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【連載】第3回 <海外株式と日本株式との比較>

  海外投資家と個別銘柄との関係をみる上で典型的な例を見てみよう。最初に、AI関連の代表的なIT銘柄で最も注目されているエヌビディア(NVIDIA)は日本株とどのような関係にあるのか着目してみる。

 エヌビディアは、AIのカギとなる画像処理半導体(GPU)メーカーである。今年の前半はAI関連の銘柄が注目を浴び、エヌビディアの株価は、2023年1月~8月末までの動きでは300%を超える上昇となった。この銘柄との関係が最も深い国内株式銘柄はアドバンテスト(6857)である。同社は、エヌビディアの画像処理半導体(GPU)が意図した性能をきちんと出るのかをテストする半導体検査装置(テスタ)を提供している会社だ。つまり、この銘柄にはファンダメンタルズのロジックが存在している。米国株式であるエヌビディアの株価と国内株式であるアドバンテストの株価を2022年1月~2023年8月末で見てみると関係がいかに深いかが伺える。2022年は米国株式市場にとって大幅な調整局面であったが、エヌビディアの株価も大きく下落した。アドバンテストの株価も同じ時期に下落し、同じ時期に底を打っている。2023年になるとAIブームでエヌビディアの株価は大きく上昇。アドバンテストもほぼ同じタイミングで上昇している。パフォーマンスに差異があるものの、ほぼ同じようなトレンドの動きで推移していることは注目に値するだろう。このことは何を意味するのだろう?一つの仮説が考えられる。エヌビディアの株式とアドバンテストの株式を同じタイミングで買い、同じタイミングで売っている投資家が存在する可能性があるという推論である。

 ファンダメンタルズのロジックは存在しているものの、実は業績面では、特に本年度は差異が存在している。アドバンテストの2024年3月期1Q(2023年4-6月期)の会社業績は減収減益であり、一方で、エヌビディアの今会計年度(2024年1月期2Q(2023年5-7月期))における会社業績は大幅な増収増益となっている。つまり、この2銘柄の業績の差異は2023年に入ってからの株価に十分に反映されているとは言いがたいのである。

 実際の株主構成を見てみよう。アドバンテストのHP(2023年3月31日時点)を見ると、外国法人等が35.57%で、金融機関などが53.72%となっている。個人はわずか6.25%。金融機関は信託銀行を中心にETFや年金などの巨大な投資家であり、ほぼ動きが少ない投資家と考えられる。つまり、海外の投資家がこの銘柄のトレンドを決めている可能性が高いといえるだろう。

 アドバンテストの株価予測は、エヌビディアに投資している海外投資家の動向を追うことが将来の株価を予測する上で重要なヒントになる。海外投資家がどういう局面でエヌビディアの株式を売買しているのか、それを探ることがアドバンテストの株価を見定める上での重要なキーなるのではないだろうか。

(注)日次。2021年12月30日から2023年9月14日。
ブルームバーグデータをもとにGCIアセット・マネジメント作成。

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