短編小説『刑務官が「死刑ごっこ」で本当に人を殺して有罪判決』

死刑囚を殺害したという容疑で裁判にかけられた刑務官達。
一体全体、何が起きたのか?
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「よって、当法廷は、検察側の主張を全面的に認め、被告側の主張を全面的に退しりぞけ、被告人らが共謀して被害者を殺害したと判断し、被告人らを殺人罪にて無期懲役とします。では、被告人、何か最後に言う事は有りますか」
「え……えっと、被告人を代表して一言言わせていただきます。弁護人と相談の上ですが……あまりに不当な判決だと思いますので、上告する所存です」
「上告は貴方達の権利ですが、貴方達が共謀して人1人を殺害したのは事実ですよね?」
「事実ですが、この裁判で被害者と呼ばれていた人物は死刑囚です」
「死刑囚であっても恣意的に殺害すれば殺人となりますよ。貴方達は元刑務官で、法執行機関の一員だった筈です。その程度の事も判らないのですか?」
「しかし、被害者と称する死刑囚には、法務大臣が署名した死刑執行命令書が出ていました」
「ですが、貴方達と、その弁護人は、貴方達が法で定められた死刑執行手順を無視した極めて残虐な方法で被害者を殺害した事は事実であると認めていましたよね?」
「ですから、私達は死刑を執行しただけです」
「単なる死刑執行だと主張しているのに、法で定められた死刑執行手順を無視したやり方で殺害した事は認めている。一体全体、貴方達は何が言いたいのですか?」
「わかりました。では、私達は実行犯に過ぎず、殺人を命じた者が処罰されないのは不当だと主張します」
「意味が判りません。死刑執行命令書が出た事を笠に着て、悪ふざけで『死刑ごっこ』を行ない、死刑囚を殺害した。それが貴方達がやった事でしょう? 死刑囚の殺害とは言え、法で定められた死刑執行手順に反した殺害方法であった以上、貴方達のやった事は『死刑ごっこ』の結果として起きた殺害に過ぎず、死刑では有りません」
「ですが、私達が有罪なら……我が国における法で定められた死刑執行手順がのみであり、体になった者の死刑を執行するには、だと理解しているべき立場にも関わらず、死刑判決を出した裁判官と、死刑執行命令書にサインした法務大臣は、どう考えても我々に違法な殺人を命じたも同じでは無いのですか?」

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