”凍れる音楽”
「薬師寺東塔」は、そんなふうに呼ばれている。
人とは、なんと豊かなことばを持っているのだろうと思う。
薬師寺
薬師寺は、天武天皇が病気になった后のために発願し、建設を進めたと伝えられる。
病が癒えた后は、やがて持統天皇となり、塔の完成を見守ったのだろう。
寺のかたの解説によれば、藤原京から平城京に移されたのは、714年とも、716年とも言われるそうだ。
東塔は、戦乱をくぐりぬけて、今、その場に立っている。
三重の塔の屋根の間には「裳階(もこし)」が設けられ、だからこそ、空に向かう姿にリズムが感じられるという。
「トン・ジン・チ」
薬師寺は、玄奘三蔵ともつながりが深いという。
法相宗の宗祖が慈恩大師、そのお師匠さんが、かの三蔵法師だとのこと。
三蔵法師が旅をする物語、「西遊記」。
そこには猪八戒、孫悟空、そして沙悟浄が、お供として登場する。
これまた、お寺のかたが話していたのだけれども、実は、この人(?)たち、仏教の”三毒”=「貪・瞋・痴」=トン・ジン・チを表しているという。
貪は、猪八戒。貪欲に、あれこれ欲しがってしまう。
瞋は、孫悟空。すぐにカッとして怒ってしまう。
痴は、沙悟浄。迷い、惑う。
長い旅をして、人は心を養っていく。
欲しがり、怒り、迷いながら、それでも、きっと前に進めるはずだ。
少しずつでも学びながら。
終戦の日を前に、平和についても考える。
もう一度、こころを静かに保ち、1300年を経て塔が伝えられてきたことの意味を思う。
この塔は、これからの1300年も、建ち続けることができるだろうか。
いや、建ち続けられるように、しなければならない。
「薄墨桜」というお香を買ってきた。
春には、桜が、薬師寺を彩るそうだ。
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