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2020年人身売買報告書

毎年この時期になると話題になります。この報告書、日本語で書くとインパクトすごいですが「Trafficking in Persons Report」(TIPレポート)のことです。米国務省が毎年、各国政府をランク付しています。

詳細は米国務省で。

Human trafficking人身売買とは、取引を目的とした”強制的”な、労働、監禁(移動阻害)、性的奴隷制、商業的性的搾取、人間の密売、結婚、内臓や細胞組織の提供、”同意を得た”人間の密輸、労働や性の搾取、さらに”本人の意志を問わず”、それらを余儀なくされる状況においこむことも含まれます。特に児童や女性、社会的弱者(貧困)がターゲットとなりやすい犯罪です。

日本は強制労働と性的搾取が問題とされる。

強制労働に関しては、技能実習生制度が問題視されています。そして性的搾取は児童売春、そして海外からの性的サービス従事者に関して警告を受けています。

報告書が取り上げる問題点

対応が消極的
技能実習制度(TITP)の下、日本で働く労働移民の強制労働の捜査が不満足で、一件も立件できなかった。

防止策が不十分
外国に拠点を置く労働者採用機関が過剰な料金を請求するのを阻止することを目的とした法的に義務付けられたスクリーニング手順を完全に実施していない。

処分が不十分
刑期が短い法律に基づいて人身売買業者を起訴し、有罪判決を下したが執行猶予や罰金のみだった。

お役所仕事
省庁間の利害関係者は、従来の手続きを優先して、被害者の適切なスクリーニングや保護に積極的でなかった。

被害者に寄り添ってない
法執行機関は、人身売買の被害者として商業的セックスで搾取された子供を検挙にとどまり、保護サービスや司法手段へつなげることを怠った。
2020 Trafficking in Persons Report: Japan

優先して対策すべきこと

・人身売買事件として積極的に調査して起訴し、犯罪者に強い刑罰を科す。
・人身売買の最低刑を最大四年以上の懲役(罰金を無くす)に引き上げる。
・移民強制労働者を特定し保護するための仕組みを整備し実行する。※移民局内で拘禁中の者に対しても同様の配慮を求める。
・性的人身売買と強制労働の”男性”の犠牲者を特定するための取り組みを強化する
• TITPの改革。技能実習実習機構(OTIT)の職員および入国管理官への教育。NGOとのOTIT連携、TITP作業計画の承認前の慎重な審査と悪質な業者の排除。契約中でも外国人労働者が雇用と産業を変更できるような機会の設定。
•被害者の調査を強化して、適切に特定され、支援サービスにつながり、拘留または強制されないようにする、
•雇用主がすべての外国人労働者のパスポートまたはその他の個人文書を保持することを禁止する法律の制定。
•労働者が不当な手数料を課され債務労働することがないように指針を設定する。
•強制労働に寄与する組織や雇用主による「罰」協定、パスポートの源泉徴収、およびその他の慣行の禁止の施行
•海外で児童買春ツアーに従事する日本人の積極的な調査、起訴、有罪判決、処罰。
2020 Trafficking in Persons Report: Japan

例年に比べて内容が薄いのは大統領線の影響?

担当官の交代で、前任者の調査を継いでの発表でした。
ですから来年出されるレポートの方がより正確と言えるかもしれません。

「援助交際」という言葉の罪

児童売春、、、日本で報道される際は「援助交際」という言葉が使われますが未成年への性搾取被害として大きく「人身売買」の罪として捉える視点が日本社会には不足しているのかもしれません。

「援助」や「交際」という柔らかな表現が同意ある交換取引に聞こえます。そこに被害者が浮かんできません。

そして「買う側」の処罰に留まって、被害者の救済を失念していること。被害者がどんな問題を抱えているのか、ちゃんと相談支援先とつながっているのか、その点がスッポリ抜け落ちています。

「売る側」を処罰しろ、という声があがるのも同じ視点によるものでしょう。未成年売春を「人身売買の罪」として認識し裁くことが日本には欠けているようです。

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