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守備固めの難しさ

①悪夢のような辛い現実

そこには、目の前で起きている光景はにわかには信じ難いような現実が最後に待ち構えていました…

大型連休の谷間となる5月1日(水)のロッテ戦。
降ったり止んだりを繰り返す雨模様の神戸で、先発・#29田嶋 大樹投手が5回無失点と粘投で後続に繋ぐと、新戦力の #96髙島 泰都投手(王子)、セットアッパーの #56小木田 敦也投手、#42アンドレス・マチャド投手と繋いで最後は守護神の#16平野 佳寿投手へ。
平野投手は前人未到のNPB通算250セーブ&200HPへ残りセーブ1としており、打線の得点の仕方も久々に良かった、ホームでの試合ということもあり、誰もがこの試合での達成を予期していたはずです。


が…。目の前に広がる現実は、9回に守備固めに入った #3安達 了一選手(兼任内野守備走塁コーチ)の立て続けのエラー、エラー、エラー…。
全てのランナーが得点に直結し、この回5失点で快勝ムードから一転、絶望的な9回裏へと叩き落とされたこの試合を落とし、首位ソフトバンクとは早くも6.5ゲーム差、2日(木)のロッテvs日本ハム次第ではBクラス後退となりました。


②なぜ魔の3エラーが起きたのか

この試合を一変させてしまったのは、間違いなく9回に守備固めで入って3失策の安達選手でしょう。
正直、プロ野球でセカンドを守る選手ならばどれも当たり前に捌いて貰わないと困るような打球だったので、厳しい視線を向けられるのは致し方ないと思うのですが、それを前提に考えてみたいと思います。

まず、9回から守備固めとして登場する難しさを改めて感じる試合だったと思います。
終盤のメンタルというと、僅差リード試合の9回に登場する抑え投手がクローズアップされがちですが、それが何故かというと拾える試合を落とすことへの恐怖に打ち勝たなければならないからです。
人間心理、特に日本人はその傾向が強いのではないかと思うのですが、得られている財産の取りこぼしに対してはかなりの執着心・勿体ないという心理が働いているように映ります。

例えば多くの日本人監督が無死1塁で送りバントを多用しているのは、併殺でランナー(=得られている財産)を失うことを嫌がって、データ上では非効率的なのは明らかなのに、財産を失う可能性が著しく低い送りバントを選択している(※)と見えるときがあります。

※送りバントの損得分岐点は.103
バントでランナーを進塁させることのできる成功率は約75%とされている

投手が投げたボールを野手が打つという競技特性上、あくまでも能動態は投手、受動態が野手になるので、最もイニングにプレーに関与する投手がクローズアップされるのは当然なのですが、拾える試合を落とすことへの恐怖に打ち勝たなければならないのはバックで守っている野手も同じであり、守備面での確実な貢献を期待されて9回から守備固めとして出場している野手は尚更そのプレッシャーを感じているはずです。
もちろん、彼らはそれが職業でありそれでお金をもらっているので、ミスしても仕方ないと言うつもりは毛頭ないですが、改めて極限の緊張環境でプレーを重ねている選手たちは凄いなと尊敬します。

さて、プレーを少し振り返っていきたいと思います。
1つ目のプレーは、叩きつけた緩い打球で二遊間寄りの場所に飛んだことや、打者が俊足の ロッテ#57小川 龍成選手であることを考えると、綺麗に捌いていたと仮定してもセーフになっていた可能性は高いと考えます。

もちろん、打者が俊足ということは安達選手も頭の中に入れてプレーしているので、捕球▶︎送球への動作でのタイムロスを最小限にすべく、逆シングルの形で打球に入っているのですが、その場合に起こりやすいのは腰高になりハンドリング性能が落ちやすいので、雨模様で緩いグラウンドコンディションもあり打球が思ったよりも跳ねず(普段の大阪ドームとの差もあるかもしれませんね)、グローブの先で弾いてエラーとなりました。

