煽る展開やBGMが流れると思っていたのだが、多少のトラブルはあっても宇宙へ行って1話の内に帰還までやっているのは作品らしさが出ていた。
 そして最終12話がしっかり素晴らしい出来であったので名作度が更に高まる。レフ君がイリナの存在を全世界に明かす告白とそれに応えて駆けてくるイリナのシーン、階段を使って立体的に進む構図も場面のドラマチックさを盛り立てていて良い。見ながらとらドラを思い出していた。また、日に弱いイリナの視界は日中白くなっているが、最終話では告白するまでの遠くに行ってしまったと思っていたレフ君や、壇上のイリナに罵声を浴びせる民衆もまた日光と同じく敵対・恐怖の対象であるという演出がとても良かった。同時に、イリナに罵声を浴びるレフ君似の青年(声も内山君)というレフ君のifを物語るかのような存在に対して、顔を隠す演出のために活用しているのも上手すぎる。単に顔を隠したいだけじゃなく、太陽の光を最も強く受けている人間=イリナを最も受け入れない人間という意味も持っているので、スッキリと整理された表現手法で伝えたいことを二重三重に積み上げているのが凄かったなー。
 ずっと政府の嘘に翻弄され続けていたレフ君とイリナであったが、最後の最後にプロパガンダのための嘘で救われるという一切無駄の無い話運びであった。

・吸血鬼すぐ死ぬ
 最初の1、2話時点は見ていてあまり分からなかったんだが、3話ぐらいで見てる側も見方を理解したのか面白くなりだして以降は何やっても全部面白い具合にノリノリになっていった。気づけば毎回下ネタだらけの話になっていたのに品の良さみたいなものが感じられたんだが、作品の力に騙されているだけかもしれない。
 マスコットキャラであるアルマジロのジョンがトロプリのくるるんに並ぶぐらいとにかく可愛くてしょうがない。キャラのサイズ的に画面の端で何かやってる事が多いのだがその慎ましさが更に可愛さを加速させていた。
 そんなジョンとドラルクの出会いから今に至るエピソードが描かれた11話も良いが、それ以上にジョンのトラブルを描いた8話がギャグのキレもあって特に好きだった。うっかり新横浜を通り過ぎて名古屋まで行ってしまうマッハのぞみなる特急に乗ってしまい、とんぼ返りで戻って来た時にはういろうをお土産に買ってきているといった細かさが良い。

・古見さんは、コミュ症です。
 渡辺歩総監督、中嶋敦子キャラクターデザイン・総作画監督、新進気鋭の川越一生監督のOLM制作アニメ、という事で放送前から画面の強さを期待していた訳だが期待通り何もかも凄い映像ぢからであった。「誰もが一目置く超絶美人の古見さん」という設定に一切の疑念が湧かない説得力がある。止め絵の綺麗さ・芝居の丁寧さを表現する作画だけでなくコンテ時点でも画面配置の工夫にしろ、実際に演出する時の色や撮影処理への拘りにしろすべてが存分に発揮されていた。特にOPはとんでもないクオリティ。

 まあそこまで言っておきながら、本編のキャラにあまり惹かれていないというのが実際で、作品のシチュエーションのために生み出されたキャラというのがしっくりこなかったのだが、それでもやっぱり初監督にしてここまで自分の好みな映像をお出ししてくる川越さんには夢を見たくなるのだよなあ。単純に映像凄いだけで話が上滑りするタイプでは無いし、実際ベイブレードバーストシリーズではちゃんとシナリオのテンションに合わせた映像になっていたのでいつかバッチリハマる作品と巡り合う事を見届けたい。
 あと、終盤の只野君女装がやたら可愛かった。原作でも文化祭だけでなく今後も何度か出番あるようなので最終回後に発表された2期も結構楽しみになってきた。

・世界最高の暗殺者、異世界貴族に転生する
 原作者が共通である回復術士と悪趣味なエッセンスを同じにしながら、ここまでテイストの違うものを作り上げるのは凄い。オリジナル要素も織り交ぜつつとの事だが、丁寧な話運びでいわゆる転生チート主人公というルーグ君の完璧さをより盤石なものにしている。その一方で作風的に頻繁に挟まれるセクシーなシーンも、ルーグ君が夢精した事をヒロインたちに気づかせた事で愛嬌のあるシーンと転じているのが見事。また、地上波BSよりも早いAT-Xでの放送では一部シーンで乳首が規制されずに描かれているが、ノルマ的に出すのではなくこの場面では不自然に隠すわけにはいかない状況だから描く、という意志が感じられて良い。なんかえっちなシーンに興奮しているだけの感想みたいになっているが、作品の長所に真剣に向き合ってそこを磨き上げている真摯さがしっかり面白さに繋がっていた、という話。
 特に好きなのは6話で、マーハとその仲間の孤児たちが悪人に様々な面で追い込まれる描写の徹底具合がとても練りに練った構成・画面で作られていたのが良かった。

