雑感(市場サイクル)_20200228
こんにちは。
ダニエルがっちゃマンです。
以下、ハワード・マークス氏 「市場サイクルを極める(リンク)」よりです。明確な根拠はありませんが、次の投資行動を考えるうえでの視座に富んだ一説ではないでしょうか。
価格は主に二つの分野での変化に左右される。
ファンダメンタルズと心理である。
ファンダメンタルズは、大まかに利益とキャッシュフロー、そしてこの二つの見通しに絞ることができる。
これらの要素は景気トレンドや収益性、資金の利用可能性などさまざまな要因の影響を受ける。
そして、心理も多くの要因とりわけ投資家の楽観の度合いとリスクに対する姿勢の影響を受ける。
これらの要因にもサイクルがあり、またそれぞれのサイクルに複数の側面がある。
これらの要素がすべて合わさり、証券相場は動くのだ。
市場サイクルは多くのサイクルが交わる場所である。
金融理論において、投資家は客観的で、合理性に基づいて最適化した行動をとる、「経済人」として描かれる。
これは、経済人が集まって形成される市場が資産の価値を厳密に評価する存在であることを示唆している。
だが、実情はこれとまったく異なっていて、金融にかかわる事実や数字は市場行動の出発点にすぎない。
投資家の合理性は例外であって原則ではない。
また、市場が冷静に金融データを評価したり、情動の影響を受けずに価格を決めたりすることは、まずない。
投資において私が強い魅力を感じるのは、投資家がいかに合理性の仮定からかけ離れた行動をとるか、そしてそうした行動がサイクルの変動に多大な影響を及ぼすという点だ。
この投資における意思決定に関与し、純粋に合理的な決定へといたるプロセスを妨げる要因は数多く存在する。
そうした要因は、人間の本性や心理、感情の範疇に入ると考えられるもので、投資家の行動、ひいては市場を支配する力を間違いなく備えている。
以下は、市場サイクルの上昇局面における物事の流れをまとめたものである。景気、企業利益、心理、リスクに対する姿勢、メディアの振る舞いといった要素のサイクルがいかに組み合わさって、本質的な価値を上回る水準まで相場をを押し上げるか、そして一つの動きが次の動きにどうつながるか、を示している。
●景気が拡大していて、経済に関する良いニュースが続いている。
●企業利益が予想を上回るベースで拡大している。
●メディアが良いニュースばかりを報じる。
●証券相場が強含む。
●投資家がしだいに自信を強め、楽観的になる。
●リスクは低く、あっても比較的良性だと認識される。
●投資家が、リスクを許容することは確実に利益をあげる道だと考える。
●強欲が行動を促す。
●投資機会に対する需要が供給を上回る。
●資産価格が本質的価値を超える水準に上昇する。
●資本市場の扉が広く開かれ、資金の調達や債務の借り換えが容易になる。
●デフォルトはほとんど起きない。
●懐疑主義の度合いが弱まり、市場に対する信頼が強固になることから、リスクの高い取引が可能になる。
●状況が悪化することがまったく想像できなくなり、どんな良い出来事が起きてもおかしくないと考えられるようになる。
●誰もが状況が永遠によくなり続けると見込む。
●投資家が機会を逸することだけを懸念する。
●売る理由がまったく考えられず、売りを余儀なくされる者もいない。
●買い手の数が売り手の数を上回る。
●相場が一時的に下がると、投資家が喜んで買いに動く。
●価格が高値を更新する。
●メディアがこのすばらしい出来事を大々的に報じる。
●投資家が気分を高揚させ、警戒心をなくす。
●証券保有者が自らの才知に驚嘆し、場合によっては買い増す。
●傍観し続けていた者が後悔の念を抱き、降伏して買いに動く。
●期待リターンが低くなる。
●リスクが高まる。
こうした状況においては、投資家は機会を逸する可能性へのこだわりを捨て、損失を出すことだけを懸念すべきであり、警戒心こそ重要である。
最も留意すべき点は、同じタイミングで心理、信用の可能性、価格、リスクのそれぞれのサイクルが頂点に、潜在リターンのサイクルが谷底に達すること、そして、だいたいの場合、最後の買いの激流と同時にこれらが起きることである。
同じように市場サイクルの下降局面における物事の流れをまとめると、以下のようになる。
●景気が減速しており、後ろ向きなニュースが続いている。●企業利益は横ばいか減少となり、予想を下回る。
●メディアが悪いニュースばかりを報じる。
●証券相場が弱含む。
●投資家が警戒心を強め、悲観的になる。
●あらゆるところにリスクがあると認識される。
●投資家が、リスクを許容することはすなわち損失を出すことだと考える。
●投資家の心理において恐怖が優勢となる。
●証券に対する需要が供給を下回る。
●資産価格が本質的価値を大幅に下回る水準に下落する。
●資本市場の扉がぴしゃりと閉ざされ、証券の発行や債務の借り換えが困難になる。
●デフォルトが増える。
●懐疑主義の度合いが強まる一方、市場に対する信頼が揺らぎ、取引が安全なものしか行われなくなる。
●状況が改善することがまったく想像できなくなり、どんな悪い出来事が起きてもおかしくないと考えられるようになる。
●誰もが状況が永遠に悪化し続けると見込む。
●投資家がチャンスを見逃す可能性をないがしろにし、損失を出すことだけを懸念する。
●売り手の数が買い手の数を上回る。
●「一時的に下がったときに買え」ではなく、「落下するナイフを掴もうとするな」が合言葉になる。
●価格が安値を更新する。
●メディアがこうした気の滅入るような話ばかりを報じる。
●投資家が意気消沈し、パニックに陥る。
●証券保有者が愚か者のように思える自分に幻滅し、理由もよくわからないままに、投資を行ったことに気づく。
●買うのを控えていあた投資家が自分の行為が正当だったと感じ、また周りからその才気を称えられる。
●売らずにいた者が降伏し、すでに下がった価格で売ることで、下方スパイラルに拍車がかかる。
●価格が示唆する期待リターンがきわめて高くなる。
●リスクが低くなる。
こうした状況においては、投資家は損失を出す危険性へのこだわりを捨て、機会を逸することだけを懸念すべきである。
そして、この状況では攻撃的になることこそ重要である。
市場サイクルが上方に振れ、頂点に達したときとは逆に、ここでは同じタイミングで心理、信用の利用可能性、価格、リスクのそれぞれのサイクルが谷底に、潜在リターンのサイクルが頂点に達する。
そして、この市場サイクルの底で、最後の楽観主義者が降伏する。
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