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一人っ子は優秀な人が多いとは、思っていたが、この作文は書ける自信がない!お話

50もの賞を受賞している、プロ作文作家らしい。

第17回「いつもありがとう」作文コンクール最優秀賞受賞作品

 にぎやかな家族
  明治学園小学校四年
      ○○ ○○
 「二人だとおうちの中も静かでしょう」
 「ご兄弟は?一人っ子はさみしいね」
 母と一緒に出かけた時、時折言われる言葉だ。母は困った顔であいまいに返事をする。我が家は母と私の二人家族。私は一人っ子。兄弟や姉妹のいる人のことは正直うらやましい。兄弟のいる友達のように、姉とのケンカも弟のぐちも私には経験できないからだ。しかし果たして、我が家は「静かな」家庭で、一人っ子の私は「さみしい」のか。考えてみることにした。
 兄弟がいたらどんな感じだろう。兄や姉には勉強を習う。おさがりの服ももらえるかもしれない。朝は一緒に学校に行くし、ちょっとしたいたずらも教えてもらう。ゲームで勝てず、くやしい思いもするかな。弟や妹がいたらどんな生活だろう。きっと私の後ろをついてくる。少しうっとうしい気もするけれど、お姉ちゃんと言いながら追いかけてくるのはかわいいだろうな。歌や勉強も教えてあげたいし、夜は一緒のベッドでねるんだ。絵本を読んであげるのもいい。誕生日のケーキも何度も食べられる。うん、たしかに兄弟や姉妹がいる生活はとても楽しそうだ。
 では今はどうだろう。母は仕事をしている。家の中のことを切りもりするのも母だ。もちろん家事は完ぺきではない。電車で一駅のところに住む祖母にも協力してもらいながら、母と私は二人で生活している。朝、母は遠回りになってでも、私がバスに乗るまで見送ってから仕事に行く。学校から帰った私は宿題をする。わからないところは帰宅した母が菜ばし片手に説明。ご飯の前には二人でチョコレートを、誰も見ていないのになぜかこっそり口に入れて、にやり。夕食後にはゲームだ。オセロやトランプ、テレビゲームのこともある。母は強い。そのうえ一切手加減しない。負けてばかりだった私だが、最近は歴戦のかいあってどのゲームもほぼ互角だ。夜は私の時間に合わせて母も一緒にベッドに入り、私が作った物語をきいてくれる。そういえば前に私がお出かけで着ていたワンピースは母のおさがりだ。考えてみると、想像してみた兄弟姉妹がいる生活と同じくらい、今の母と二人の生活も楽しい。話題にあふれる家の中は、静かとは程遠い。兄弟姉妹はもちろんうらやましいが、意外なほど、一人っ子でさみしさを感じたことはないことに気づいた。
 私は知っている。母が私に教えられるよう、こっそりと私の教科書で勉強していることを。私のそばでできない家事は予(あらかじ)め終わらせていることを。忙しい中で工夫して作る私との時間の中で母は私の兄に、姉に、妹に、そして弟に大変身しているのだ。今度誰かに言われたら、母が困った顔をする前に私が答えよう。
 「私は、一人っ子です。我が家は、とても楽しくてにぎやかな、二人家族です」

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