レビュー 週刊少年ジャンプ(8) 2019年 2/4 号 [雑誌](アクタージュのみ)

『銀河鉄道の夜』編は巌さんの贖罪の物語

もともと『銀河鉄道の夜』編は巌さんが本当の幸い≒素晴らしい舞台を作る、という劇団天球の皆への贖罪の物語でしたが、ここに来てもう一つの贖罪が濃厚になってきたかと思います。

何かと言えば星アリサへの贖罪です。

今回見た感じは阿良也回で、ワクワクしながら読んでいたわけですが、最後の星アリサに全て持っていかれました。
息子(星アキラ)を舞台に立たせることすらも、星アリサに対する最後の贖罪の機会だったのではないかと思ってしまいます。

劇団天球自体が始まりは星アリサの代替品?

天球のメンバーはみんな孤独です。
・亀が人の目ばかり気にしている。自分をさらけ出せない。
・七生は自分が嫌い。
・阿良也はネグレクトされていた様子。

星アリサも以下の二点から女優時代孤独であったと推測されます。
・心を病んだとき助けてくれる人はいなかった
・星 アキラの父親の不在

星アリサと重なる人間を助けること、星アリサ本人とわかりあえそうな人を作ることで、星アリサの孤独を癒すことが劇団天球の当初の意義だったのではないでしょうか。
星アリサをなんとかしてあげたくても、巌さんにはそれ以外の方法がわからなかったのでは?という気がします。

しかし星アリサは「いまさら」とそれを拒絶します。

星アリサの拒絶をもってして、最初の贖罪≒劇団天球を作り、星アリサの孤独を癒やすことはあえなく失敗しました。

ここで、劇団天球の意味が星アリサの育て直しとなり、この星アリサに相当するのが阿良也だったのではないかと。
阿良也に対する巌さんの執着は、イコール星アリサへの強烈な罪悪感のように感じました。
星アリサの時とは(多分)違う、巌さんの手厚いサポートのおかげで阿良也は病むことなく深く潜れる異才の俳優となりました。
本当は星アリサにそうしてやりたかった、今度は失敗しない、という証明として。
でもお前で失敗したから別のやつはうまくやった、許してくれって言われても、きっと星アリサは許せないと思います。

果たして巌さんは許されるのか

二つの贖罪が重なるわけですから、巌さんは二つに許されなければなりません。

片方は、劇団天球のメンバー。
もう片方は星アリサです。

ではまず、劇団天球の皆は巌さんを許すのでしょうか。
劇団天球のメンバーは巌さんと会えて幸せであった、と、ここ2〜3話で重ねて描写されています。
これはきっと、劇団天球のメンバーは巌さんを許しているってことなのでしょう。
表面的にはこの贖罪しか描かれていないわけですし、まして巌さんはこれから死ぬわけですから許さないと劇団天球のメンバーのほうが心が狭く見えてしまいます。

さてもう一人。本当に許されたかったであろう星アリサは巌さんを許すのか。
少なくとも星アキラのキャスティングを依頼しに行ったときの態度から、未だに星アリサは巌さんを許していませんでした。
しかし星アキラの演技を見て、星アリサは自分の視野の狭さに気づき、それを巌さんが気づかせたのだということも気づきます。
巌さんが直接的に危害を加えたとは考えにくいので視野が広がれば許される芽もでてくるのかな、とここは楽観的な推測です。

巌さんにとって、劇団天球は代役だったのかも知れませんが、それでも、巌さんも幸せだったようです。

しかし、巌さんにとって『本当の幸い』とは、素晴らしい舞台なのか、星アリサに許されることなのか、本当はどっちだったんでしょうか。
劇団天球が星アリサに許されるためにしかなかったとしたら、そのほうが劇団天球のメンバーに許されない気がします。

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