 この1話でやられるだけのチンピラ集団がこんなに強そうなに見える作品も中々無いだろう。(実際魔法が使えてそれなりに強い、というのも世界の広さを知っているなりにあくどい仕事を選ばざるをえなかった感じが良い)
 最終話では勇者候補となる男との戦いとなり、実際トンデモナイ実力である事は台詞だけでなく映像面でも説得力あったが、如何せん三下感あるデザインだと思っていたらルーグ君の対になるような美少年勇者を出してきて締め、と最後まで盛り上げかたが考え抜かれている構成だった。魔王学院2期の後はこっちの2期も欲しいなあ。

・大正オトメ御伽話
 放送前から期待していた作品の一つ。小さいながらも明るい女の子が献身的に寄り添ってくれるとか絶対好きなタイプのヤツだよなとは思っていたが望んでいた通りの内容、望んでいたもの以上の面白さであった。押しかけヒロインモノという括りだけで考えると都合の良さみたいなものを生みかねないが、大正という背景も上手く作用して激動の時代の中で支え合って生きていこうとしている珠彦と夕月の絆が深まるのを見届ける喜びがあった。
 全体的に肌が土気色すぎないかと思っていた時はあって、月明かりだけの室内にいる時白目よりも肌の方が白かった事に違和感を抱いたりもしたのだが、終盤の関東大震災における災害後のシーンが続く中でも極端な印象の変化が無いように逆算して色彩設計されているというのが感心した。

・さんかく窓の外側は夜
 始まる前や序盤はなるほど霊感から連想する生理的な感触に結び付いたエロチックな所が見どころの作品ね、というのは伝わったが同期どころか同日に見える子ちゃんもある状況で、こちらは冷川に掴みどころが無くどうも空回りしているよくに感じられた。しかし冷川以外のキャラにフォーカスが当たり始めてからはどんどん面白くなっていき、最終的に最初からやりたかった冷川と三角の関係に収束していくというめちゃくちゃ綺麗にまとまった作品であったと思う。
 三角両親の5話、半澤さんの過去から冷川ビギンズが明らかになる6話からギアが上がり出し、どんどん引き込まれていった。特に半澤さんのキャラが素晴らしく、霊能モノで霊感を信じない刑事というのはあくまで事件の情報入手元としての窓口でだけになりがちなのに、霊を全く信じないが故に最強の現実へ繋ぎ止める切り札だったのが面白い。また、先生役、平田広明さんの生気の感じられない不気味な声がとても素晴らしかった。

〇ベスト3

・No.3
やくならマグカップも 二番窯
 1期最終回の心に訴えかける演出に魅せられ2期にかなりの高い期待を寄せていたが、何の問題も無くその期待のハードルを飛び越えずっと1期最終回のような空気が途切れることの無い凄い作品だった。時間の経過を表すために風景のカットがしょっちゅう挟み込まれるのだが、自然物だけでなくペットボトルの風車など人工物もあくまでそこに住む人たちの身の回りにある風景として捉えている、というのがご当地モノである事に非常に真摯に向き合っていて素晴らしい。
 なんというか凄く説明が難しいが、とにかくずっとその場面での心情を伝えるにあたって一様でない、ありとあらゆる表現手法が出てきていて自由自在であったのが圧巻だった。

 ↑の7話で出てきたギャグ等、コンテ自体もさることながら実際作画された絵の画面の収まりが今期アニメの中でも抜群に良かったと思う。アップの横顔が映るカットは意図的に多用していたと思うが、いずれも常にキマっていた。


