地方創世とは?

目次


1. 何故地方創世は必要か?

2. 4つの柱

3. 成功例

4. まとめ

 


何故地方創世が必要なのか?

現在、日本では東京への一極集中が進んだことによって、地方の過疎と人口減少がひどく深刻化しています。地方創生の第一の目的は、こうした人口減少に歯止めをかけることにあります。そのためにも、若者の雇用創出は日本が抱える大きな課題です。

東京一極集中png

上の図を見てもらえれば分かりますが、地方から東京圏(1都3県)への人の流れはなかなか止まりません。全国に存在する1700余りの自治体のうち、「大阪市、名古屋市、仙台市、札幌市、福岡市」をはじめとした64自治体からの人の流れが、東京圏への転入超過増分の50%を占めていることが明らかになりました

本来、東京圏への人口流出のダム機能を果たすことが期待されていた地域の中核的な都市こそが近くの地域から人を集め、東京圏に人を送り出すポンプの役割を果たしていたのです。

経済的な理由で結婚を諦める若者が増える中、少子化はどんどん加速しています。雇用の安定は人口の減少を食い止める有効な対策であり、地方の若者の雇用を増やすことは地方創生の大きな目的です。過疎の問題は単純な人口減少だけに原因があるわけではありません。地方から東京への人口流出も地方の過疎を深刻化させる要因のひとつです(図)。

地方における若者の雇用創出が実現できれば、地方で就職する若者人口を増やすことになります。それは地域の成長力を培い、地方の過疎に歯止めをかけるきっかけにもなるでしょう。また、女性の就職率を上げることも地方創生の取り組みのひとつです。地方で女性が活躍の場を見出すことができれば、その地方に魅力を感じて住み続けることにつながる可能性もあります。

このように、地方の雇用安定を図り、成長力を確保しようとする取り組みこそがいわゆる「地方創世」なのです。

大まかに言うのならば「地方創世」のメインミッションとは、「人口が首都圏に集中することを食い止め、各地方自治体がワークライフバランスを保って、日本の社会全体を活気あるものにする」というものです。

そして今、日本が直面している人口減少・高齢化・少子化社会という大きな課題に対して、人口減少を克服し、将来にわたって成長力を確保し、活力ある日本社会を維持するために

1.地方において安定した雇用を創出する

2.地上への人の流れを作る

3.若い世代のファミリープランを実現する 

4.地域と地域を連携させる

という4つの柱が存在します。

4つの柱

地方において安定した雇用を創出する

1つ目は、地方における安定した雇用の創出です。特に若者(15~34歳)の正規雇用数の向上と女性の就業率の向上に力を入れています。施策としては、地域産業の競争力を高めることを目的として包括的創業支援、中核企業支援、地域イノベーション支援、金融支援、対内直投促進といった業種を横断した取り組みの他、農林水産業の成長産業化、サービス業の付加価値向上、観光産業の活性化、地元名産品のPR、文化・アート・スポーツの振興推進などの分野別の取り組みがあります。

地上への人の流れを作る

2つ目は、地方から首都圏への人口流出を減らし、首都圏から地方への転入を増やすことを目的とした地方創生事業です。「移り住みたくなる地域」「そこで働きたくなる」地域をつくる活動とも言えます。また、地方での雇用を創出し就労を拡大するために、企業の地方拠点強化、政府関係機関の地方移転のほか、テレワークやサテライトオフィスといった、新しい働き方の促進などが掲げられています。

若い世代のファミリープランを実現する

3つ目は、若者が安心して結婚・出産・子育てができる社会をつくることです。特に子どもを持った後にも、ワークライフバランスが保てることを目指した取り組みです。ファミリープランの経済的基盤づくりとも言える若年者グループの雇用対策、正社員化実現にはじまり、子育て世代包括支援センターの整備、育児休暇の取得促進、長時間労働の抑制といった、子育てやワークライフバランス実現のためのサポートが挙げられています。

地域と地域を連携させる

4つ目は、「時代に合った地域づくり」「誰もが安心して暮らせるまちづくり」を実行するとともに、地域間の連携を図っていくという視点です。例えば、以下のような施策があります。

