漫画脚本「悪の組織からの足抜けを手伝いますッ♥/安易なる選択−The Villain's Journey−」第3話「Escape Plan (2)」


シーン1

カット1

海を行くフェリーの上。甲板の上の椅子に座っている主人公、数コマ。

  • 顔に手を当てて悩んでいる様子。

  • 「やっちまったかな」的な表情で頭をかく。

  • 腕を組んで不安そうな表情で貧乏ゆすり。

  • 「ん?」と云う表情で顔を横に向ける

カット2

海に飛び込もうとしている若い男と、それを止めようとする50男。

若い男「いやだァ〜‼ こんな所、居られるか〜ッ‼ 俺、もう帰るぅぅぅ〜ッ‼」

50男「若ッ‼ 何、言ってんですかッ⁉『組』は、もう無いんですよッ‼」

若い男「うるせえッ‼ 源田、離せッ‼ 離せッ‼ 離せッ‼」

いつの間にか、その騒ぎをペットボトル飲料片手に野次馬的に見物してる主人公。

謎の男の後ろ姿。体格などは、わざとわかりにくく描く。

謎の男の声「待て……」

主人公・若い男・源田と呼ばれた男、全員、「何だ、こいつは?」的な表情になる。

タイトルページ

下記のような外見の男の大写し。

  • 背丈は中ぐらい。ただし、デブ。

  • 無精髭。

  • ボサボサの髪。

  • シャツは第2ボタンまで開けており、しかも、ボタンのかけ違えあり。

  • シャツのボタンをかけ違えている箇所から白い肌着が見える。

  • シャツの裾は、ズボンに入ってる箇所と入ってない箇所あり。

  • ズボンにはベルト。「社会の窓」が中途半端に空いている。

  • 右手の人差し指で鼻をほじっている。

謎のデブ「他人に迷惑をかける気なら……」

謎のデブ「このクリムゾン・サンシャインが相手だッ‼」

シーン2

カット1

「若」が海に飛び込もうとしているのを止めようとしている源田、数コマ。
あっけにとられた表情から、段々とガンギマリの表情に変化。

「げ……源田?」

源田、「若」から手を放し、「クリムゾン・サンシャイン」の方に向かう。

源田「お前……い……今……何って言った?」

クリムゾン・サンシャイン「何って……ちょ……ちょっと待て、おっちゃん……あんたこそ……何を……」

源田、一気に間合を詰め、「クリムゾン・サンシャイン」の腹に前蹴り。

カット2

源田、倒れた「クリムゾン・サンシャイン」を何度も何度も踏み付けようとする。
転がりながら、それを避けようとする「クリムゾン・サンシャイン」。

その背後で、「若」が服を脱ぎつづ、河童の姿(亀人間風)に変身していく。
「若」、海に飛び込む。
「若」と源田たちの方を「どっちが面白いかな?」的な表情で交互に見る主人公。

源田「誰が、クリムゾン・サンシャインだッ⁉」

デブ「俺だッ‼」

源田「ふざけんなッ‼ お前のような醜いデブがッ‼ あのクリムゾン・サンシャインの筈がッ‼ 無いッ‼ 無いッ‼ 無いッ‼」

デブ「違うッ‼ 違うッ‼ 違うッ‼ 違うッ‼」

源田「黙れッ‼ 俺は、クリムゾン・サンシャインのッ‼ ファンだったんだぞッ‼ お前みたいなクソ野郎がッ‼ あの人の名を騙るなッ‼」

デブ「だから、俺が、クリムゾン・サンシャインだってッ‼」

源田「うるさいッ‼ つか、お前、ニュースで見た事有るぞッ‼ 元久留米市長の阿呆息子だろッ‼ 市役所で殺人事件起こした……」

デブ「待て待て待て待て……記憶にございません。あと、暴力反対ッ‼」

カット3

背広姿の男の後ろ姿。

源田たちの背後で、「若」が飛び込んだ海を見てた主人公が、背広の男に視線を移す。

背広の男「待ちたまえ。それ以上はやめなさい」

その声を聞いた源田の目が虚ろになり、そして倒れる。

カット4

背広の男の前面。

背広は三つぞろいのダブル・ボタン。
鼈甲の眼鏡。
ただし、背広の袖などにはほつれ。
眼鏡も折れたツルをセロテープで雑に補修。
源田より、やや齢上。
靴も、かなり履き古したもの。

