プロレス超人列伝第三回「クリス・ベノワ」
プロレスは常に華やかで明るい世界を視聴者・ファンに提供し続けている。
しかし、そのプロレスは時に人の人生を多く狂わせてしまうことがある。
今回紹介するベノワはそんな悲劇の英雄の一人だ。
日本ではワイルド・ペガサスという名前であの獣神サンダーライガーのライバルの一人としても活躍していた。
彼の技の一つ一つは非常にえげつなく、身長は180㎝(実際はそこまでなかったという話もある)程度とレスラーの中では小柄であったがそれでもヘビー級に負けない負けん気で挑むことからついたあだ名は「ラビッド・ウルヴァリン」日本語で言うと「狂暴なクズリ」であった。
クズリといえば、クマやオオカミにも負けない凶暴性と攻撃性を持った肉食動物であり「世界最強の野獣」の一角としても有名である。
出身地がカナダであることからX-MENのウルヴァリンにもどこか似ていた。
少年時代からダイナマイトキッドにあこがれていたベノワはカナダ名門のハート道場の門をたたき、そこで投・極・打の極意をたたき込まれた。
その後、黒人レスラーの草分けになったバッドニュースアレンの後ろ盾もあり新日本の練習生として入団したことで彼のキャリアは始まった。
その後、新日本・ECW・WCWという並みいる団体で活躍し多くのファンを魅了した。
やがて、ベノワはその後公私を問わない親友となったエディ・ゲレロと仲良くなるのだった。
エディとベノワはお互いに苦楽をともにした親友を越えた家族であった。
その後、2001年にWCWからWWFに移籍し物言わぬ職人気質のダークヒーローとして人気を博していく。
同じくテクニシャン気質であったカート・アングルとの攻防は今でも名試合として名高い。
そんな彼は長い間WWFにいたが、良くも悪くもタッグ戦かインターコンチネンタル王座という役柄、わかりやすくいえば脇役で終わっていた。
しかし、そんな彼の人気にこたえるかのごとくWWEはプッシュを始めた。
2004年、その当時のロイヤルランブルで初入場から様々な強豪を打ち倒し優勝を果たすことに成功した。
(ロイヤルランブルといえば今の時代でも残っているWWEの看板興行の一つであるが、この2004年大会を超える大会は未だにできていない。)
ロイヤルランブル優勝という箔を得たベノワは当時のWWE最高王座であった「世界ヘビー級王座」をかけてトリプルHとショーンマイケルズを相手に三つ巴に試合を開始した。
この二人はかつてカナダの英雄であったブレット・ハートをはめてWWFから追放した実行犯であった。
カナダ人の栄光と期待を浴びたベノワはブレット・ハート仕込みのシャープシューターで勝利を飾り、世界ヘビー級王座のベルトを獲得した。
観客はスタンディングオーベーション、感動の渦が会場を支配していた。
同じく興行でカート・アングルを破り、WWE王座を獲得したエディがベノワを抱きしめ二人は完全にプロレスの王様として君臨していた…。
しかし、そんなベノワの幸福も長く続かなかったのだ。
2005年、エディゲレロは突然この世を去ってしまった。
この事はベノワに大きな傷を与えた。
ストイックなダークヒーローのベノワが多いに泣きながらエディの死を詫びる回は非常に自分の中でもトラウマになっている。
その後、エディの死による心労や自身が使用していた鎮痛剤・睡眠薬の影響で精神的に追い詰められていっていた。
そのせいか、たびたび欠場をしたり長期間にわたりフェードアウトすることがしばしばみられていた。
そして、2007年。とうとうプロレス界最悪の悲劇が起きてしまう。
クリス・ベノワはある日突然、いきなり家族を巻き込み、一家心中をしてしまったのだ。
奥さんであったナンシーを拘束したうえで絞殺、その後幼い息子も窒息死させた後自身も首つりを行った。
この事態はプロレス界だけではなくアメリカ中で大問題になってしまった。
ベノワが一家心中を行ったのは薬物などの問題やWWEの人材管理などに問題が集まるようになった。
というのも司法解剖の結果、ベノワの脳はほとんどアルツハイマーの患者と同じ状態に陥っていたのだ。
WWEはこの事件をきっかけにそれまで続けていた過激なショー路線をほとんどやめてしまい、ファミリーショーとしてWWEを再編することになった。
また、ベノワが使用していた薬関係にも厳しくなり健康上の理由にそぐわない人間を謹慎処分にするなど厳しい姿勢がみられていくようになっていった。
そして、「クリス・ベノワ」という名前は永久的にWWEから除名された形になってしまった。
彼の死には今でも大きな謎があり、本当に自殺だったのかもしかしたら他殺ではないのかと様々な謎が飛び交っている。
なぜかというと、クリス・ベノワの妻ナンシーはかつてケビン・サリバンというベノワの師匠の一人であったレスラーの妻でもあった。
しかし、彼女はケビンを捨ててベノワのもとにいった。
実質若いベノワがケビンからナンシーを奪った略奪婚という状態にあった事から、実はケビン・サリバンこそ本当の犯人ではないのかともいわれている。
しかし、これには証拠はほとんどないのでデマの類であるといっていいだろう。
今ではほとんどWWE最大のタブーとなっているベノワであるが、ファンの多くは今でも彼を崇拝しいつか彼のような輝ける存在がまたきてほしいと心のどこかで根強くおもっているのだ。
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