• 子どもからお年寄りまで様々な人々が分け隔てなく交流できる「小さな拠点」の形成

• 都市のコンパクト化と周辺地域とのネットワーク形成

• 連携中枢都市圏の形成

• 定住自立圏の形成促進

• 地域連携事業としての地方都市における経済や生活圏の形成

• 大都市圏において安心できるくらしの確保

• 既存ストック(不動産)のマネジメント強化


成功例

多くの自治体が上の4つの柱や地方創世の理念を元に様々な地方創世活動を行っていますが、

「地方創世」の事例の中には、インバウンド需要をヒントに政策を進めているものもあります。そのいずれも、都市部にはない魅力を活かしてインバウンド客に対する価値を生み出しています。ここでは、「地方創世」において訪日外国人に向けて体験ツアーなどを行い成功している事例を二つほどご紹介します。

1. 岐阜県飛騨市古川町:里山サイクリングツアー

岐阜県飛騨市古川町では、里山巡回サイクリングツアーが人気を呼んでいます。田んぼが広がる日本の田舎風景の中を、サイクリングできるツアーです。自転車での移動の中で、日本の伝統的な田園風景を通り、季節ごとの農村の美しさを感じられます。

また、ガイドによる地域の文化、歴史の解説もあり、訪日外国人にとっては、日本の伝統文化に触れる機会となっています。公式サイトは英語にも対応しており、年間100人台だった訪日外国人観光客が、このツアーをきっかけに急増しました。

2.北海道東川町:イベントの開催や観光客の呼び込み

北海道東川町では、積極的なイベント開催と告知を通して観光客の増加に繋げた例があります。「写真のまち」というキャッチコピーのもと、町をあげて国際写真コンテストなどを開催し、観光客の呼び込みなどを行いました。その結果、町の人口が7,000人を下回っていたところから8,000人にまで回復し、「地方創世」をきっかけに人口の減少・流出を防いだ例の一つとなりました。

このように、地域活性、雇用拡大には、インバウンド関連の政策も効果的であると言えます。

「地方創生」の中でインバウンド需要を生み出すために重要なのは、地域の特性がどの点にあるのか、また、なぜ訪日外国人の来日するのかなど、傾向の研究・分析が重要となります。

特に、地域ごとに異なる特性を活かすことが大切になってきます。日本の伝統文化に触れたいと考える外国人に、何度訪れても楽しめると感じてもらえれば、リピーターの獲得にもつながります。

インバウンド需要が高まり訪日外国人が増えれば、街に雇用が生まれます。そして安定した雇用があれば、若者の都市部への流出を防ぐことにもつながります。東京一極集中という日本の抱える課題解決の糸口の一つになるかも知れません。

まとめ

上では成功例に付いてばかり書きましたが実際のところ、「地方創世」は局地的には成果が見えつつも全体としては失敗しているのが現状であり課題です。

この問題の根底にあるのがやはり資金力と地元の協力不足です。

まず地方活性化ビジネスでは、それなりの資金が必要となることが大半です。

その資金をどこから調達してくるのか、ある程度は把握しておくことが重要です。

たとえば、以下のような資金調達方法があります。

• 補助金や助成金を活用する

• クラウドファンディングを利用する

• エンジェル投資家やファンドに出資してもらう

昨今、これらの方法を使えれば資金そのものを調達すことはそれほど難しいことではないかのかも知れません。

実際に、地域活性化を行う上で最も高い壁となるのが、この地元の方々の協力の有無です。

いくら活性化のプロジェクトを立ち上げても、実際に地元の方の協力がなければ、成功は程遠いものとなります。地元の方を味方に付けられなかったのが失敗の大きな原因となった事例は数多くあります。

だからこそ。地元民に協力してもらうための説明の場もしっかりと持ち、その際には、お互いが「Win-Winの関係」になることもしっかりと伝える必要があります。

つまりは、住民を巻き込む力こそが必要だということです。

ここでは日本における「地方創世」についてのみ書いてきましたが、実はこのような苦境に立たされている何も日本だけではありません。事実、発展途上国にすぎない小国である僕の母国であるネパールや他の途上国でも似たような問題が起こっています。少子高齢化こそはまだ起こってはいませんが、若者の過度な首都圏への人口流入や海外への出稼ぎにより、地方や山間部の現状は最早、日本のいわゆる限界集落とあまり変わりません。

このままいけば、これらの国が日本をロールモデルとして「地方創世」に取り組むのも、そう遠くない未来なのかも知れません。

参考文献

地⽅創⽣の課題と展望https://www.kantei.go.jp/jp/singi/sousei/info/pdf/h27-09daijin-koen.pdf

Nipponia Nippon https://nipponianippon.or.jp/local-creation/news/1485.html

地方創生 事例集https://www.kantei.go.jp/jp/singi/sousei/pdf/chihousousei_jireisyu.pdf

地方創生をめぐる現状と課題http://www.soumu.go.jp/main_content/000573278.pdf