漫画脚本「悪の組織からの足抜けを手伝いますッ♥/安易なる選択−The Villain's Journey−」第2話「Escape Plan (1)」


シーン1

カット1

ホテルの部屋らしき場所。(ビジネス・ホテル風)
窓の外の光景を描く場合は、博多港付近を元にする。
ラフな格好(前回とは違う)の主人公が、机の上にある端末を操作している。
a5ぐらいの大きさ×2画面のタブレットPCを2つ繋げたような外見。

画面の片方の上半分ではビデオ通話アプリらしきものが起動中。
相手の姿は表示されず、代りに、井桁絣の綿入れのはんてんを着た白い狸の画像。

主人公「あの……俺の元所属組織はどうなりました?」

相手「残存兵力の9割が壊滅したと推測されます。『大宮司』でしたっけ……? 組織の指導者と、その側近は行方不明です。事実上の壊滅ですね」
←声が加工されている事を示す演出(フォントを変えるなどの)

主人公モノローグ「素人の俺でも判る……。声に何かの加工がされてる。男か女か、何歳ぐらいかも見当が付かねえ。多分だが……この声と、御本人の生の声は、声紋も一致しねえだろう」

主人公「えっと……素朴な疑問なんすけど……俺の依頼は、俺を足抜けさせて欲しいって事でしたよね?」

相手「こちらが受けた依頼は、足抜けに加えて社会復帰の支援です。元の組織が消えた方が、社会復帰は容易になると思います」

主人公モノローグ「待ちやがれ。1人の人間を真人間にする為なら、あんだけの大虐殺をやらかすって、何か変だろ、絶対ぜって〜に」

タイトルページ

建物や道路にも大きな被害が出てる前回の町。
無数の戦闘員の死体。
あるものは焼け焦げ、ある者は銃創、ある者は大型の刃物による斬撃・刺突による傷。

タイトルページに引用文

それに、ひとりの人間の魂を正気にとどめておくためとあれば、世界中のゴティック・アーチをかたっぱしから粉砕してはばからぬというのがわたしの気持ちです。
これがわかっていただけぬようでは、わたしの宗教をあまりよく知っているとは申せませんな。

G.K.チェスタトン「ブラウン神父の不信」収録「ダーナウェイ家の呪い」

シーン2

カット1

シーン1カット1と同じ部屋。

相手「まぁ、たまたま、『陽動任務の筈が、気付いたら敵の本体を殲滅してた』ようなチームしか手が空いてなかったのも有るんですけどね」

主人公「あの、それで、言われてた研修ってのは……?」

相手「場所は沖縄・北海道・韓国・台湾から選べます」

主人公「やっぱ、受けないといけませんか?」

相手「犯罪組織には、どこでも大なり小なり体育会系な文化が有りますが……いわゆる『娑婆』は、そうでなくなりつつあります。その状況に適応してもらわなければなりません」

カット2

2001年の9.11を思わせる光景。

主人公モノローグ「アメリカが『北米連邦』と『アメリカ連合国』に分裂する以前、2001年の秋のあの日にアメリカ各地で起きた同時多発テロ」

主人公モノローグ「その際に判ったのは、テロ犯の中に他人の心を操れる者が複数居た事。……世界で最初に存在が公知おおやけになった『異能力者』だ」

カット3

ポンチ絵。
2人の人間の片方の脳からもう片方の脳に何かの情報がテレパシーなどで送られている状況。

主人公モノローグ「だが、世界で初めて一般人にも存在が知られた『異能力』が『精神操作能力』だって事は……」

上記のポンチ絵、脳から脳に送信されている「何か」に×が付けられる。

主人公モノローグ「『精神操作能力』こそ、最も研究され尽した『異能力』である事を意味する。どうやら、義務教育でも『精神操作能力への対抗訓練』が教えられるようになっているらしい」

カット4

派手な格好で大袈裟なポーズを取る新興宗教の教祖風の人物。
それに手を合わせる無数の聴衆。
聴衆の服装は男性であれば背広などの町中を歩いていても違和感がないもの。

主人公モノローグ「大半の『精神操作能力』は、要は『未知の力により、相手の脳内に洗脳や暗示に近い状態を作り出す』もの。早い話が、洗脳や暗示にかかりにくい奴は、精神操作能力への抵抗力も強く」