背広の男、倒れた源田を見た後、周囲をキョロキョロと見る。

背広の男「い……いや……こ……これは、その……ち……違うんだ……えっと……あれ? 何がどうなって……?」

カット5

主人公を背中側から見る視点。
主人公、背広の男を指差す。

主人公「おい、あんた、ひょっとして……」

主人公モノローグ「ひょっとしなくても、このオヤジ、先天的魔法使い系の『超能力者』……それも……」

背広の男の背後に、若い男の姿。
若い男の体から不気味なオーラが放たれる。

主人公モノローグ「でも、何か変だ」

若い男のオーラ、クトゥルフ的な形となる。

主人公モノローグ「そして、更に変な事が起きてる」

若い男「いくら緊急事態とは言え、『精神操作』とは感心出来ませんね」

背広の男、何かを感じとり、冷や汗。
振り向くのを恐れているような様子。

背広の男「ち……違うんだ……私は……悪くない……」

主人公モノローグ「何者だ、この若造? 俺の元の所属組織の大親分だいぐうじより……霊力量パワーだけなら上回ってるぞ……」

若い男「そうですか……」

主人公モノローグ「そして、このおっさん……。どうやら、生まれ付き『精神操作』系の能力を使えるようだが……使い方は我流。ちゃんとした訓練をやった訳じゃなさそうだ」

主人公モノローグ「なら……この若造が、マトモな訓練をした『魔法使い』系なら、そんなモノ、効く訳が……」

若い男の周囲のオーラが、デフォルメされた何匹ものクトゥルフに変り、男の周囲を可愛い感じで飛び回る。

若い男「ええ、僕も、なんか、そんな気がしてきました」

主人公モノローグ「えっ?」

若い男「……と……とりあえず、この人達の応急手当を……」

背広の男「……そ……そうだな……」

主人公モノローグ「どうなってんだ? 俺でも防げる程度の『精神操作』が、俺より遥かに霊力量パワーがデカい同業者まほうつかいに、何で、あっさり効いてんだ?」

背広の男の体から、突然、ピ〜ピ〜という音。

電子音声『バッテリー切れまで、あと約10分です。至急、充電をお願いします』

主人公モノローグ「????」

別の若い男あらわれる。

倒れてる源田の上着のポケットから、注射器と小瓶を取り出す。

別の若い男吐前はんざきさん、注意して下さい。バッテリーが切れたら動けなくなるでしょ」

背広の男「は……はぁ……」

主人公「手伝いましょうか?」

別の若い男「すいません。じゃあ、医務室まで運ぶの手伝って下さい

別の若い男、源田に注射をして、小瓶の中身を飲ませる。

主人公「あの……その薬……」

源田「ん?」

主人公モノローグ「効くの早過ぎね?」

別の若い男「源田さん、貴方も注意して下さい。とりあえずは、甘いものでも食べて、安静にしてて下さい」

源田「は……はい……」

カット6

海を覗き込む主人公。

主人公「あの、そう言や、ここから海に飛び込んだ人も……」

別の若い男「そっちも大丈夫です」

カット7

海で溺れてる河童と、それを救助しようとしてるダイビングスーツの2人組。
近くには、無人のゴムボート。

主人公モノローグ「おい、ベタにも程が有るだろ……」

シーン3

船内の医務室。

ベッドに横になってる河童に変身出来る若い男。(以下『若』)、源田、『クリムゾン・サンシャイン』。
肌着だけになって椅子に座り両肘・両膝についている機器に充電している吐前。

主人公「あんた、河童に変身出来るのに、泳げねえのかよ?」

「うるせえ。あの姿になれば、普通の人間よりは泳げるよ」

源田「スポーツなんかを何もやってない普通の人間の基準では『凄い』ですが、本職の水泳選手に比べれば……イマイチ程度です」

「黙れ」

源田「あと……素潜り出来る時間もそこそこですが……素潜り漁をやってる漁師さんなんかに比べると……」

主人公「何だよ、そのビミョ〜な能力?」

若、源田を指差す。

「こいつの能力のビミョ〜さに比べりゃマシだよ」

主人公「おっちゃん、あんたの能力は?」

源田「恐しい能力です……。使う度に寿命が縮んでしまうような……」

妙に聞きたそうな表情の主人公と、それに気付いた若。

「あんた、いい齢して、その手の話が好きなの?」

主人公「まぁ、俺も『男の子』の成れの果てだしな」

「はぁ? 俺、俗に言う『中二病』は小学校卒業と同時に卒業してたけどな」

主人公「……」

主人公モノローグ「まぁ、たしかにそうだ。中学生なんて、大人になりたい盛り……大人が中学生が好きだと思ってるモノを馬鹿にする年頃だ」

主人公モノローグ「俺も、中学の頃は、その手のモノが好きな事を同級生にバレないように用心してた。バレたらいじりの対象だったからな」

「この源田は、一時的に力やスピードを上げられる。力は普段の倍弱ぐらい。走る速さは1.5倍って所かな?」

主人公「結構、すごくね?」

「あんまり体を鍛えてない50男の『普段の倍の力』のどこが凄い?」

主人公、一瞬、ポカ〜ン。

主人公「あ……あ……あ……おっちゃん、ごめん、ビミョ〜だわ、それ。でも……寿命が縮むって……その……?」

「で、その状態は、1分から1分半しか続かない」

主人公モノローグ「思ったより、遥かにビミョ〜だった……」

「更に時間切れになると、血圧は急上昇、血糖値は逆に急降下だ。気を失なうレベルでな。そりゃ、寿命も縮むだろ。健康に悪過ぎる能力だ」

唖然とした表情の主人公。

「そのせいで、こいつ、俺の護衛だったのに、何か有る度に、俺がその『護衛』の介抱をしなきゃいけなかったんだぜ。絶対ぜって〜おかしいだろ」

主人公モノローグ「俺も『男の子』の成れの果てだ……。もう、2度と『使うと寿命が縮む能力』の秘密は訊かねえ……」

主人公モノローグ「子供の頃の憧れが完全に原子レベルで粉砕される……」

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