ニンジャ真実 - 新たな十年紀に向けて

はじめに

 Y2kによって破局を迎える事の無かった現世界において今年は2019年、すなわち十年紀で言えば2010年代最後の年である。ツイッターにおいてニンジャ真実が語られ始めてから既に十年が経過した。ニンジャスレイヤーはフジキド・ケンジからマスラダ・カイに代替わりし、ダークニンジャはオヒガンと現世の間に漂う存在となった。

 ニンジャスレイヤーの物語は十年を越えて続く壮大な叙事詩であるが、その核心のひとつともいえるニンジャの始祖、カツ・ワンソーについては間接的に言及されるに留まっているようにも感じられる。さらにカツ・ワンソーが顕現するための依り代として選ばれたダークニンジャの行動は、第三部が終わってもなお未だに謎に包まれている。

 他方、物語が始まってから繰り返し登場するニンジャ、ザ・ヴァーティゴにはエメツ・ニンジャのニンジャソウルを宿しているという情報はあったが、エメツの意味への言及はなかった。第三部後期より新たに語られ始めたエメツと呼ばれる物質は、コトダマ空間及びキンカクテンプルとの強い関連性を持つことが窺われる存在である。

 以下では第四部において重要な存在となっているエメツについて考察し、さらにカツ・ワンソーとの関連についての検討を試みる。

エメツについて

 エメツの性質については黒く光を通さないという事から、グラファイト状の炭素を連想させる。他方、第三部においてアマクダリセクトと学生たちの闘争の場面では、ニンジャとなった考古学者のウミノ・スドによってラジオにエメツを挿入すると特殊なバリアで分離されたニチョームとの音声通信が可能となる事が示され、エメツは鉱石ラジオに使われるゲルマニウムのような性質を持つことも示された。また、物語序盤から語られるインターネット実現の鍵となるマイクロチップや素子、あるいはオイランドロイドに用いられるオモチシリコンなどのシリコン、これらはいずれも炭素族の元素である。

 現実世界では食物連鎖に示されるように生命の循環は炭素の循環であると言うこともできる。この物語の世界で炭素あるいは炭素族の元素に類似した性質を持つ元素が重要視されるようになったのは、単なる偶然の一致なのか、あるいは必然なのか。

 既に様々な叙述から、諸賢が指摘するように、エメツはモータルあるいはニンジャが持つ、情報あるいはエネルギーが実体化されたものであることは十分に確証をもって肯首することができる。

 また、第四部に登場する極めて強大なニンジャのサツガイはエメツを食べているのである。一つの可能性としてニンジャはモータルの情報、すなわち霊魂を簒奪して糧としているという可能性に思い至る。

 語られる世界においては、ニンジャはモータルからの簒奪者であり、食物連鎖で言う所の高次の消費者とされている。またY2k以降のニンジャは修行を重ねてリアルニンジャとなる者はごく僅かで、瀕死状態あるいは死んだモータルにニンジャソウルが憑依するディセンション現象によってニンジャになる者が大半であるとされる。

 この現象はキンカクテンプルに蓄えられた、あるいはコトダマ空間にとどまっていたニンジャソウルという情報が、モータルの物理身体や霊魂を乗っ取る事で、ニンジャとしての実体化を図っているとも言い得る。

 すなわち実体を持つニンジャが爆発四散するなどして、物理身体を失ったニンジャソウルと言う情報が、一種の捕食者としてモータルの身体と霊魂を捕食するプロセスを、ディセンション現象であると考える事も可能である。

 他方、キンカクテンプルやコトダマ空間に留まることができなかったニンジャソウルはどのように変化するのか、エメツ採掘場でしばしばニンジャが出現するとされることから推定して、おそらくエメツという形で物質となり、何らかの要因で顕現する上で必要な物質を得る事の出来たニンジャソウルが、簒奪するべきモータルの霊魂を持たないフェイスレスとして出現していると考えられる。

 また、モータルからは如何にしてエメツを生成するのか、死によって実体を失ったモータルの霊魂はキンカクテンプルに蓄えられることは当然無い。しかしコトダマ空間に残留し得る性質を持つことを事を、第三部におけるナンシー・リ―の死の叙述から窺い知ることができる。さらに言えば、コトダマ空間が現実世界に出現したかのような特殊なバリアによって隔てられたニチョームとの境界に、モータルであるペケロッパカルト信者が駆け込んだ後にエメツが生成されることも併せて考えると、モータルをコトダマ空間に接続することで、モータルの霊魂すなわち意識や記憶、思考といったものをコトダマ空間上の存在に転換し、さらにその霊魂を物質化することによってエメツを生成されるのではないか、と考えるに至った。

 恐らくエメツを生産している暗黒メガコーポは、集めたモータルを強制的にインターネットを介してコトダマ空間に接続することで、エメツ生成に必要な霊魂を集め、それを物質化しているのであろうと推測するものである。

 無論、物語がどのように展開するかによって、これまで述べた考えの当否は明らかになるものと考えており、次の十年紀である2020年代にはエメツの謎が明かされることを期待している。

エメツとカツ・ワンソー

 前節ではエメツについて考察を試みた。結論としてはモータルの霊魂やニンジャソウルが物質化することによってエメツが生成され、それはニンジャが摂取可能なものであるという考えを示した。ニンジャがモータルから簒奪するものとしてモータルの霊魂そのものが含まれる可能性を示した。

 カツ・ワンソーは自らを現世に顕現させるにあたって、依り代となる身体、そして霊魂をダークニンジャに求めていたが、ダークニンジャは物理肉体を失いコトダマ空間を彷徨う存在に転化したと言える。

 これによってカツ・ワンソーの目算は狂ったわけだが、再び新たな依り代を求めるのだろうか?

 もしもコトダマ空間を彷徨うダークニンジャを打ち破り、現世に存在する物質、すなわちエメツへと転化することができて、なおかつダークニンジャの成分を高濃度に含むエメツ片を確保することができたなら、ディセンションするべき相手は身体能力に優れカラテのワザマエを持つ。あらゆるモータルという事になるのかもしれない。

 すなわち、素体として十分使用に耐えうるモータルに憑依し、その後にダークニンジャから生成されたエメツを摂取することで、顕現したカツ・ワンソーは、依り代と考えていたダークニンジャの能力を取り込むことができるのではなかろうか?

 このような事を考えると、仮に第五部が作られるなら、カツ・ワンソーの顕現ということが一つのテーマになり得るように予想している。

まとめ

 エメツやカツ・ワンソーについて、長々と書いたが、今は第四部のシーズン3が準備中の模様である。次の十年紀である2020年代にも良質なエンターテイメントが提供されることを願いつつ、ここで筆を置く。

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