最も、ここでいうセーフになる可能性が高いとは、ここ最近での安達選手の特にスローイングの強さを筆頭とする肩周りの衰えを考慮しての話なので、例えば強肩の #8マーヴィン・ゴンザレス選手等ならアウトにできている可能性は高いでしょう。
結果論ではないのですが、現状のリザーブメンバーも含めて考えたとき、セカンド守備固めに安達選手はそもそも最善策とはいえないと考えています。

2つ目のプレーは、1点差に縮まってなお無死1・2塁での、ロッテ#22グレゴリー・ポランコ選手の正面に近い打球での併殺コース。
これは正直問題ない打球には見えたのですが、先頭打者を許したのは自分のエラーであり、そのランナーを返されて1点差に詰まった直後、マウンドには先輩選手で大記録目前の平野投手という部分で、自分にプレッシャーを掛けすぎて固くなったところはあったと思います。
併殺完成をすれば2死3塁で勝ち筋が見える(仮に追いつかれても安達選手1人の責任ではなくなる)ので、早く解放されたい焦りもあったように見えました。
結果この打球もファンブルして無死満塁。打球の正面に入れていたので、あまりにも勿体ないプレーになったと思います。

3つ目は打者一巡して同じく小川選手。この辺りまで来ると、自分1人の責任で試合を破壊した申し訳なさと取り返しのつかないことをした罪悪感で、打球への入り方から硬直が見え、何か魔物に取り憑かれたようなプレーとさえ感じました。
百戦錬磨のベテラン選手でさえ、いや寧ろベテラン選手&コーチとして周りに手本を見せなければならない立場だからこそかもしれませんが、人は取り憑かれたときに信じられないように場の雰囲気に呑み込まれてしまう、それは今回はたまたま安達選手でしたが、誰もが起こりうる怖さだなと改めて感じます。

③「引退しろ」

さて、この試合展開では、安達選手に厳しい視線が向けられるのも致し方がないかなぁ…とは思うのですが、Twitterでもかなり大荒れだったようで、厳しい言葉を浴びせる人、それを可哀想だと擁護する人、色んな姿が見られました。
別にオリックスファンだからそうなっているわけではなく、正直この阿鼻叫喚の構図はどのチームのファンでもなると思いますが(1イニングに同一選手が3エラーは見たことがないので「思う」に留めます)…。

もちろん、「死ね」「消えろ」等の誹謗中傷は1番論外として、多く流れてきた中で個人的にあまり見ていて気持ちの良いものでなかったのは「引退しろ」の4文字です。
私は正直どうなろうが知ったこっちゃないので、安達選手にー生涯現役でいて欲しいとも思いませんし、もうプレーを観たくないと思う気持ち自体がおかしいとも言いませんが、職業の引き際を決めるのは、ましてプロ野球で12年間活躍してきて暗黒時代も黄金期もどちらも支えてきた実績のある選手ですから、引き際を決めるのは安達選手と福良GMでしょう。
もしかしたら今年で本当に引退するかもしれませんし、そうでなくとも引退勧告を受けてコーチ専念(事実上の戦力外通告)となるかもしれません。ですが、ファンの暴言が引き際を決める刃になってはいけないとは思うのです。

もちろん思うのは勝手ですが、それをファンがイライラの捌け口に引退しろと吐くのは傲慢が過ぎるのではないかと思います。

第一、プロスポーツは勝つチームの裏に負けるチームは当然存在するのだから、勝ち負けで一喜一憂はするとして、それをいつまでも引き摺ったり誹謗中傷をするのは精神的によろしくないですし、そういう方こそプロスポーツに没頭しすぎず、何か別の趣味なり楽しみなりを持つべきだと思うんですよね。修行僧になりたいのならそれはご自由にですが、それなら事あるごとに誹謗中傷では修行僧でもないでしょう。

何かと上手くいかない時ではありますが、あまりのめり込みすぎず穏やかさは残っていて欲しいなと思います(個人の感想です)

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