・No.2
ヴィジュアルプリズン

 見始める前のイメージとして、正しくタイトルにあるヴィジュアル系なバンドの活動をアニメでやるとなるとぶっ飛んだライブ演出に圧倒され喚起するファン、みたいな映像のオモシロが作品の持ち味なのかと勝手に思っていたのだが(実際1話Aパートぐらいはそうかもだけど)、最初からもうずっと台詞が良いという、見ていて気持ちの良いアニメだった。怒り、悲しみ、無念さといった負の感情を抱えたキャラが仲間たちの想いを受け取り救われる流れが説明的でないのに物凄く分かりやすくスッと頭に入ってきた。
 実況してる人限定、それも実況のスタイルによりけりなので狭い世界の話なんだが、面白いシーンがあったら笑ったり、変なシーンがあったらツッコんだり、可愛い仕草を見たら萌えって鳴いたり、状況を受けてリアクションするのが楽しい中で、今の台詞さえ書けば込められた想いとそれを受けたキャラの感情が分かる良い台詞が飛び出る事がある。ヴィジュアルプリズンでは毎週何度もそう思わされただけに、いかに本作が脚本の時点で完成しているかが分かる。
 作中の吸血鬼というのは長命なだけで万能な訳では無く特殊な力はあくまで赤い月が授けているものというのを補強するかのように、旧エクリプス時代のヴィジュアル系MVや現在のSNS活用による宣伝など、吸血鬼たちが時代に合わせた人間の文明を駆使しているという描かれ方で、月とライカと吸血姫ともまた違う独自性があって良かった。今期は3つも吸血鬼を題材にした作品があったり、単話で吸血鬼が出てくる作品がいくつもあったりしたが、ネタ被りしていないのが凄かったと思う。
 脚本自体が良いとずっと同じテイストで好きな話が続くのでどの話数か選ぶの難しいのだが、まず好きなのは9話。アンジュの実家に行くアンジュと現イクリプスの二人。旧イクリプスの中心は明らかにギルだったのに、ギルが抜け更にサガも抜けて残った二人が未だにイクリプスを名乗ってるのはどういう事なんだろうと思っていたが、赤い月がグループ名を決めるという設定を上手く利用し、皮肉な運命も受け入れつつ進んでいこうとしている話がめちゃくちゃ良かった。メンバーが抜けた後のイクリプスという人気グループを背負ってメディア露出もしている訳で、宿命を背負い続けるアイドルの話に自分は弱い。
 11話のギル復活回も良かった。オズを想ってイヴとロビンが動いててアンジュとギルの関係を支える結束がしっかり描かれているし、並行して過去を断ち切ったサガの姿も完璧。特にサガはあまりにも美味しいキャラすぎる。敗北幼馴染みたいだ。

 この回は撮影も特徴的で、シナリオがずっと良いだけに演出面で頭一つ抜けているのが分かる回だと思う。横断歩道を渡って駆け付けるロビンという↑のシーン、信号変わる直前でギリギリアンジュの所に届くという演出が良かった。どうでも良いがそのロビンを待ってイラついていた走り抜けてるプリウスが急発進すぎたのは別の意味で面白かったりもした。

・No.1
舞妓さんちのまかないさん
 本筋5分、その話数に出てきた料理に関する小ネタトーク3分と短いアニメながら毎回ほっこりさせられるとても良いアニメ。1話が短いにしたって、毎話鈴木洋平監督がコンテを切っているのは恐ろしい。お陰でキャラの所作の丁寧さや超美麗な美術を効果的に兼用しつつ見せるカット割りなどの統一感に安心して見られる。これが本当に叛逆性ミリオンアーサーでたくわんをベッドに寝かしつけたり、キャプ翼体型のキャラとサッカーさせたりしていたアニメの監督と同一人物なのか!?
 舞妓さんはコンビニに入ってはいけないとか、特徴的な結った髪を1週間キープするために夜でも解かず寝る時も高くて固い枕で寝ないといけない等、作中で説明される京都の舞妓さんのルールには歴史ある伝統的な文化とは言え現代でやるにはあまりにも不憫で、これを中学出たてのすみれに強いているのが(望んでやっていたとしても)かわいそうに見えてくるだけに、いかに同郷でマイペースなキヨさんがすみれの心の支えになっているかが伝わってくる。最初に毎回ほっこりさせられると言ったが、ここ数話はすっかり毎話泣かされ続けている。
 こんな素晴らしいアニメが終わってしまうのかと嘆いていたが普通に来期もあるどころか、NHKワールドでは既に33話まで公開されているので3クール以上は確定っぽい。(NHKワールド版はキャラの台詞は日本語だけどナレーションは英語なのでEテレ放送版とはバージョン違い)

 好きな話数まず1つは9話。OPにも映っているカツサンドが思い出の料理であるという事を明かす回。あまりにも良い。起承転結を付けるのが上手すぎる。
 洗濯物を抱えながら古い家特有の急な階段をゆっくり登る芝居も良い、そのベランダから見える隣の歴史ある家には衛星アンテナが付けられてる生活感も良い、夕暮れの京都の背景美術もめちゃくちゃ良い、基本的に3DCGながらセルルックなデザインの中できらびやかなすみれの着物の柄も良い、すべてが良い。

 更に、1クール目ラストの13話もあまりにも良すぎた。もう号泣ですよこんなもん。

 対比を利かせた構成自体もさることながら、とにかく京都の街並みを見せる背景美術が美しすぎて目を奪われる。先に紹介した通りNHKワールドで世界的に配信されるから特に京都文化は受けると思ってそこに力を入れているんだろうか。

 ついでに2021年の年間ベストは↓。1年のベストをまとめるための記事を書こうとしてたが時間が掛かり過ぎたり日記をつけてなかった頃のアニメをちゃんと文に出来る気がしなかったのでタイトルだけ。


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