カット5

軍隊の訓練。映画「フルメタル・ジャケット」風。

主人公モノローグ「洗脳や暗示にかかりやすい奴は、精神操作能力にも弱く」

カット6

警察での取調べ。刑事は高圧的な人物で被疑者は目が虚ろに見える。

主人公モノローグ「洗脳や暗示が効き易い状況では、精神操作能力の効き目も強まる」

カット7

制服(礼装)姿で敬礼をしている無数の軍人。
軍人達の人種は、ほぼ同じに見える。

主人公モノローグ「そして、精神操作能力の効き目が長続きする状況とは……同じような精神操作をされた集団の一員の場合。特に、その集団外と遮断・分断されてたり、その集団に明確な『敵』が居ると、かなり洒落にならん事になる」

カット8

ヤクザの会合らしき場面。全員が羽織袴で正座。

主人公モノローグ「つまるところ……精神操作能力がクソ効き易い奴は『体育会系』の文化に適応し易い奴で、クソ効きにくいのは、その逆」

カット9

上司に怒鳴られ、うなだれているサラリーマン。

主人公モノローグ「その結果、どこの国でも日本で言う『体育会系』の文化が消えつつ有るらしい。残ってるのは、警察・軍隊・刑務所・昔ながらの理不尽企業……そして、犯罪組織ぐらいだ」

カット10

元の部屋。

主人公「えっと……俺、一応は『魔法使い』系なんで、修行してる時に……」

相手「『魔法使い』系の方、特に伝統的な流派・宗派の方が、精神操作能力への抵抗力が強い点は考慮して研修メニューを組んでいます」

主人公「は……はぁ、そうっすか……」

相手「オススメは韓国ですね。具体的には釜山プサンです。今、居らっしゃる博多から貸し切りの船で約3時間。まぁ、昨日まで居らっしゃった『NEO TOKYO Site01』から博多までの3倍ぐらいですね」

主人公「か……貸切?」

相手「はい、それともう1つ」

カット11

大学の講義室のような場所。
講師はラフな格好の中年女性。
講義を聴いているのは、いかにもな「正義の味方」風の格好の者と、アメコミの悪役風の格好の者が入り混じっている。

相手「山田さんが受けられる『社会復帰訓練』は、いわゆる『正義の味方』の新人研修と同じ場所で行なわれます」

講師の中年女性の姿が顔を隠した『魔法使い系ヒーロー』風のモノに変る。

相手「講師の大半は現役か元の『正義の味方』か……それに相当する異能力・特殊技能を持っていると思って下さい」

カット12

口をあんぐりと開けた主人公。

主人公「あ……あの……い……意味が判らないんですが……」

カット13

横に並ぶ軍隊の訓練風景と刑務所の刑務作業のコマ。
2つのコマの間には「≒」(ニアリーイコール)の記号。

相手「昔と同じですよ。昔の警察や軍隊の新人教育と、刑務所での受刑者への指導って、共通点が多かったでしょう」

相手「まぁ、これは、逆に『体育会系』のメンタリティを完全に抜く為のモノなんですけどね」

シーン3

カット1

船の甲板で海を眺める普段着の主人公。
横にも普段着の同じ位の年齢の男。

カット2

主人公視点の相手の男。

主人公モノローグ「『気』で何となく判る……多分だが……俺と同業……『魔法使い』系だ……」

主人公モノローグ「専門じゃねえから、確実とは言えねえが……体も鍛えてるようだ」

カット3

甲板で空を眺める主人公。

主人公モノローグ「たしかに、『正義の味方』どもの新人研修と……俺達『悪党』の社会復帰訓練が同じ場所で行なわれるってのは聞いてたよ」

主人公モノローグ「でも……まさか、こんな事は聞いてねえ。どうやったら、こんなエグい代物を思い付く?」

ゲンナリした表情で顔を下げる主人公。

主人公モノローグ「もし、『正義の味方』どもが良からぬ気を起して世界を支配しやがったら、それを覆すのは、ほぼ不可能だ」

主人公モノローグ「いや……ひょっとして、『正義の味方』どもは、とっくに裏から堅気の世界を支配完了してんのか?」

カット4

海を進む船の大コマ。

主人公モノローグ「聞いてねえぞ、俺達が、これからブチ込まれるのが……」

主人公モノローグ「『『誰が囚人で誰が看守かを区別すんのが、囚人側には無理ゲーな刑務所』だなんて……」

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