プラモの解説文:2(M9マオ機/クルツ機編)【作品メモ】
※2018年(?)ごろ、バンダイスピリッツから発売されたプラモデルの組立説明書に、賀東が寄稿した時のものです。キット付属のオリジナル武器などにまつわる内容ですが、新設定やキャラクターの証言などもあって、もったいないのでテキストだけ抜き出して掲載しておきます。
【HG 1/60 M9(マオ機)】
Graz Mannlicher AWS2000 〈グラーツ・マンリッヒャーAWS2000〉
(アーバレストと同内容のため省略)
AWS2000(バトルライフル・タイプ)
ARX-7〈アーバレスト〉のみならず、通常配備型のM9もAWS2000を運用していた記録が残っている。西太平洋戦隊のメリッサ・マオ曹長(後に少尉)が使用したのは長砲身・高精度のバトルライフル・タイプで、標準武装のGEC-Bライフルを代替したのではないかと思われる。つまり通常の対AS、対軽装甲車両の戦闘任務である。
使用弾薬、砲身長などからもAWS2000のバトル・ライフルタイプはGEC-Bとほぼ互角の火力、精度だったと予想される。残る問題は火器としての信頼性、そしてASに持たせたときの取り回しのしやすさだったはずだが、大きなトラブルは発生しなかったようだ。柔らかい肉体を持つ人間と異なり、「ソリッドな」装甲を持つASにはブルパップ式の火器は相性が悪いとの指摘がかねてよりあるが(大ぶりな機関部を脇の下に挟み込めない)、AWS2000の場合はその問題は起きなかったようである。
またマオ曹長は基本的に「新しいもの好き」な人物で、新型火器の支給には大喜びで応じていたという証言もある。
新装備〈グラーツ・マンリッヒャー AWS2000(バトル・ライフルタイプ)〉を語る
証言者:メリッサ・マオ曹長
「実は上司の戦隊長も『こういう新型来たんですけど、無理して使わなくてもいいんですよ?』とか気を使ってくれてた。でもあたしは新型大好き。しかもあの名門、グラーツ社の力作よ。
イヤがる部下どもには『上層部のゴリ押しだから、ガマンして!お願い!』とか涙目でウソ言って納得させて、自分はいちばん高性能のバトルライフルをゲット。現場でバンッバン、撃ちまくってみた。
いや一、最高だったわ! 特にリコイル(反動)がよかったね! GECは速くて静かで、なんか『撃ってる感』が弱いのよ。でもあの新型は一発ごとに、ズシン、ズシンってね。初速も火力も数割増しな感じ。楽しかった一!
あたし的にはね? もうこれ制式化しようよ! 組み替え機構とかもパズルみたいで面白いし! ……ってな気分だったんだけど、けっきょく不採用でがっかり。うちの男どもは保守的でねー。カビくさい57mm弾が好きなのよ。ボクサーとかASGとか。バカじゃね? もうケースレスでいいじゃん。まったく」
【HG 1/60 M9(クルツ機)】
Graz Mannlicher AWS2000 〈グラーツ・マンリッヒャーAWS2000〉
(アーバレストと同内容のため省略)
AWS2000(アサルトカービン・タイプ)
記録では西太平洋戦隊のクルツ・ウェーバー軍曹(後に曹長)は部隊の狙撃手として重用されていたとのことだが、AWS2000については短銃身のアサルトカービン・タイプを使用していたことが判明している。
当時のスナイパー用の代表的な火器はボフォース社のASG96シリーズがよく知られており、狙撃手がカービンタイプを使用していたのはいささか不自然である(資料の間違いという可能性も否定できない)。とはいえ第三世代型ASの戦場は流動的なものであり、任務によっては想定されていない近距離に巻き込まれることも多々あったはずだ。市街戦や森林戦における急な敵との接触を警戒して、カービンタイプの武装をウェーバー機が携行していったと考えれば不自然とはいえないだろう。
AWS2000はマークスマン(分隊狙撃手)仕様のモデルも計画されていたはずだが、この時点では生産されておらず、ウェーバー軍曹も受領していなかったと思われる。
新装備<グラーツ・マンリッヒャー AWS2000(アサルトカービン・タイプ)を語る
証言者:クルツ・ウェーバー軍曹
「ああ、あれ? グラーツ社のあのカービンのこと? 意味わかんなかったよ。出撃前にマオから呼び出されて、『あんたこれ使いなさい』ってよ。
この俺様にカービンとか。マジかよ。
いや、まあね? あの任務は短距離の強襲でね。狙撃の出番とかまずなかっただろうから、「いやー、今日は楽できるわ」とか思ってたんだよ。3キロ離れた高所から、鼻くそほじって、同僚がヒイヒイ言ってるのを高笑いして見物できるはずだったんだ。そこにカービンだよ、あのクソアマ! 絶対、あれはいやがらせだね!
だもんだから、近距離のドンパチに参加しなきゃならなくなってさー。でもめんどくせえから、ソースケの後ろで「がんばれー」とか「四時だ、気をつけろー」とかテキトーに声援送ってた。ソースケもマジメだからがんばったし。
だからあのカービン、実は一発も撃ってねーんだ。報告書には「作動不良もなく、素晴らしいカービンだった」とか書いといたけど……ごめん、本当はよく知らん。まあ、マオはガンガン撃ちまくって上機嫌だったから、それなりにいい武器だったんじゃねえの?」