なぎら健一と飲む→美女と飲む

もう4年ほど前だろうか、池上の居酒屋でなぎら健壱と飲んだことがある。
ケーブルテレビの収録で訪れていてその後クルーが帰った後も店に残って一人で飲んでいた。

なぎら健壱というと、世間では「チンカチンカのルービー」というフレーズで有名な無類の酒好きで、タモリ倶楽部やぶらり途中下車の旅によく出演しているイメージがあると思う。自分も15年前はそうで、加えてオジギャグが激しいタレントだと思っていた。あとこち亀にも時々でてきていた本人役で。

15年前、確かちくま書房の文庫で「東京酒場漂流記」なる本を何の気なしに購入した。それがなぎら健壱(当時はまだなぎら健一、だったと思う。改名したんだよね確か。)の著書であった。この本がとても面白く読み応えがあった。ふた昔前ほどの実在する飲み屋でのエピソードが沢山あるエッセイ。挿絵もアジがあって、文体も洒脱。笑えて泣けてとまではいかないが、笑えてしんみりしたエピソードもあったりしてすっかり氏のフアンになった。あ、挿絵はなんか違う方が描いておられたはずだ。何という方だったか。

一度ハマるととことん行く性格なもので、氏の本を片端から読んだ。5,6冊は読んだと思う。とことん、ってほどでもないな。

氏は意外にも(というと失礼だが)江戸文化から音楽文化まで造詣が深く、実はミュージシャンだったというのも本で初めて知った。

銀座育ちの生粋の江戸っ子で、中津川フォークジャンボリーなるイベントで飛び入りで参加したのを機に音楽デビューし、確か「よいとまけの歌」を歌ってヒットしたとかしないとか。記憶の底からしゃくっているんで間違っているかもしれない。みなさんもなぎら健壱の歌って聞いたことないですよね。所ジョージの歌のほうが聞いたことがある。

それからスナックを経営したり、酔っ払ってチャリンコでケガをしたり(確か自転車好きなはず)と色々あって今に至るのだ。大分端折っているが東京酒場漂流記に詳しいので興味がある方はぜひ。

話を戻すと、池上の居酒屋のカウンターで、イメージとまったくたがわぬなぎら健壱が焼酎を飲んでいる。自分はカウンターでひと席空けて座り「なぎら先生!」と声をかけた。
ぶっちゃけその頃にはなぎら健壱熱なるものはとっくに冷めていたのだが、「俺はタレントのなぎらじゃなくて、作家としてのなぎらを知ってるんだぜ」というアピールで先生と声をかけた。それから乾杯して読者だとつげると、

「ほんとかよ~嘘でしょう?」
「いや読んでますよ!東京酒場漂流記なんて3回は読みましたよ」
「えー。じゃあ他は何よんだの?」
「東京の江戸を遊ぶとか、ちくま書房のやつはほとんどよみましたよ」
「ふ~ん。どうやらホントみたいだねえ」
なんだこのジジイ疑り深いなあ。
「最近は書いてるんですか?」
「ん~監修とかが多いね。」
「監修…あ、かなつ久美のやつですか」
「そうそう。それは結構最初の監修だ。読んでくれたの?」
「はい。読みましたけど。」
「どうだった?」
「正直あんまりでしたね。」

どうやらこの自分の一言で気分を害したのだろうか、ほどなく勘定して帰ってしまった。

でもこのかなつ久美著なぎら健壱監修の「ビバ東京オヤジ酒場」は漫画以外全く面白くない。というか、氏は欄外に酒にまつわる豆知識をちょこちょこ書いているのだが、どれも老害的うんちく説教臭さがあってどうにもいけない。漫画はめちゃくちゃ面白んだけど。どうしたなぎら先生!という感じだ。

なぜ今日こんな話を書いたかというと、今夜はひさびさに池上のその居酒屋でしっかり飲むからである。東京に戻っての初夜。人と会うのも楽しみである。

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